本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「幻夜」東野圭吾
幻夜
幻夜
  • 発売元: 集英社
  • 価格: ¥ 1,890
  • 発売日: 2004/01
  • 売上ランキング: 27,747
  • おすすめ度 4.13


疲れた。長い本を読むのは慣れてるんだけど、なんていうか、とても気が滅入った。
普段は2冊の本を並行して読むなんてことはまずないが、今回は途中でふと休憩し
「吉田自転車」をふと手にとって読んでなごんでみたり、
「イン・ザ・プール」の(よりによって)「勃ちっぱなし」を読んで笑ったりして、
それからこの本に戻った。そのくらい疲れた。
この本から発する悪意に精神が摩耗していく感じ。とにかく疲れた。

阪神大震災。借金まみれの工場や家がつぶれ、被災した青年雅也。
当日、父の保険金目当てに来ていた叔父が建物の下敷きで倒れていた。
雅也はその叔父の顔に瓦をふりおとした。そして、それを見ていた女がいた・・・。
女は新海美冬と名乗り、そして二人は東京に行き、美冬は事業家として成功する。
その陰にはいつも雅也の姿があり、そして、美冬の周りできな臭い事件がたびたび起こり、
刑事の加藤は美冬を疑い始める。二人の行き着く先はどこなのか?

感想も暗くなったらあれなので、余談から入ろうかな。

読んでて思ったのはあれよ、「美人って得よなあ」ってことよ。
例えばストーカーにあったと言い立てたとして、
男が「俺はあの女とつきあってたんだ、俺はストーカーじゃない」と言ったとして、
「私知りません、この人の妄想ですよ」って怒ったとして、それが美人だったら
男の主張は退けられるのよ。女が勝つのよね。
これ、私がやってごらんよ。誰も信じないよ。
「おまえが男に「妄想」されるタマかい」なんて刑事に怒鳴られて、挙げ句の果てには
「おまえがストーカーしとったんちゃうか?あー?」とかすごまれるよ、きっとさあ。

その美しさ、アーモンド型の魅惑的な目を武器に、のしあがっていく美冬。
美冬は自らの美貌に非常なる執着をみせるんだけど、それもわかる気がする。
美が衰えたら、彼女は身動きが取れなくなる。彼女が男を狂わせるには、その美貌が必要だから。

上を読んだらわかるが、「白夜行」に設定はそっくりだ。
男女が陰で支え合い、悪事に手を染めていく。
違うのは、今回は雅也の視点から、雅也の心情なども描かれているところか。
雅也は美冬と運命をともにしようと思っている。弱みを握られ脅されたわけでもない、
自分の意思で、なんの疑いもなく、どんな状況に陥っても、
美冬を裏切ってはいけない、美冬のために俺は生きている、と思っている。
しかしその気持ちすら、彼女に洗脳され、作られたものだと思わざるを得ない。
完全に男を操り、自らの欲望のままに行動していく美しい美冬。
怖かった。誰かに支配されるってこういうことなんだ。怖すぎる。
雅也は、美冬のために何でもやりすぎる。そして、魂を殺される。すごく怖い。
たまに、平凡な幸せについて彼も考えたりしているのに。もともと残酷な人間じゃないのに。

謎の中心は美冬の過去。阪神大震災の前の美冬については何もわからない。
その謎については、なんとなく予想はつく。「白夜行」の続編だの関連だのと解説されているのを
知っていたし、そういう先入観で読んでしまったから、仕方ない。

美冬の言葉遣いに違和感があった。関西弁にもいろいろあるけど、きつい関西弁だった。
大阪の中心部か、南の方の言葉を喋っているイメージがあって、不思議だったのだ。
京都や神戸で住んでいたはずなのになあ、と。これも伏線だったのね・・・
恐るべし東野圭吾。たぶん、気のせいじゃないと思う。

ネタばれ厳禁やな、こりゃなんにも書けないなと思ってたけど、
堂々とアマゾンに書いてる人もいるし、
ばれてもいいかと思いつつ(一応ネタばれしないように)書いてみるけど、

「白夜行」を読んでて、彼ら二人の間には愛のようなものがあるのだ、
男女の愛情も、それ以上に深いつながりもあるんだ、だから二人は悪に手を染めて、
誰も信用しないような生き方でも甘んじられたんだ、と私は思っていた。
「幻夜」を読んでわからなくなった。愛はあったのか?そこに。
もし美冬が雅也に接するように、雪穂が亮司に接していたんだとしたら?
亮司の存在がもしその程度だったとしたら、・・・私は絶望してしまう。

でも、信じたい気がしている。亮司とのことだけは、違うものだったんじゃないかと。
なぜこの「幻夜」がこんなに怖いのか、それは亮司が不在だからだ、と私は信じたいわけで。
その空虚が形になったものじゃないのかと。
それだったらそれで哀しいんだけど、最初から彼女がそういう人だった、って想像の方が哀しい。

でも、ある女の姿をこうやって浮き上がらせ、彼女の長い人生が私の中で形になっていく。
その想像は読んだ人によってかなり印象の違うものだと思う。
哀しいと思う人もいるだろうし、憎い、と思う人も、怖い、と思う人も。
その無限に残された読者の想像の余地。すごすぎる。
白夜行で感じたことをさらに痛感する羽目になった。

ラストは全く救いがないように見える。どうしたら人はそんなに残酷になれるのか。
どうしたら人はそういう風に考えるようになってしまうのか。
美冬の内面が描かれないだけに、私が想像してしまう彼女の闇はより、深くなる。
感情移入は全然できないけど、理解できない分よけい、哀しさが残る。

ものすごい疲れたし、愉快な読書ではなかったけど、
「白夜行」とあわせて、かなり私の印象に残ってしまったな。
「「白夜行」「幻夜」前」と「その後」では読書観変わりそう、ってくらい。
| comments(18) | trackbacks(13) | 17:05 | category: 作家別・は行(東野圭吾) |
コメント
そう、そのいくらでも自由に想像できる、できてしまう「余地」が怖いのですよね。そしてすごいと思います。東野さん。
…そこを言うに事欠いて「人間が書けてない」とかいう直木賞審査員、出直して来いっ!!!!!
| chiekoa | 2006/04/07 6:06 PM |

そうだそうだ!出直して来いっ!
・・・あ、これは横レスですね。

> でも、信じたい気がしている。亮司とのことだけは、違うものだったんじゃないかと。

私もです。激しく同感です。そう信じないと悲しすぎるし、怖すぎるもの!もう、勝手にそうだって思い込んでいます。TBありがとうございました。
| ゆうき | 2006/04/07 11:16 PM |

こんばんは。
私も、読んでいる間じゅう、気が重かった一冊です。
読後、体調まで崩してしまいました。

本当に恐ろしい本です。
| ゆう | 2006/04/07 11:50 PM |

私もこの2冊の本は強烈に残りました。
いつか美冬がこてんぱんになる小説も書いてほしいですよね!(って私も悪女??)^^;TBさせていただきました。
| こんにちは | 2006/04/08 9:44 AM |

私は、これを読んだとき、やはり亮司の一方的な悲恋だったのか・・と、
絶望ちゃったんです。
でも、亮司を失ったことが美冬をさらに変えてしまった。
そう考えることにします。
そうじゃないと哀しすぎます(ぐすん)。
| june | 2006/04/08 11:44 AM |

ざれこさん、こんばんは!
TBありがとうございました。
ざれこさんのレビューは本当に読ませますよね〜。
じっくり拝見しました。
そして「幻夜」を読んだ後の底抜けに暗い感情がよみがえってきました。
何だかなーという感じを受けましたが、そうですね亮司とのことは違うものであって欲しいですね。
この後彼女がどこまで行くのか、また見届ける機会があるのかな、と少し期待しています。
| リサ | 2006/04/10 10:34 PM |

>ちえこあさん、ゆうきさん
そうだそうだ、出直してこい!!ですな。まあ取れたからいいんですけど、「白夜行」でもこれでも与えなかった選考委員の節穴っぷり、ある意味すごいですわ。

>ゆうさん
体調崩すお気持ちもわかります・・。私もかなり疲れました。すごい本って時々体力奪いますよね・・

>may_flower_777さん
そうですねえ、三部作って噂もありますから、次はこてんぱんにやられるでしょうか?(笑)でも最後までこんな感じで生きてしまいそう、美冬って・・・。怖いなあ。

>juneさん
そうなんですよね、亮司の不在が彼女を変えたんだ、そう考えないと「白夜行」のイメージさえ悪くなってしまって、いやーな感じになるのです。でもそんなぞわぞわした感じすら味わってしまう、すごい読書でした。東野さんすごいわー

>リサさん
これ続編あるんでしょうかね。もう既にこれのラストで美冬ってちょっと化け物っぽかったじゃないですか。更に加速するのかと思ったら怖いですよね・・・。でもどこまで突っ走るのか、それともどこかで止まるのか、私も怖いけど読んでみたいです。

| ざれこ | 2006/04/11 2:28 AM |

幻夜も読みましたー。
怖いです、雪穂と比べ物にならないほど怖かったです。
亮司への感情と、雅也への感情は別物ですよね。
雅也に対してはやっぱり道具としてしか見てなかった気がします。
美冬のこの先が見たいような、見たくないような・・・。
| みわ | 2006/04/25 11:26 PM |

みわさん
怖かったですよね、ほんまに・・。私も亮司と雅也は別もんだったと信じたいです。
続編あるんでしょうか。もうこれ以上怖いですよね、確かに・・。美冬はいつか救われるんだろうか・・・。と哀しくなったりします。
| ざれこ | 2006/05/06 8:46 PM |

ざれこさんにお勧めの本があります。読了だったらごめんなさい。
有吉佐和子の「悪女について」です。文庫にもなっています。
白夜行や幻夜が好きな方には是非読んで欲しい本です。
幻夜を読んでいて東野さんはもしかして「悪女について」を参考にしたのかな・・・という点もあります。
そこら辺を比べながら読むのも楽しいかも。
| いちいの木 | 2006/07/03 8:19 AM |

いちいの木さん
「悪女について」はだいぶ前(高校か大学のころ)に読みました。なんと母に勧められて(笑)
かなり面白かったですよね。いつか再読したい本のうちに入っています。また、読んでみようかな。ありがとうございました。
| ざれこ | 2006/07/03 9:42 AM |

暗かったですねー。怖かったですねー。救いようがないですねー。
関西の中でも微妙な強さの違いとか、そういうところまで描かれてたんですねぇ。
音でもあんまり違いがわからない上に、文字だとなおわからないので、
気づきませんでした。
そういう詳細さは面白いですね。
| 斎藤れい | 2007/01/10 12:15 AM |

「殺人の門」を読めばもっと暗くなることまちがいなし!
| bt | 2007/09/12 10:48 PM |

美冬(=雪穂?)って男に対して深い憎悪があるのでは?なので男を裏切る、貶める行為(社会的/性的に)が目的なのではないかと思いました。もちろん理由はあの廃ビルの中で…。
| アキヨシ | 2007/10/01 7:55 AM |

はじめまして。レビューを拝見してすっきりしました(笑)気が重い・・・同感です。
白夜行の続編ということで、読み進めていくうちに次の展開が分かってしまった段階でもう頁を繰るのをやめました。一足飛びに最終ページ見たら、やっぱり、って感じで。
東野氏の理想の女性だそうですが。
あと京都の三条に住んでいた人が西宮に引っ越すのはあまりないパターンじゃないかと。
| | 2007/10/03 12:12 AM |

雅也の中に亮司を見て、雅也を亮司のように強い男に育てようとしていたのは言うまでもないですね。
雪穂は亮司を失った事で残っていた心を捨てたのかもしれませんね。
| | 2008/12/20 7:33 PM |

はじめまして。遅ればせながら、文庫を借りて読みました。
白夜行を読んだ時は、自分の生活が雪穂達の世界におかされていくような感覚に参りましたが(読書体験として、良くも悪くも)私は「幻夜」ではあまり暗い気持にならなかったんですよ。
ああ、それでも生きていくんだ!と。
善悪とか、目的とか無関係の生命力というのか。
第3部があるとしたらどんな方向に向かうのか、とても楽しみです。
| タロ | 2009/09/12 1:53 AM |

はじめまして。遅ればせながら、文庫を借りて読みました。
白夜行を読んだ時は、自分の生活が雪穂達の世界におかされていくような感覚に参りましたが(読書体験として、良くも悪くも)私は「幻夜」ではあまり暗い気持にならなかったんですよ。
ああ、それでも生きていくんだ!と。
善悪とか、目的とか無関係の生命力というのか。
第3部があるとしたらどんな方向に向かうのか、とても楽しみです。
| タロ | 2009/09/12 1:53 AM |

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