本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「人生ベストテン」角田光代
人生ベストテン
人生ベストテン
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2005/03/02
  • 売上ランキング: 149,756
  • おすすめ度 3.5


装丁は可愛い。でも、相変わらずの角田さんである。
装丁が可愛いので、もしかして今回は毒気少な目でいくのかな、と
勝手に思い込んで読んでいた。実際、最初の3編は毒気が少ないかと思えた。
しかし違った。うち2編は男性が主人公のため、少し毒気が薄れて、
私の感受性を鈍らせたに過ぎない。ちらちらと、毒は吐かれている。
そして4作目、「テラスでお茶を」。独身女がマンションを買おうと、
若い不動産の営業マンと車で動いているときの独白。
ここらへんからがつんとやられた。
「すばらしいですね」
言ってみたが声はかすれていた。急激に鼻白んでいく気分を抑えようもなかった。佐藤紀幸の模範的回答は私に気づかせる。私がたった今語ったことなどすべて嘘だということを。現実の佐藤紀幸が献身的聖人ではないのと同じように、私もまた、しゃかりきにがんばる敵の多いキャリア女ではなく、ただ流されるように日々をやり過ごしてきた怠惰な人間に過ぎない。歯を食いしばったこともなく、感慨懐辛酸、怨毒常苦多なんて状況にも陥らず、男女差別に悔し涙を飲んだこともなく、経済的精神的に楽なほうへ、楽なほうへと身をゆだねてきただけだ。何も考えず妻のいる男と交際し、その男の事情をいっさいシャットアウトして、面倒なことをいっさい退けようとしているだけだ。得意げにしゃべった自分を今さらながら恥じてうつむくと、まるで救いの手をさしのべるように、
「こちらです。このマンションの四階です」
窓の外を指して佐藤紀幸が言った。


あー私の独白ですか?これ。がつんと目が覚めてしまったわ。
あるある。「私ってこんなに苦労してるのよ」ってため息混じりに
言いたくなるとき、あるんだけど、私ってば全然苦労してない気がするの。
なんかぼんやり生きてたら31年たっちゃった気がするの。
この空虚な、ぽっかりした感じを描かせたら、この作家の右に出るものは
いないな、なんて思うんです。

「テラスでお茶を」も辛かったけど、
次の「人生ベストテン」の辛さといったら。
痛すぎてもうギャグの域だよなあ。40歳の女の同窓会、で、これかよ・・
これ実際に自分の人生だと想定したら、もう全然笑えないんだけど、
もうここまで行ったら私も笑っちゃうかも。最強の自虐ネタを吐きつつ楽しく生きちゃうかも。

でも、30歳過ぎてもなんかオトナになりきれてない、少女みたいな
話し方をしてずーっと過ごしてしまう独身女性、いるいる。と、これもまた、
痛くて暗くなってしまったわ。
この年になるとさ、子ども産んでるか産んでないか、で精神年齢が
どっと変わってきちゃうのよね。だからどんどん、子持ちの友達との会話が
かみ合わなくなる。そして、独身女ばかり集まって、オトナなんだか
子どもなんだか、よくわからない集団が出来上がってしまったり。
その微妙なところがとてもリアルで、いやんなった。

でもこの短編集、痛い痛いといいつつ、それを笑い飛ばしちゃうような明るさも漂ってて。
最後の「貸し出しデート」も、え?これからどうすんの、ってラストではあるんだけど。
離婚の危機でやけになって若い男を買ってみたら、小太りのナルシストがきちまって、
・・・って、笑えるんだよな。で、ナルシストもよくよく喋ってみると、
悪いやつじゃない。ただ、昔のカッコいい自分が鏡に映ってしまう、そんな男。

でも自分の綺麗な時期を見つめて、そこに戻るつもりで頑張るのも、
まあ、痛いかもしれんけど、いいじゃない?それでも。
悪い自分ばかり見てるより、いいんじゃない?みたいな。
と、なんだか変に元気が出るような、そんなラストだったのが、救い。

えっと、すっとばしましたが、最初の短編は「床下の日常」、
リフォーム工事に入った先で、その部屋の寂しげな女と昼飯を食う羽目になった
若い男の話。ちょっとラストが、それでいいような、ぞっとするよな。

次は「観光旅行」別れ話が面倒で旅行に出た女が、変な日本人母娘に
出会ってしまい振り回されるんだけど、この日本人母娘の仲がいいとは
到底思えない感じ、は、どうも「空中庭園」の母子を思い出させる、
長い人生この二人の確執はどんなだったろう、と考えるとぞっとする、そんな二人。
この二人を見つつ、どんな人にだって、言葉で伝えないと何も伝わらない、
と漠然と思う主人公。彼女と別れそうな彼の行く末が、少しでもいいものであればなあ、
とぼんやり思う、ステキなラスト。

「飛行機と水族館」、飛行機で隣に座った女に泣かれ、何故かその女が
気になってしまった男の話。ストーカーとまで騒がれてしまう男は滑稽で、
一番笑って読めたけど、この説には私も真顔でうなずいてしまった。
「そいつ、ブスだろ」男はちらりとぼくを見、真顔で言った。「そういう騒ぎだてする女は決まってブスなの、な、そうだろ?」

・・・騒がないように気をつけよう。

追記
私の人生ベストテン。(←ちょっと考えたくなった)
1位  大学の友達に失恋したこと。いい男だった。いまだ独身!未だに惜しい。
2位  大学の後輩に失恋したこと。女たらしだったけど面白い奴だった。
3位  高校の友達に失恋したこと。ブラスバンド部は男少なくてもてまくってた。
4位  職場の先輩に失恋したこと。ちょっかい出されて捨てられた?ちなみに先輩は既婚。
5位  大学の後輩に失恋したこと。ずっと友達でしかも私より先に結婚しやがった。
6位  今の彼氏に失恋しなかったこと。・・・しかし、何故6位?
7位  はじめて彼氏が出来たこと。
8位  中学校の合唱コンクール、ピアノ伴奏賞(2回)受賞。
9位  飼ってた犬が死んだこと。黒い洋犬(雑種)
10位 飼ってた犬がいなくなったこと。茶色の柴犬系雑種。

失恋ベスト5になっちまった・・・笑。しかし失恋男を列挙しても10人に満たないのか・・。


| comments(3) | trackbacks(6) | 02:25 | category: 作家別・か行(角田光代) |
コメント
私、この本はなんか妙に気に入ってしまった作品で、
いつもは内容なんてわりとすぐ忘れてしまうんですけど
これは全部の話を昨日読んだもののように思い出せます!
ざれこさんの最後の3行・・・。
そういえばそんな事も書いてありましたね。私も騒がないようにしよう・・・(苦笑)
| Yuko | 2006/03/06 10:14 AM |

ざれこさん、こんばんわ。
ざれこさんの角田さんベスト3を読んで、
黒角田というのに、爆笑しつつ共感したのですが、
これはもや〜んとグレーなイメージの角田さんでしょうか。
ちょっとした希望や明るさのあるラストなのに、
読み終えて何だか自己嫌悪を抱えているという。毒ありますねぇ・・。
| june | 2006/03/06 10:27 PM |

Yukoさん
そうですね、なんかさりげない日常ばかりの本でしたけど、妙に印象に残っちゃいますね。
私の知り合いの知り合いで、常に数人からストーカー行為をされてる人(と言い張ってる人)がいますよ。「太りすぎだからつい男は見ちゃうだけなんじゃ」ともっぱらの噂です・・・。怖い話やわと思いました。私も気をつけよう(笑。つうかこの話あまり笑えませんな)

juneさん
この本は最初は淡いグレーだったのがだんだん濃厚になってく感じがしました。グラデーション?別に無理して色をつけなくてもいいんですが(笑)
毒、結局知らぬ間に体にしみこんじゃった感じでしたが、この本はちょっと前向きになれるところが好きかも。
| ざれこ | 2006/03/07 1:59 AM |

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