本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「赤い竪琴」津原泰水
赤い竪琴
赤い竪琴
  • 発売元: 集英社
  • 価格: ¥ 1,785
  • 発売日: 2005/01
  • 売上ランキング: 115,628
  • おすすめ度 4.4


初めての作家さん。ブログをやらなかったら知らなかった作家さん。
恋愛小説のベスト本のエントリをお願いしていたら、
七生子さんからエントリがあったので、それで手にとってみたのだった。

本屋でこの本はみかけていた。表紙の、暗いようで美しい赤が
何故か印象に残っていたのだ。
そのときから勘は当たってたのだ。すごい本。すごい。

って、読み終わって感慨にふけり、ふと思い立って調べてみたら
著者は男性だった。うそやーありえへんー。びびりまくる私。
こんな情緒豊かな恋愛小説、男が書いたらあかんやろー。
誤解しないでもらいたいんだけど(男がダメとかは思ってないのです)
なんていうかなあ、大人の女の感情が何の違和感もなく私に入り込んできて、
こんなのかけるのは女しかいないって思ってたんだわ。
文体も、淡々としながらも濃厚、って全く逆の形容詞が並んじゃうような、
なんて表現していいかわからないどろっとした濃さが漂ってて。
こんな文章読んだことないけど、一瞬にして引き込まれてしまった。
すごいわーすごいー(しつこい)でもそれも女性的だと思ってたんだけど。

このすごさを表現する語彙がないのが哀しいが、とりあえずざっとお話を。
仕事に倦み人生に倦んでいた35歳のグラフィックデザイナー暁子(さとるこ)、
祖母の遺品を整理していたら出てきた、夭折した詩人寒川玄児の日記を
その孫の寒川耿介に渡しに行くと、御礼にと、小さな赤い竪琴を渡される。
彼は楽器職人だったのだ。翌日朝起きて、暁子は自分が恋をしていることに気付く。

祖母と寒川玄児との結ばれなかったと思われる恋を、自らの恋に重ねつつ、
何も出来ずにいる暁子、でも徐々に近づいていく二人。
二人の心情はなかなか語られず、特に耿介の心はなかなか読者にも
伝わってこない。もどかしいなあ、と思いながら読んでいたら、
ラストの1章で急に二人の心情がじわじわと心にしみこんでくる。
ラストの章、鯨に会いに行くくだりは、もう一言一言の台詞が胸にしみてしみて。
私もどうなっちゃうんだろうと思ってしまった。暁子と一緒に、
ぎゅっと締め付けられて苦しい。そんなところに一気に連れてかれた。

そして最後のファックスの一行を読み、意味が染みとおると、
暁子と同様、泣けてきた。

子どもの恋愛も美しい。高校生とか、そのくらいの恋もうらやましい、
戻りたいとも思う。でもこの作品は違う。
何もかもかみしめてからでないと飛び込めない恋愛はあると思う。
その、諦めているようで諦めてない、そんな恋愛は、ちょっとみっともないし
恥ずかしいかもしれない。でもその境地に達してみたいような。
子どもの恋を思い出すほろ苦さと違う、熟したほろ苦さ。切ない。

祖母が持っていた日記の記述や、詩人寒川玄児の詩も随所に出てくるが、
それがまた雰囲気があってうまい。そしてその海上の描写につながる
海の上で、暁子と耿介が鯨に出会いつつともにいる、その不思議なつながり。
祖父と孫は同じように鯨を見て、同じように愛しい女性を想うのだ。
そのつながりもなんだか、長い時を感じるようで、すごい。

暁子の元彼の百目鬼(ホラー作家みたいな苗字・・)もひねくれまくってて
憎めなかったし、出てくる人が皆ステキだった。暁子の友達の村主さんも
なんか好きだな。率直で。

そしてまた文体の魅力に触れなければ終われない気がするけど、
とにかく文章が独特で美しい。なんていうか、グロいけど美しい絵って
あるじゃない?なんだか生々しいし血とか描かれてるしなんだかなあ、
でも綺麗で見入ってしまうような。そんな文章。・・・・。
あーもう伝わらない。読んで確かめてください。
その文体で描かれるプラトニックな恋愛は、すごく官能的。
これ読んだだけで「あー私も大人になったな」って勘違いできるくらいです。

あと、音を描くのがすごかった。竪琴の音や、イングリッシュ・ヴァイオレットの音色、
それに鯨の「ソング」、が耳から響いてくるように感じました。
的確な表現で音を字にできる、そんな気がします。音楽やってるとか、
じゃなくてもすごく、耳がいい人なんじゃないかなって思います。

ホラー作家らしいんですけど(しかも何度も言うけど男)
気になる作家さんになってしまいましたね・・・。他のはこれと違って
本当にグロいらしいし、どないしたもんかなー。
どなたかお薦め教えてください。

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| comments(12) | trackbacks(10) | 00:56 | category: 作家別・た行(津原泰水) |
コメント
こんばんは。
津原泰水、わたしも最近注目の作家さんです〜。『赤い竪琴』、よかったですよね。これぞオトナのオトナによるオトナのための恋愛小説(笑)。
わたしもまだたくさんは読んでいないのですが、グロイのがだめなわたしでも今のところダメだった作品はありません。グロいなかにも美しさがあるのですよ(笑)。

わたしのオススメは『綺譚集』かな。
| ちょろいも | 2006/01/18 1:46 AM |

ざれこさん、こんにちはー。
読了されたんですね。
感想拝見。ざれこさんのベタ褒めっぷりに
背中蹴飛ばした身としては、とっても嬉しかったです(*^^*)。
まさしく大人のプラトニック・ラブですよね。
味わい深くてもう…何ともいえませんわ。好き好き♪

私も全著作読破を目指している身なんですけど、オススメは
ちょろいもさん同様『綺譚集』(耽美耽美)と
ホラーよりも怪奇小説集と呼ぶに相応しい『蘆屋家の崩壊』かな。
新作もまたちょっとテイストが違うみたいですね。
確保はしてあるので、読むのが楽しみです。

合わせ技で『イトウの恋』もぜひ!
| 七生子 | 2006/01/18 1:33 PM |

ざれこさん、こんにちは。
「赤い竪琴」大好きです!!
去年の年間ベストにも入れましたし〜♪
ほんといいですよね。
もう「問答無用で読め!」ですよね。(笑)

他の作品もぜひ読んで頂きたいです〜。
グロくても美しいので大丈夫ですよ。
新作以外は大体読んでるんですけど
そうですね、皆さん同様「綺譚集」と
あと私が好きなのは七生子さんと同じく
「蘆屋家の崩壊」、そして「妖都」です♪
| 四季 | 2006/01/18 4:46 PM |

皆様ありがとうございます。
「綺譚集」はとりあえず絶対読みます。
全員お薦めだなんて・・・想像を絶するすごさだろうな。

ちょろいもさん
グロい中にも美しさが、ですか。まさに筆舌に尽くしがたいんだろうな。感想書けるかな。楽しみに読みます。

七生子さん
お薦めありがとうございました。背中を押してくださって感謝。
「イトウの恋」は図書館に在庫があるはずが何故か見つけられないのです。
(たまにそういうことがある図書館なのです。なぜに)また気合入れて探しますー。
わりとストーリーはこの作品に似てそうな感じですかね。

四季さん
ほんま「問答無用で読め!」ですよ。いやー大人になれました(笑)
「蘆屋家の崩壊」と「妖都」もチェックしてみます。
はまったらすごい世界に連れてかれそうですね・・タイトルからしても・・
| ざれこ | 2006/01/20 12:37 AM |

はじめまして。
googleで津原泰水を検索していたらたどり着きました。

私は、講談社のX文庫で少女小説を書かれていた頃(当時は津原やすみ名義)からのファンなので、
「赤い竪琴」を読んでいると、昔の津原作品を読んでいる気分になり、嬉しく感じました。

今、やすみ名義の本は全て絶版になっていますが、
「ルナピス探偵団の当惑」など、一部シリーズが泰水名義の改訂版で出ています。
もし機会があったら、昔の作品もぜひ読んでみてください。
| kum | 2006/02/02 11:32 PM |

kumさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
私はこの本から津原さんを知ったのですが、「ルピナス探偵団の当惑」も面白そうですねー。図書館であるみたいなので、また借りてみます。ご紹介ありがとうございました。
| ざれこ | 2006/02/05 2:22 AM |

ざれこさん、こんばんわ。
めちゃくちゃよかったですー。ほんと読んでよかった。ものすごい好みです。
こんな大当たりな恋愛小説は久々です。
ブログやってなかったら、絶対に手にとってない作家さんなので、ブログをやっててほんとによかったと思いました。

男の人の書く恋愛小説って、違う・・と思うことが多いのですが、これは共感できました。
ざれこさんがしつこく疑うのわかります(笑)。
| june | 2006/03/01 11:45 PM |

juneさん
でしょ。めちゃくちゃよかったでしょ。って、私が発掘した本じゃないんですけど何故か得意げ(笑)
私も、男性作家の書く恋愛って、いい本もあるんですけどどこか踏み込めない感があったんですが、これはぐっと深くはまりこめましたね。珍しいです。ほんまに男かなあ(しつこい)
| ざれこ | 2006/03/02 12:31 AM |

こちらでは初めましてです、ある子です。
TB、こちらからも返させていただきますね。
お薦め通り、これからちょこちょこ文庫オフにレビューを書かせていただこうと思います。しかし、短くレビューを書くことが逆に難しいかもしれません…。
実は『赤い竪琴』、こちらの記事が切欠で読みました。津原さんの作品は『綺譚集』以来だったのですが、読んでよかったです。素敵な記事をありがとうございました!
| ある子 | 2006/03/02 1:08 AM |

ある子さん
お越しくださってありがとうございます。
この本、ここを読んで手にとって下さったとは。嬉しいです。そして気に入っていただけてなお嬉しいです。
私も次は「綺譚集」読もうと思っています。楽しみです。
| ざれこ | 2006/03/03 9:15 PM |

ざれこさんこんにちは。こちらでこの本の存在を知って、やっと読むことができました。装丁に負けずに美しい物語で、この本に出会えた満足感でおなかいっぱいです。

しかし男の人なんですねえ。作者は。絶句してしまいました。でもだからこその抑制の美、なのでしょうか。
私も次は「綺譚集」できまりです。
| chloe | 2006/03/14 9:09 AM |

chloeさん
でしょう、男の人とは思えないでしょう。でもそうですね、だからこそ淡々とした描写で抑えられたのかもしれないですね。女性が書くと確かにどろどろしてしまうかも。
| ざれこ | 2006/03/16 1:26 AM |

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