本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「白い巨塔」山崎豊子
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いやあ、さすが、すごい読み応えがありました。
ドラマ化ですごい話題になって、昔あったドラマも名作だったと母に聞き、
ドラマはみてなかったので本でも読もう、と、書店で積み上げてある本を思わず
手にとって、本屋の策略で?あっさり5冊購入してしまったのだが、
いやあ、これがおもしろい。さすが、話題になるだけあるよね。

女性作家には珍しい淡々とした文体で、でも古典的なリズム感もあり
ぐんぐんと読ませていく。まずは文体にはまりました。
で、昭和40年のお話なんだけど古い内容だとは全然思わなかった。
今の医学業界の人がどういうかはわからないけど、
ドラマ化されてあれだけはやるってことは似たようなもんなんだろうね。
いやあ、汚い世界ですなあ医学界ってのは。なんていうか、
非常に日本的な風習や文化がとても色濃く出ている本でもありました。
どこの業界でも多かれ少なかれこういう部分はあると思う。
上にこびへつらったり金ばらまいたり地位をばら撒いたり。
名誉と出世と金とが交錯する世界。
その中で踊らされ、すすんで踊る人々。いやあ、人間ってのは弱いね。

人物描写がまた深いですね。財前五郎は主役のくせにとんだ悪者で
フォローする気に全くならないのだけど、助手の柳沢くんの苦労とか見てると、
財前も助教授になるまでには無給助手から非常に苦しい思いをして
理不尽に上に負けたりして悔しくて、のし上がったんだろうな、とか
想像できるもんだから、必死に自分の地位にしがみついたり、
傍若無人に振舞ってしまったり、ってのは仕方ないような気もしてしまう。

でも出世して見返してやるって衝動は実は弱いものだなあ、
地位や名誉に頼るだけの人間って本当にからっぽで虚しい、なんてことを、
何にもとらわれず医学研究と自分の信念だけに生きている
里見助教授とか見てると読者も思うわけで、財前が最後に里見だけ
信頼する気持ちもとてもよくわかるし、そういう意味も含め、
この二人を対照的に描くことで、より財前の人間としての業が
浮き彫りになるあたり、恐ろしくもあり哀しくもあった。
まあ実際、里見みたいな人間がいるかと言うと、今の世の中
そうそう見つけられないだろうな、と思うと辛いところだけどさ。

最後の財前の姿を見ていると、彼は人間としてはともかく、医学者としては
素晴らしい部分をもっていて、彼自身も本当は違う生き方がしたかったに
違いない、と思ってしまった。明らかな悪役もここまで深くかかれると、
同じ人間として共感してしまう。

それからすごかったのが医事裁判。いやあ、読み応えありましたね。
昭和40年代でこの裁判の話はほんま斬新なネタだったと思うんだけど
(現実より先行していたというか・・・、著者もあとがきで、この小説の
社会的責任について考えたと述べていた。すごいことだ)
非常に複雑で難しい医療過誤の責任を医者に求められるか、と、
普通だったら一般読者を遠ざけてしまいそうな難しい話なのに、
すごくわかるように書かれているので、ほんまに手に汗握りました。
著者もあとがきにあるように、この小説が持つ社会的意味合いを重くみて、
誰にでも理解できるように苦心したんじゃないのかな、と思った。

そして、命を預かる医師の道義的責任を問う内容の判決に、
私は話の途中にも関わらず思わず涙してしまった。
命というのはなんと重いものか。

で、全体を読み終えて、著者のあとがきを読み終えて、
なんていうか、この小説は小説を超えてしまったな、てすごく思いました。
これが当時の社会に与えた影響は尋常じゃなかったろうと思う。
そして今も与え続けている。すごい小説もあったもんです。

日本人として永く読み続けていきたい本だな、とすごく思いました。
| comments(2) | trackbacks(3) | 09:51 | category: 作家別・や行(山崎豊子) |
コメント
勝手にTBさせていただいたのに、TBを返していただいてありがとうございました(ねじまき鳥クロニクルのときもそうでした)。「この小説は小説を超えてしまった」という感想、同感です。本当にすごい小説もあったものだ、と私も心底、感心した次第でした。
今後ともよろしくお願いします。^v^
| -hiraku- | 2006/05/30 12:07 PM |

-hiraku-さん
あ、そうでしたか。こちらこそTBやり逃げで失礼しました。
-hiraku-さんはドラマもご覧になられてたみたいですね。私は見逃してましたが、良かったみたいですよね。
鳥肌たつみたいなすごい小説でした。山崎豊子さんの本を読みまくるのは私のライフワークの一つになりました。長すぎて、なかなかとりかかれませんが(笑)ゆっくりやります。
| ざれこ | 2006/05/30 11:37 PM |

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