本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
<< May 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 「赤い竪琴」津原泰水 | main | 奥田英朗ベスト3@My Best Books! >>
# 「てるてるあした」加納朋子
てるてるあした
てるてるあした
  • 発売元: 幻冬舎
  • 価格: ¥ 1,785
  • 発売日: 2005/05
  • 売上ランキング: 19,139
  • おすすめ度 3.86


読者大賞blogの2005年新刊本ベスト投票に挙がっていた作品を
とりあえず読めるだけ読もうと思ってるんですが、
ゆうきさんから挙がってきたこの作品が図書館で見つかったので、読んでみました。
加納さんの作品で一番好きな「ささらさや」の姉妹編にあたる作品。
父と母の浪費癖から借金がふくれあがり、頑張った高校へも
「お金がなくて入学金払ってないの」と平然という母のせいで入学できず、
しまいには夜逃げする羽目になった15歳の雨宮照代。
両親と離れて、遠い親戚がいるという佐々良の町に向かったら、
親戚の久代ばあちゃんはサヤという女性の家で三婆とたむろっていた。
照代はいやいやその久代ばあちゃんのところに住むことになる。
そこで照代が成長していく姿を描く、連作短編とも長編ともいえる小説。

照代にはほとほと呆れる。最初のころの照代はもう全然かわいくない。
頭がいいのを鼻にかけ同級生を馬鹿にし、でも母が美人だったせいで
容姿コンプレックスがぬけず、どーせ私はかわいくないよ、と思っている。
あーもう全然可愛くないし鼻につく。なんで鼻につくかというと、
私の15歳のころそのまんまに感じるからだ。
私もそのころは勉強しなくても成績だけ良くて、でも見た目はさえない女子中学生、
ひねくれてたし痛かったし。自分を見てるみたいだよ。
私なんぞは佐々良に夜逃げもしなかったから、ひねくれたまま今に至る。
さらに性質が悪い。

最近よく思うのだが、ハセキョーみたいな顔してたら、とりあえず人生は
楽しかったろうと思うのだ。どこに行ってもちやほやされるし、
私が思っているいやなことの6割くらいは感じなくても生きていける。
姫野カオルコ氏によると「美人はもてない、ちょっと可愛い程度で
かわいらしいふりが出来る女がもてる」(「整形美女」での哲学)らしいし、
まあ確かに美人は不幸になるって言うし、某人気女優みたいに
変な男(俳優を辞めて歌手になってしまった音痴)に騙された?せいで
本人の株まで下がったり、と男の趣味悪い人が多い気もするけど、
それでもね、とりあえず第一印象がいいと、いやな思いは減るものだ。

と、まあ私も人並みに容姿コンプレックスは持ってるけど、
姫野氏に触発されて無理やり「コンプレックスがあるほうが人は深みが出るものさ」と
思い込もうとしてる節がある、まあ所詮は浅い女である。
・・・だからどうなのだ、本筋からそれまくってるけど、
照代に根付いてしまった容姿コンプレックス、それをなんか私は見過ごせなかったんだなあ。
つい書いてしまった。

そのコンプレックスとか、高校にいけない不満とか、働かないといけない不満とか。
でも、高校にいけなかったから勉強の楽しさがわかるとか、親がいなくて金がないから
300円の稼ぎがありがたい、とか、働くことの楽しさやつらさがわかるとか。
どん底でないとわからない世の中のキラキラしたことを、照代は佐々良の町で学んでいく。
最後の方の照代は全然むかつく子じゃなかった。うらやましいくらいだった。

「ささらさや」で出てきたサヤの周辺の人々がまた温かく照代を包む。
久代ばあちゃんは厳しい教師だったし照代にも厳しかったけど、
「その厳しさが愛情だってなんでわかんないかなー」と照代に説教したくなるくらい
本当はとても優しいのだ。照代も最後はちゃんと、それに気付いてくれる。
嬉しくなった。それから多分「優しすぎてお人よし過ぎて嫌い」だったサヤとかの
包み込むような優しさにも、だんだん気付いてくれるのだ。
良かった、と遠くからほっとするような、そんな温かいエピソードに溢れた本。

久代ばあちゃんの家には子どもの幽霊が出る。
佐々良は不思議なことが起こる町なのよ、とサヤは微笑む。
気味悪かった照代だけど、ラストに幽霊の正体がわかって、
久代ばあちゃんとの関係がわかるころには、私も涙をこらえて読むことになる。
加納さんお得意のちょっとしたミステリがぴりっと効きつつも、
温かいエンディングに涙した。久代ばあちゃんの包容力と優しさ、かっこよさ。
大好きだなあ。私もこんな先生に出会いたかった。ひねくれてたころに。

ガラスのリンゴのエピソードが好き。
お気に入りのガラスのリンゴにはひびが入っちゃったけど、
溶かしてまた、新しいリンゴを作ることができる。金魚鉢にも出来る。
リンゴにヒビがはいっても、新しく生まれ変われる。
そんな風に新しい日々が始まっていく照代のこれからが、うらやましく感じた。
私もリセットしたい。新しくしたい。でもこの本は教えてくれてるけど、
全ては心の持ちようなのだと思う。
世界は美しいと思えば美しくなる。誰かを好きだと思えば、好きになれる。
そんな気がする。

私も、世界をもっと澄んだ目で眺めたいな。
・・美人は得するとか、そういうことは考えるのはやめよう、とりあえず。
| comments(4) | trackbacks(8) | 01:29 | category: 作家別・か行(加納朋子) |
コメント
私も前半の照代のコンプレックスに
自分自身を見ているようでした^^;
読んでいるだけで不快になるような
強烈なコンプレックスが
徐々に徐々に自然になくなっていく様子に
「この作品は、女の人じゃないとかけない作品じゃないかなぁ」と思いました(笑)

後半は涙ぐみながら読んじゃいました。
加納さんの作品って優しさがにじみ出てますよね。
| のりぞう | 2006/01/21 12:36 AM |

のりぞうさん
そう、鼻につきますよねコンプレックス。でもそれがすごい自然な形で溶けていくのが、すごいなあというかいいなあというか。
私も最後は涙ぐみました。いじわるなようでいて優しいですよね、加納さんの本。
| ざれこ | 2006/01/21 3:09 AM |

私は照代の母親に怒りながら読み始めました。
最後まで彼女には腹立てっぱなし。
がんばるのだよ、照代!って気持ちです。
| なな | 2006/04/19 9:36 PM |

ななさん
お母さんの立場から読んだら照代の母親って言語道断なんでしょうね。私はまだ母じゃないので、こんな母になりそうな自分が怖い、と思っております・・(苦笑)
ドラマはどんなもんでしょう。私もちょっとみてみようかな。
| ざれこ | 2006/04/20 12:36 AM |

コメントする









この記事のトラックバックURL
http://blog.zare.boo.jp/trackback/426104
トラックバック
てるてるあした 加納朋子
てるてるあした 加納朋子 幻冬舎  人生最悪のころ、ちっぽけな田舎町のホームに彼女は降り立った。 全財産を抱え、地図と表札を頼りに路地に入ったが目指す<鈴木>というありふれた表札の家は、ない。 ふいに傍らの家の扉が開き、中から若い女の人が出てきた。
| deltaseaのミステリライブラリ | 2006/01/20 7:53 PM |
てるてるあした / 加納朋子
■ストーリ  親の夜逃げのために高校進学を諦めた照代。  そんな彼女の元に差出人不明のメールが届き、女の子の  幽霊が現れる。これらの謎が解ける時、照代を包む  温かな真実が明らかになる。不思議な街「佐々良」で  暮らし始めた照代の日々を、彼女を取り巻く
| のりぞうのほほんひとりぐらし | 2006/01/21 12:42 AM |
てるてるあした 加納朋子
てるてるあした加納 朋子幻冬舎 2005-05by G-Tools ★★★★★ ネタバレ警報! 一生懸命勉強して、やっと念願の高校合格を果たした照代は、その高校に入学することなく、夜逃げをすることになってしまいます。浪費壁のある母親と、車好きの父親が作った借金が、
| IN MY BOOK by ゆうき | 2006/01/21 9:08 AM |
『てるてるあした』 加納朋子 (幻冬舎)
てるてるあした加納 朋子 / 幻冬舎(2005/05)Amazonランキング:2,076位Amazonおすすめ度:日が照りながら雨の降る、そんな佐々良の町で最高傑作心温まる町、佐々良Amazonで詳細を見るBooklogでレビューを見る by Booklog 前作『ささらさや』と同じく舞台は佐々良という
| 活字中毒日記! | 2006/01/22 6:01 AM |
(書評)てるてる あした
著者:加納朋子 両親の借金のため、高校進学も諦め、一人、遠い親戚を頼って佐々良へ
| たこの感想文 | 2006/03/27 10:52 AM |
読書:てるてるあした(加納 朋子)
てるてるあした(加納 朋子) 「てるてる あした。きょうはないても あしたはわらう。」 「西の魔女が死んだ(梨木香歩)」さんの辛口バージョン、っぽいかな。 両親の破産のため、佐々良に住む久代さんの元に預けられた照代。元教師、無愛想で厳しい久代さん
| 駒吉の日記 | 2006/07/13 6:43 PM |
てるてるあした
てるてるあした DVD-BOX   黒川智花 DVD
| DVD-BOX | 2006/12/23 10:18 PM |
『てるてるあした』
『てるてるあした』 (幻冬舎文庫) 著:加納朋子 親の夜逃げのため、ひとり「佐々良」という町を訪れた中学生の照代。そこで彼女が一緒...
| もみじの本屋 | 2009/04/11 10:31 AM |
NOW READING
ざれこの今読んでる本
Categories
Comments
Trackback
Mobile
qrcode
Profile
Search this site
Sponsored Links