本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「古道具 中野商店」川上弘美
古道具 中野商店
古道具 中野商店
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2005/04/01
  • 売上ランキング: 8,325
  • おすすめ度 4.42


この本、図書館から借りたんですけど、とにかくコンディションが最悪で。
蚊がね、いっぱい死んでたんですよ、本のページに挟まって。
10匹は軽く死んでた。もうそのたびにティッシュで死骸を拭って捨てて、
ってしながら読んでたもんだからもう気が散って気が散って。
どうやったら虫を10匹も挟めるのか、聞きたいよほんま。マジギレよ。
何故か前半部分にしか挟まってなかったんで、後半はゆるりと読めましたけど。

古道具屋、骨董店じゃなくて、古道具屋。
引っ越す家や、形見分けしてまだ余ったモノやらを、中野さんが引き取ってきて商売している。
そこでバイトしているヒトミさんとタケオの、淡い恋も絡めつつ、
中野商店の個性的な人々やモノに関するエピソードを淡々と綴っていく。
フォントまでが優しく感じる、独特の川上さんの世界だ。

私は最初、虫のせいでいらついてたのもあって、タケオとヒトミさんの恋にしても、
なんか唐突に始まってしまった感が否めなかった。タケオが訥々としすぎていて、
魅力がいまいち伝わってこないし、ヒトミさんもそんなにタケオに執着してるようにも
見えない。なんだかなしくずし的な感じ、と思いつつ読んでたら、
以下の会話でぐっと掴まれてしまった。

ヒトミさん、おれ、なんか下手で、すいません。タケオが小さな声で言った。
下手って、なにが。
なにもかも。
そうでもないよ、わたしだって、下手だし。
そうすか。あの。タケオは珍しくわたしの目をまっすぐに見ながら、言った。ヒトミさんも、生きてくのとか、苦手すか。


このタケオの台詞、ステキじゃないですか?不器用きわまりないんだけど、
お互いそうやって、へんてこな、ちょっと世間からずれているような店でバイトして、
生きづらいなあと思っている二人が、惹かれあっていくことが、急にしっくりきたのだ。
恋なんてこんなもんだ。ドラマチックなことばかりじゃなくって、こうやって、
同じ空気を持つ人達が自然に近づいていって。そんな恋愛もステキじゃないか。
そう思ってからは虫も気にならなくなって、中野商店の世界に没頭できるようになったのだった。

中野商店の店主の中野さん(彼だけカタカナじゃなくて漢字なのはなぜだろうなあ。
でも下の名前で呼ぶときは「ハルオさん」と優しくなる)は
妻がいるくせに、「銀行に行く」と言っては女のもとに通う男。
で、その「銀行」のサキ子さんはとてもオトナな、もったいないくらいのいい女、
そして中野さんの姉の自称芸術家のマサヨさんは50もとうに過ぎて、
彼氏ができてたりする。これだけ読んだら「どんな男女の愛憎が?」と
思ってしまう状況の中、皆淡々と中野商店で日常を過ごしていくのが不思議。

いきなりエロ写真を売りに来る変な客もいれば、「女に呪われた」という
高麗青磁の丼を預かって、なんていう客も来る。
それに中野さんがしてる会話だってなんだか卑猥だし、サキ子さんは
エロ小説書いちゃうし、なんつうか題材はとても生々しいんだけど、
でも全然そんなこと感じないのね。いやらしくないわけでもないんだけど。
人に恋する激しい気持ちとか性欲とかそういうものは
まああるけどさ、どっか置いといて、とりあえずタンメンでも、
皆で食べましょうよ。と、彼らはちょっと変な日常を過ごしていくのだ。

そんな中でヒトミさんとタケオの恋は、もどかしくもどかしく、
3歩進んで4歩下がる、くらいのもどかしさで動いていく。
そんな恋も、中野商店の日常に溶けていって、みんなの恋がとけていって、
なんだかとても心地よい空間が生まれてしまってるのだ。

あーもううまく書けないーー(頭かきむしる)
この世界は川上さんでないと作れないと思うんだわ。
もどかしいしじれったいんだけど、ずーっといたかった世界でした。
最終章は、自分の家がなくなるみたいに、なんだか寂しかった。

マサヨさんの言葉が、タンメン食べながら喋ってるのに、印象深い。
ヒトミさんがもどかしい恋愛に悩んでたら「セックスしちゃえば」なんて
軽々しく言うくせに、
自分は「性欲がなくなってからの恋の抜き差しならない感じが
ヒトミちゃんにわかってたまるもんですか」なんてのたまう。(原文忘れた。くそ)
いくつになっても、若くても年とってても、性欲あってもなくても、
恋とはままならぬことであることよ。
ヒトミさんも、嫌いになっちゃえば、誰とも接しなければ楽なのに、
こんな苦しみはないのに、と思いながら日々すごすけど、
やっぱり、恋をすることはやめられなかったのだから。

誰かとそうやって触れあうことの温かさをしみじみと伝えてくれる本でした。
別に恋人とじゃなくてもいい、誰か、暖かい人たちと。

私も中野商店で置物とか買いたいなあ。
| comments(11) | trackbacks(17) | 02:45 | category: 作家別・か行(川上弘美) |
コメント
真夏に叢で読んだんでしょうか。*笑*

図書館の本っていままで手にした人の履歴が結構残っていますねぇ。
おせんべい食べながら読んだな、とか
チョコレートだわ、とか
髪の長い人が読んだのね、とか。いろいろ^^;

ときどき、前に借りた人の貸し出しリストが取り忘れられていたりして
この本を読んだ人は他にこんな本も借りたのね、なんて思って
次にそれを予約してみたりすることもあります。
買った本では味わえない愉しみ・・・かも。
| ふらっと | 2006/02/01 8:33 AM |

蚊の死骸…季節はずれですね。しかも沢山…不思議だ。日常の謎だ。
マサヨさんの恋愛感、すごかったですね。あぁ、年をとるってこういうことかって思ってしまいました。
| なな | 2006/02/01 9:10 PM |

ぅああ読んだのですね!!
不思議な感覚の本でした。
恋愛なんぞ微塵も感じませんでしたのに。
わたしは
ヒトミさんと店長がどうにかなってほしかったなw
| chihana | 2006/02/02 12:32 AM |

ふらっとさん
ああ、チョコとか挟まってるときありますよねえ、溶けて(笑)
それはまだ許せるんですけど蚊は許せん!
最近まで借りてた人がいるのは、貸出票が挟まってたのでわかるんですが、そいつが犯人かその人は我慢したのか・・・
貸出票私も忘れてたのがあればまじまじと見ます。というか私のが見られてて「こいつ節操ないな」と思われてたりするかもー(笑)

ななさん
日常の謎ですよねー。もしかして青テント在住の方が借りたのかと一瞬思いましたが、川上さんの本を青テントで読んでるならそれはそれでいいような気もしました(笑)しかし蚊がとまったら払ってからページ繰りません?普通(まだ怒ってる)
マサヨさんの達観凄かったですねえ。川上さんって既に老境の域ですかねえ。

chihanaさん
私も最初、ヒトミさんと中野さんが?って思いましたけど、中野さんただの店長のまんまでしたね(笑)中野さんだけ「ナカノさん」じゃないんだーと不思議でした。
| ざれこ | 2006/02/02 9:44 AM |

青テント在住の読者かぁ・・。やっぱりざれこさん、日常の謎に思いをはせたのですね(笑)。

タンメンをすすりながらどきっとするようなことを話しちゃったりするのが、うまいなぁ・・とひたすら思いました。
| june | 2006/02/02 11:19 AM |

青テント在住の読者が、真夏の屋外でこの本を読んだ・・・。なんだか、切ないけれど後味のよい、短編が一つできそうなネタですね。もちろん、私には出来ませんけど。

マサヨさんのそのセリフ、わたしもとても印象的で、自分の感想文に引用しました。もちろん、本を見ながら。ざれこさん、すごい記憶力ですね!ほとんど完璧ですよ〜。
| ゆうき | 2006/02/02 5:07 PM |

juneさん
そうなんですよ、そんな謎まで考えながら読んでたから余計集中できなかったのです。誰か答えを教えてくれないかなー。
図書館近辺には青テントはないので、この線薄いんですけどね(笑)
タンメンしょっちゅう食べてましたね。塩辛いタンメンですら川上作品で食べられるとおいしそうに思えます。日常がにじみ出ていてステキなお話でした。

ゆうきさん
上記のとおり青テントの線はないのですが、じゃあ野ざらしの方が読んで、隣に野良犬が・・。とか思うとさらに切ない感じ漂いますね。
で、正直言いますと、最初「のっぴきならない感じ」と書いたのです。で、なんかこんな感じだったけど違うような、と思ってるときにゆうきさんの感想に出会い「ああ、そうそう、抜き差し!」と思って書き換えました(笑)どうもすいません。でもなんかのっぴきならないってニュアンス、似てません?(言い訳)
| ざれこ | 2006/02/02 10:05 PM |

川上弘美の「古道具 中野商店」を読む!
トラックバックさせていただきます。
よろしくお願いします。
| tonton3 | 2006/02/06 11:43 AM |

古道具屋が舞台だから、道具を巡る人情話かと思ったら、もっぱら恋愛話だったのですね。それも濃い目の。
TBさせていただきましたが・・・誤って2回送っちゃったので、1つ削除してください。お手数かけますm(_ _)m
| ひねもじら 乃太朗 | 2006/02/25 9:06 PM |

ひねもじらさん
そうですねえ。私も最初思ってた以上に恋愛色が濃くなってきて、あーいつもの川上さんだな、と思いました。
もしやひねもじらさん的には酷評・・?(笑)感想読みにいきます。
| ざれこ | 2006/02/27 1:55 AM |

こんばんは。女の子3人とも結構抜き差しならない恋を抱えてるのに、中野商店関係者が集まるとなんだか楽に呼吸ができるような空間がすてきでしたね。
だからマサヨさんもしょっちゅう来てたんだろうな〜。年代も恋愛も違うし、いつも一緒にいるわけじゃないのに、女の子(あくまで!)同士の会話が好きだったです。

ところで岡嶋二人読んでらっしゃるのですね〜。私もこの作者の持ち味がかなり好きで、昔ほとんど読みあさりました。感想楽しみにしていますね。
| banri | 2006/06/10 1:18 AM |

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