本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「黄昏の百合の骨」恩田陸
黄昏の百合の骨
黄昏の百合の骨
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 1,785
  • 発売日: 2004/03
  • 売上ランキング: 12,815
  • おすすめ度 4.36


さて、三月シリーズ、現在刊行分は全部読みました。読む順番ですけど、
私が読んだのは「睡蓮」(少し前に)→「三月は深き紅の淵を」→「麦の海に沈む果実」→
「黒と茶の幻想」→「睡蓮」(再読)→「黄昏の百合の骨」→「水晶の夜、翡翠の朝」の順。
まあ、これでも正解ですが、原則としては、
「三月は深き紅の淵を」→「麦の海に沈む果実」→「黄昏の百合の骨」
これが大筋としてあって、「黒と茶」はその間どこに入れても、最後に読んでもいい、という感じです。
短編2編ですが、「睡蓮」(「図書室の海」収録)は、「麦」より先に読むかあとで読むかで
「麦」のイメージにだいぶ影響します。どっちでもいいかなと私は思いますが、
ネタばれを全てシャットアウトするなら後で読む方が無難。
でも「黄昏」の前には読んでおいた方がいいと思います。
それから「水晶の夜、翡翠の朝」(「殺人鬼の放課後」及び「青に捧げる悪夢」に収録)は
「黄昏」より先でもあとでもいいですが、「麦」を読んでからの方がいいです。

で、ややこしい三月シリーズの関連ですが、こちらのサイトでキレイにまとめられています。
参考になりました。
さて、本題に戻って、この本。「麦の海に沈む果実」の続編。青の丘を出て行った理瀬、
今は以前一緒に住んでいた祖母の屋敷に住んでいる。
「理瀬に半年間住んで欲しい」という祖母の遺言があったからだ。祖母は謎の死を遂げている。
その屋敷は白百合荘と呼ばれ、いつも百合の花が絶えることがない。そして、性格が全く違う姉妹、
梨南子と梨耶子が住み着いていて、魔女の館と呼ばれている。
そこで孤独に闘う理瀬。この家には何かがある。祖母が気にしていた「ジュピター」とは何か?
そして、祖母の一周忌に理瀬の従兄弟である稔と亘が帰省し、そして何かが起こる・・

将来暗黒の人生を生きていくことが運命づけられ、自らもそれを望んでいる理瀬。
とても大人びていて、悪女と呼んでふさわしい風格を持つ彼女にも、
16歳の少女なりの純粋なところがちゃんと残っていて、それが彼女を不安定にしている、
そういう時期のこの出来事で、彼女が少女から悪女へと変わっていく様が
とても見事に描かれていて、その安定しつつ不安定な理瀬がとても魅力的でした。
少女からオトナへ、なんて小説はいくらでもあるんでしょうが、彼女の場合は、
悪の道に進むことがわかってるから、自らの少女のような清らかさとは、
きっぱり決別しないといけないわけです。だから、私みたいにずっと子どもなんだか
オトナなんだかよくわからない連中とは違って、決別には覚悟がいる。
だからドラマチックに描かれるわけで。
雅雪や亘みたいな普通の少年と普通に恋愛して普通に過ごせたら、「こっち側」にいられるのに、
理瀬は当然のように「あっち側」を選んで、でも「こっち側」=正しい世界への憧憬を
断ち切ることができないでいる。その危うい揺れが伝わって、切なくなりました。

特に雅雪が魅力的で、彼をみていると黎二を思い出させる、という記述を読んだときには
私まで胸がぎゅっとなりました。黎二・・・。(←やばい人っぽい)
似てるだけじゃなくて雅雪はとても魅力的な少年です。また少女マンガでもてそうな系、
かつ、理瀬の心の闇までもを理解してしまうような包容力を持っています。
彼と理瀬はもう別れたままなのかなあ。なんだか寂しいです。

と、少女マンガ的感想ばかりですが、これって正統派ミステリなわけで、
殺人事件そのものが主眼じゃなくて、館そのものの謎に迫る、みたいな、そういうミステリです。
姉妹二人の雰囲気がいかにも耽美で、そこに無垢な少年、無垢じゃない青年達が絡む様は
何とも色っぽく、それらしいシーンはないにもかかわらず、
恩田さんには珍しく官能的な空気が漂ってました。

謎が解けたときは意外に思うとともに「あれ、そっちからですか」と思ったりしたし、
理瀬も全てが見通せるわけではないのだな、まだ、なんてちょっと意地悪なことも思ったけど。
でもこの犯人像、怖すぎるかも・・・。「悪意のない悪意」ほどたちの悪いもんはないですね。
ぞっとしました。文中の言葉を借りると、「正義とはグロテスクなもの」です。

正しい人間っていますよね。で、その人が吐く正論に傷つけられる、
なんてことが世間にはあると思う。
「若者は働かなければいけない」とか、「女性は結婚したら幸せだ」とか、そういうことも含め、
もっと具体的なことも含め。でも、それだけで回っていく世の中って怖すぎます。
やっぱり、理瀬やヨハンみたいに、悪の部分を自覚して引き受けていく人が必要なのかも、
なんてちょっとまじめに考えたりしてしまった。なんかずれてるけど。

私は昔から自分が正しいなんてつゆほども思ってないし、たいがいやと思ってる。
親切な人、と思われてるけど、人に好かれたくてやってるだけな時とか、お礼を言われたくて
やってるだけな時とか、そんなときが多々あって、自覚してへこんだりします。
その、悪者になりきれない自分とか、批判を受け止められない自分とか、
そういう小さい自分って嫌やけど、最近は開き直ってたりもします。
人に好かれたくて何が悪い。気が小さくて何が悪い。

でもだからこそ、ダークヒーローには惹かれるんでしょうね。
理瀬がこれからどう成長していくのか、楽しみです。
最後数頁が蛇足な気が私はしたのですが、それが次作への布石になってると信じたい。

しかし、次はユーロマフィアが絡んでくるのか?スケールでかすぎるわ。
「ゴッドファーザー・恩田バージョン」が読めちゃうのか?イメージが・・・・。
| comments(12) | trackbacks(12) | 17:24 | category: 作家別・あ行(恩田陸) |
コメント
お久しぶりです。
ざれこさんの感想はいつ読んでも面白いですねぇ。
理瀬がまだまだ見通せてないのだな……とは私も思いました(笑)
続きはユーロマフィアからむんですか
楽しみー

あとまとめサイトよくわかりますね。
凄いな。
あとこの関係性を考え付いた恩田さんも凄い。
| つばき | 2006/04/24 10:49 PM |

こんばんは。
このシリーズ、本当にじっくり読むべきですね。
私はよく順番も分からずに、図書館で目についた端から読んだので、イマイチよく分かっていません・・・
三月シリーズは難しくて、腰を据えて没頭して読まないと駄目ですね。つい、常野シリーズのほうに目を奪われがちなんですけれど。
ざれこさんのレビューを読んで、また読んでみたくなりました。
ざれこさんと、まとめられているサイトさんを参考にして、今度は順番に読んでみたいと思います。
| 奈美 | 2006/04/24 11:16 PM |

つばきさん
お久しぶりです。ユーロマフィアが絡むってのは私の憶測であって決定じゃないのです。最後にヨハンの対抗勢力が出てきたので、なんとなくそっちかなあと思って。でもあまりにも恩田さんとイメージが違うので、冗談めかして書いてみました(笑)
| ざれこ | 2006/04/24 11:22 PM |

奈美さん
私もあらゆる新刊を(伊良部シリーズ最新刊まで)放置してこっち優先で読みました。一気に読まないとなかなか、全貌が把握できない(ま、読んでも把握できないですけど)感じです。恩田さんの世界観はほんますごいですね。
単品で読んでも面白い本ばかりってのもまた凄いんですけど(充分楽しめたのでは?)また系統立ててお楽しみください。私の説明わかりづらくてごめんなさい。
| ざれこ | 2006/04/24 11:26 PM |

こんばんは。三月シリーズにどっぷりですね。もう、うっとり・・・といった感じでしょうか。
私もこのシリーズは特別の思い入れがあって、冷静には語れないほどです。そして、わかります、わかります。『黎二・・・』と思わずつぶやいてしまう気持ち!私も黎二にぞっこんです♪この本で、ざれこさんの引用されているところ、黎二の名前を見たときは、どきっとしてしまいました♪

三月シリーズは別館に感想書いてありますが、ブログにを立ち上げる前だったので、ここではコメントのみで失礼します。

「オロロ畑」、TBさせていただきました。
| | 2006/04/25 12:12 AM |

EKKOさん(ですよね)
はいもううっとり、です。冷静には語れませんよ。黎二・・・(しつこい)三月シリーズとすごした10日間は幸せでした・・・(うっとり)
だいぶ前にこの世界に浸っておられたのですね。うらやましい限りです。とっとと読んでおけばよかった。
| ざれこ | 2006/04/25 1:45 AM |

三月シリーズ、深いですねぇ。そして濃い!
わたしは読む順番がメチャクチャだったのだけれどそれでも充分愉しめました。
でも順番通りに読み進んだらまったく別の印象が立ち上がってきたのかも...とも思ったり。
| ふらっと | 2006/04/25 7:22 AM |

こんにちは。
ざれこさんが、恩田さんの作品を一気に読まれていたので私も気になってました。
このシリーズ、ざれこさんの言われる通りに読もうと思います♪
| | 2006/04/25 1:57 PM |

いいなあ!三月シリーズの一気読み、私もやりたくなっちゃいました。
バラバラに読んできたから、順番としては良かったんですけど、
ざれこさんの文章を見ると、私の読み方は、まだまだ甘い!
大ファンなんですけど、ひたりきれてなかったなあって思います。
新作が出る前に、ぜひ一気読みを敢行して、どっぷり耽溺したいです。
| ゆうき | 2006/04/25 2:34 PM |

ごめんなさい。名前抜けていました。
ざれこさんのご推察どおり、黎二にぞっこんは、私です。
そそっかしいのです。失礼いたしました。
| EKKO | 2006/04/25 9:28 PM |

一気読み羨ましいです。
私もしたい、だけど「三月…」を読んだ時には「今は何時?私はどこにいるの?」っていうくらい引き込まれてしまい、もう一度あの世界に戻るのは勇気がいります。
「三月」シリーズも「常野」シリーズも完結したらまた読み返してみたくなりますね。
| なな | 2006/04/25 10:40 PM |

>ふらっとさん
このシリーズ、バラバラに読んでも一つ一つが完結してすごいから、
順番がどうでも面白いってのもすごいんですよね。
つなぎ合わせたら更にすごい、みたいな。いろんな読み方ができるのも魅力ですよねえ。

>名無しさん
お、是非読んでみて下さい。しばらくどっぷりですよー。

>ゆうきさん
いやはや私はひたりすぎでして(笑)でも順番に読むとまさに耽溺できますよ。
私も新作が出た頃にまた最初から読んでそうで怖いんですけどね・・

>EKKOさん
なんかうちのブログ、コメントせっせと書いてると勝手に名前が消えちゃう時が
あるんですよね・・・。私もよくやりますから、気にしないで下さい。
こっちこそ申し訳ない。

>ななさん
今どこにいるかわからないくらいはまる気持ち、わかりますー。
「三月・・」はやなことがあった帰りに電車で読みましたけど、キレイに忘れられてよかったですもん。
「三月」も「常野」も、新作が出るたびに全部読み直してそうです。大変です。
| ざれこ | 2006/04/26 10:55 AM |

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