本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「孤宿の人」宮部みゆき
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やっと図書館からまわってきました。今度は「日暮らし」みたいに下巻が先にきてしまい
やきもきするということはなく、スムーズに借りられて、よかった。
一気に読めるだろうと思っていたのに、時間がなかったり体力の問題で
5日間かかってしまいました。先が急かれるのに大変だったけど、
それだけ長く丸海藩の世界にいられたし、よかったかな。
四国にあるという架空の藩、丸海藩が舞台。
漁業と紅貝染めが主な産物で、金毘羅参りの客で旅籠がにぎわっている、そんな土地。
その藩に命が下った。妻子を殺し部下を殺した大罪人の元勘定奉行、
加賀殿を流刑にするから預かれ、との無理難題。
罪人だが粗末にはできない。でも丁重にしすぎると幕府にたてつくのか、と言われる。
いつお家をお取り潰しにされるかわからない、藩の一大事。
加賀殿が幽閉された屋敷、涸滝の屋敷は、昔不審死が相次ぎ、誰も近づかぬところ。
涸滝に加賀殿という鬼が棲みついた。
それを境に、丸海の町は少しずつ変容していく・・・

両親に捨てられた少女「ほう」が奉公している井上家は医者の家。
ほうに優しくしてくれた娘の琴江が変死し、それをきっかけに、幼くて無垢なほう、
そして女だてらに引手、つまり岡引き稼業を引き受けていた宇佐も、
丸海藩の大きな波にまきこまれることになる。

加賀殿は鬼になってしまった。でも、人間が鬼になることなんかない。それが真理。
人間の中に、鬼も仏もいるのだ。時には鬼が出てくることもある。
そして丸海の気のいい人々の心は、鬼がやってきたことをきっかけに、
徐々にどんどんすさんでいって、そしてどんどん、自らが鬼になっていく。
その、変容する群集が描かれていて、それが丁寧な描写によって身に迫ってくるというのは、
恐ろしい感覚だった。物の怪は一切出てこないのに、怖いのは人間なのだ。
その、どうしようもない人間らしさが不気味に描かれていて、背筋が寒くなる。

それでも、出てくる人たちの中からは仏の部分が見出される。
特に無垢な少女「ほう」を取り巻く人たちは、ほうに優しくしてくれる。
ほうは両親から望まれなかった子で、「阿呆のほう」と名をつけられ、
放って置かれたせいか成長が遅れ、ちょっと知恵が足りない。
でもホンモノの阿呆ではない。モノの本質が一番見えているのは、
誰が仏で誰が鬼か、一番見えてるのはこの子なのだ。

それから宇佐。女なのに引手をやって、男どもにバカにされて、
それでも前向きに自分ができることをやろうとする、そのまっすぐな気性にはすごく好感が持てた。
そんな彼女達を中心に描かれるこの物語は、不気味なのになぜかとても、
居心地がいいというか。澄んでいるというか。

でもよくよく考えたら、物語の大筋はかなり嫌な話で。救いがないというか・・・
井上の舷洲先生もいい人のように描かれてるけど、いい人なの?どうなの?
丸海藩を一番に思っている、彼の選択はそれはそれで納得できるものだったが、
なんか後味悪い・・・。「何様のつもり?あんた神様?」とちょっと言いたい。

でも彼らは前面にでてこないんだな。底の方にどろどろどろとしたものがあるんだけど、
上澄みは「ほう」と宇佐で清められた。って感じなのかなあ。
でも上澄みだけキレイだったらもうそれでいいよな。底がどうあれ、いいじゃないか。
そんな読後感でした。

ラスト数ページでかなり泣いてしまいまして。
「ほう」がちょっと記憶力の悪い頭で、それでもすごく大切なものを得たのですよね。
彼女はそれは絶対忘れないと思う。彼女にしか見えなかった、人の中の仏の姿は、絶対。
長い長い本ですけど、このちょっと予測できない大波のような深い感動は、
この長い積み重ねを読んでこそ、だよね。

一馬と宇佐のやりとりが個人的にはすがすがしくて好きだったのですが・・・。

ところで、架空の藩である丸海藩は、四国の丸亀藩をモデルにしている、と
あとがきで宮部氏自身が書いているけど、すべてがすべてそのとおりではないだろう。
それでも、小説が一つの藩を作り上げてしまった、と驚くくらい、藩の皆の生活が
詳細に描かれていて、特に庶民の活き活きした生活が活写されてるのが、
宮部みゆきの持ち味だなあ。と思った。

余談ですけど、連れの男性が、宮部みゆき嫌いなんですよね。
なんで、って聞いたら「無駄が多いから」。
「火車」「理由」を読んだらしいんですけど、無駄だらけだったんだって。
「別に主要人物でない人の詳細な記述なんかいらない」とその人は豪語してたんだけど、
それを言っちゃあおしまい、なところが宮部作品にはあるよねえ。
この詳細な描写があるからこそ、人々が活き活きと私達の脳内で動き始めて、
だからこそドラマも盛り上がるんだろ、と私なんかは思うんだけどさ。どんなもんよ?
でもねえ、言いたいこともわかるんだよなあ。
最近の「誰か」とか、その詳細描写、それが大事なのはわかるけどちょっとやりすぎかな、
みたいな作品もあるにはあります。なかなか話が動かなくてじれるというか・・
現代モノにはそう感じる部分は多いかも。

でも時代物だと何故か急に気にならなくなる、のはなぜだろう私。
やっぱり、現代人と違って、イメージ難しいと思うんですよね、立場とか全然違うし、
岡っ引きと同じ立場の「引手」という人たちにしたって、どういう立場で
何を考えて普段過ごしてるのか、とか、漁師とか染物屋とか匙と呼ばれる
お医者とか、彼らの日常がしっかり描かれて、何か起こったときに、
「ああ、あの人の立場なら仕方ないよね」とか「そういう生い立ちならそう思うよね」とか、
本当に納得できるところまでもっていかないといけないと思うのよ。
だから、あの描写は特に時代小説には有効なんだと私は思う。
ほかのやり方で私達を納得させてる作家もたくさんいる、けど、
宮部みゆきはそうやってる。ま、そういうことかな、と。
| comments(5) | trackbacks(12) | 02:19 | category: 作家別・ま行(宮部みゆき) |
コメント
私も後半は涙、涙でした。よかったです。
ざれこさんがおっしゃる「無駄」の部分、なるほどと思いました。
話の本筋にはあまり関係ない人達の詳細な記述が積み重なってひとつの世界を作り上げている気がするので、私は宮部さんのそういうところが大好きだな〜。
| | 2006/03/19 12:13 PM |

↑上記のコメントを入れましたひろねこです。
ごめんなさい、名前を入れ忘れてしまったようです。
失礼しました。
| ひろねこ | 2006/03/19 12:27 PM |

「無駄」の部分、男性の方がの言うことはなんとなく分かります。わたしは模倣犯を読んだのですが、我慢し切れなかった覚えが(苦笑)同じく長編のねじまき鳥クロニクルは苦もなく読めました。違いはやっぱり、人物描写より心理描写のほうが多かったからかな? あ、でも宮部みゆきのほうが理解しやすい心理描写だったような気がする。
これはまあ、好みでしょうね。

実はまだ時代小説にチャレンジしたことがないのです。(宗姉妹と嗤う伊右衛門だけは読んだかな?)いいのかー宮部さんはやっぱりいいのかー。うーーーん、長編だけに手を出しづらいーーー!!
| shimako | 2006/03/20 3:49 PM |

shimakoさん
「模倣犯」耐え切れませんか?文庫で5冊もあって途方にくれちゃいましたが。読めるのか私。ねじまき鳥とは確かに種類が違いますね。春樹の小説はだって、いろいろありますやん、井戸の底に行ったりとか。宮部みゆきのはエピソード少な目で描写が多い気がします。
時代小説私は好きなんですけどね。初めてでしたら大長編の司馬遼太郎とかよりは、宮部みゆきはなじみやすいと思いますよ。長編ですけど、あっと言う間に読めます。私も時間があったら2日で読めたですよ、この本。
| ざれこ | 2006/03/22 2:23 AM |

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