本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ポーの話」いしいしんじ
ポーの話
ポーの話
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,890
  • 発売日: 2005/05/28
  • 売上ランキング: 11,731
  • おすすめ度 3.75


新刊本のベストでちえこあさんがあげてくださった本。
いしいしんじさんの本はなんとなく買った「ぶらんこ乗り」が
手元にあるだけで、まだ読んだことはなかったんだけど、
図書館でみかけて、いい機会だからと手に取った。

4日かけて読みました。3部構成になってて、1部読むごとに
はああああ。ってなるの。で、とても時間がかかりました。
でもじっくり時間かけて読んで、じっくり浸れてよかったと思う。
不思議な本です。うなぎ女がたくさんいてうなぎを獲っている上流の川で、
ポーはあるうなぎ女の腹から産まれます。人間なのかうなぎなのか、
よくわからないポーだけど、たくさんいるうなぎ女たち全員の子どもとして、
すくすくと育っていきます。ポーは長い間息を止めていられて、
川をぐんぐん泳ぐことが出来て、町に出かけていって、天気売り
(晴れたら自分の手柄みたいに大喜びする男)やら
メリーゴーランド(女によくもてる運転士)やらひまし油(メリーゴーランドの
妹で、小さな赤毛の女性)やらに出会って、さまざまなことを知っていきます。
罪悪感とかつぐない、とか。
メリーゴーランドと一緒に盗みを働き始めるポーですが、
眠れなくなり、それが罪悪感によるもんだ、とひまし油に教わります。
そしてメリーゴーランドにどうしたら眠れるか聞いたら、
彼はポーを動物園に連れて行き、一緒に象にバナナをやります。それが、つぐないなのだと。
ポーは象にえさをやることに夢中になりますが、そのころ500年ぶりの
大雨が町を襲い、ポーは新しい旅に出ることに・・

しまった、第一部のあらすじをざっと書いちまいましたが、
あらすじだけ書いても全く書ききれないすごさというか、魅力というか、
その底知れなさを第一部だけで充分に感じました。
一部のラストで泣きかけてしまったの。まだ本の半分もいってないのに。
ポーの母親たち、何千人もいるうなぎ女の母親達が、ポーを見守る姿に、
「スフスフ」とポーを見守ってる様子に、いきなり泣けるのです。

でも母と子の愛情物語、だけでもないんだな。もっとすごい大きなもの、
命あるものが産まれて愛されてどこかに還っていくような、
そんなとてつもないスケールで語られる物語のような気がします。

川は万人にむかって同じように流れ、
ここでは川に落ちて死んだ人はうなぎのえさになります。
天気売りは言います。「空をみなよ、晴れてるよ、
空はどんなときでもどんな人の上にでもおんなじようにあるんだよ」
そして、海の傍に住むようになったポーは、海のそばの町の人たちや、
うみうし娘たちに言います。「みんな、海の息子なんだな」

雨が降ったら川に流れ、川から海に流れ、海が蒸発してまた雨が降ります。
そんな当たり前の地球の水の循環と同じく、私たち生き物みんなが、
なんていうか、大きな愛情のもとにつながっているような、
そんな気持ちにまでなりました。そして、母から子へ、その子へ、ずっとずっと。
生あるものの気持ちは、死してのちも、先の世界へずっと、続いていくような。

この温かい感動はここ最近なかったものです。

でも、ポーが最終的に学んだことは、多分、「つぐない」とは何であるか。
ってことなのかなあ。と思うと、ラストのポーの様子は
ちょっと見てられないくらいでした。ポーが生きてやっているつぐないが
本当のつぐないなのかどうか、私にはもうよくわからないけど、
罪、というものも、私たち生き物がめぐりめぐっていく中で、
少しずつ浄化されつつめぐっていくものなのでしょうか。償って、償われて。
でも、いろいろあっても、誰もポーを怒ってないんじゃないかな、
なんて思うから、さらに切なかったですが。

うまく感想かけないんだけど、ラストはもう悲しいんだか嬉しいんだか、
よくわからない感じでした。ひまし油や、メリーゴーランドや、
皆とまた会えて私は嬉しかったので・・・。
そういう意味で読後感はすがすがしかった。
不思議な人物造形で皆個性的で特徴的なんだけど、憎めない人ばかりで、
出てくる人皆とても好きでした。

とても不思議な物語です。すごい世界観。
残るものがとても多くて、ステキな読書時間でした。
晴れた空を見上げては、同じ空の下にいるいろんな人に思いをはせたい、
そんな優しい気持ちになれました。
| comments(2) | trackbacks(9) | 01:38 | category: 作家別・あ行(いしいしんじ) |
コメント
わたしも「つぐない」が漠然としか分からなくて、作者のインタビューを読むと、「創作についても自分の考えていることがまるまる読者に伝わるのは無理ですし、伝わってしまったら恥ずかしいですよね。」とかいってるので、ひょっとしたら恥ずかしくてわざとぼかして書いてるのかも、なんて思っています。恥ずかしがり屋さんなのかも。でも、そうだとしても、本を書くときは恥ずかしがってほしく無いですね。分かりにくいから(笑)
| ひねもじら 乃太朗 | 2006/04/17 11:13 AM |

ひねもじらさん
そ、そうですか、恥ずかしかったんですね・・。(笑)だから寓話的なスタンスだったんですね。納得です。この感想も私の感想に過ぎないし、とても難しいけど魅力ある作家さんだと思いました。これからも追っていこうと思っています。恥ずかしがられようとも・・・
| ざれこ | 2006/04/19 1:47 AM |

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