本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「イッツ・オンリー・トーク」絲山秋子
イッツ・オンリー・トーク
イッツ・オンリー・トーク
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 410
  • 発売日: 2006/05
  • 売上ランキング: 4065


えーっと、たまたま図書館で借りていたら芥川賞候補にまたなってしまって、
なんか予習してるみたいになりましたけど、ほんま、たまたまです。
最新作「ニート」読んで、また絲山さんがわからなくなった私、
とりあえず全作品読んでしまおう、と思って手にとってみたのです。
この作品でまた絲山さんが好きになりました。
この作品は確か芥川賞候補になりましたけど、私の感覚では
「逃亡くそたわけ」に近い部分がある、そんな作品集。
「イッツ・オンリー・トーク」と「第七障害」の2編が収められてますが、
どちらも会話のセンスが絶妙です。
リズムよく交わされる、少しお洒落な少し投げやりなそんな会話。
特に「イッツ・オンリー・トーク」は、躁鬱を患って一流会社をやめた、
絲山さんご自身みたいな主人公が設定されてて、明るい話ではないんだけど、
それでも会話はなげやりに飛ばしつつなんかからっと明るいんだよなあ。

そして今頃になって気付いたんだけど、絲山さん作品の主人公の女性は
なんか皆、男らしいんですよね。男言葉も飛び出すとかそういう意味も
あるんだけど、ダメな男どもをどーんと包んで、どんな男でも
面倒みてやるぜ、みたいな男気をすっごい感じました。
これも絲山さんの資質かもしれません。なんか、そういうのが、カッコいい。

「イッツ・オンリー・トーク」は、会社をやめた橘優子の前に
次々現れる男達との友情ともなんとも言いがたい関係を描いたもの。
痴漢が出てくるんですよね。なんかその存在がすごい。
性描写もわりとある。それでも、性の介在しかありえない痴漢の存在、
彼との比較を通して、他の男達との微妙な関係を描いてるような
そんな印象。そのほかの男達とのかかわりがなんともステキで、
やっぱりきた、この絶妙な感じ。と嬉しくなってしまったくらい。
男女の友情というか微妙な関係描かせたら右に出るものはいない作家ですね。やっぱり。

純愛ものがもてはやされて、すぐに愛だの恋だの言う風潮だけど、
違うと思うんだよなあ。男か、女か、ときっぱり二極分化しちゃったら、
世の中全然面白くないしなんの味わいもないじゃないですか。
人間どうしのかかわりとはこんなに繊細で微妙なもんなんだよ。ってことが
この本読んでると実感できる、そんな感じ。

「第七障害」の篤と主人公の関係もとても好きです。
こちらのほうが会話がぽんぽんはじけてて。
乗っていた馬の死から立ち直れない女性を描いてて、第七障害が馬の
障害物の競技の用語と始めて知りました。でも、大事な馬をなくして
途方にくれてしまう気持ちはわかるし、そこからふっと力が抜けていく、
そんな終わり方もステキでした。彼らの最後の台詞のやり取りがすごくいい。

ああ、あと「ニート」の時にも感じましたけど、女性同士の友情に関しても
とてもリアルな視点を持ってると思います。ここでも主人公は
前の彼氏の妹と同居してるんだけど、彼女に感じる好意とちょっとした
嫌悪感が平然と並立してるあたり、すごいわかります。
女性が仲のいい女性に特に感じる微妙な嫌悪感というか、そういうものが
伝わってきてしまって、あいたたた、みたいな。

男女問わず、人と人との距離について、本当に微妙なところをついてくる、
痛いようで共感できるようで・・・そんな作家です。私にとって。
この作品は好き、5作品読んで多数決とったらおおむね好きと出たので、
今後の作品も読んでいきたいと思う。

今回はわりと私小説的内容だったみたいですよね。
一流企業の総合職からリタイアした絲山さんの倦怠は、こんな感じだったのかな。
私の就職活動時はバブルがはじけたころで、でも雇用均等法とかあったし、
そんな法律は知らなくても、なんとなく女性でも総合職でばりばり働いて、
みたいなイメージを持っていた気がします。でも普通に就職して、
働いてる今ならわかるけど、それはきついことなんだろうな、という気が、
すごくします。男性でももちろんきついんだけどさ、女なのに、みたいな
無言の圧力というか、そんなのをすごい感じるような。

あーこんなこと書いてたら桐野夏生「グロテスク」思い出しちゃったけど。
あの壊れ方はたいがいだったけど、「イッツ・オンリー・トーク」みたいな
壊れ方にはまだ、救いがある気がします。哀しいけど、明るい。

なんか関係ないこと書いた気もしますが。思ったことなんでまあいいか。

芥川賞受賞するかなーしてほしいなー
でも直木賞受賞してそっち系作品をたくさん書いて欲しかった気もしました。

※後日談・・「沖で待つ」で芥川賞受賞しました。おめでとうございます。
※後日談・・「イッツ・オンリー・トーク」が映画化。
「やわらかい生活」というタイトルで、寺島しのぶさん主演、
トヨエツや妻夫木くんも出ています。近所でやってないからDVD待ち。
| comments(6) | trackbacks(20) | 01:41 | category: 作家別・あ行(絲山秋子) |
コメント
TBありがとうございました。
私は「海の仙人」(でしたっけ?)以外全部読んだのですが、一番最近読んだ「ニート」のラストの話が辛くてこの先手を出せるのかどうか…と思ってたのです。
だけどざれこさんの>多数決とったらおおむね好きと出たので、を読んで、そうか、そうだよなって思ってます。私もおおむね好きです。
| なな | 2006/01/12 9:20 PM |

ななさん
ああ、「ニート」のラストのんはきついですね(笑)
あの路線に転んでしまったら私も読めるかどうか微妙かも・・・
でも次も読んでしまうと思います。引き出しが多いので、次はどんな感じだろう、って
楽しみな作家さんですね。
| ざれこ | 2006/01/14 2:00 AM |

ざれこさん、こんばんわ。
絲山さんさんは作品ももちろん好きなのですが、ご本人にも妙にひかれるのです。
本人が痛々しい状態なのに、どーんとダメ男を引き受けてしまう・・・そんな主人公についつい絲山さんご本人を重ねてしまって・・。
男気を感じるってすごくわかります。
| june | 2006/01/16 9:49 PM |

juneさん
コメントさぼってるうちに芥川賞受賞ですねー。いとやまさん。よかったよかった。受賞作も早く読みたいです。
受賞の言葉で、「自分にとっては会社が基本で、働いている人たちが共感できる本を書きたい」といった趣旨のことを言っておられて、経歴とか知ってる上で聞くと、すごい覚悟だなあ、みたいなことを感じてしまいました。やっぱり男らしいような気がします。
| ざれこ | 2006/01/18 2:02 AM |

私も「ニート」であれ?っとなったけど、この作品読んでまた好きになった。(笑)
主人公の女性が男っぽいってのも同感。それが返って絲山風味でいいのかも。
よし、次は「沖で待つ」だ。それにしてもデビュー3年でもう5冊も出してるなんてスゴイ。
| るみねえ | 2006/05/30 2:25 PM |

るみねえさん
同じルートで絲山さんにはまってますね?(笑)この本は私も好きです。男らしくって、重いけどさっぱりしてて、いいですよね。
そういや3年で5冊って多いんですかねえ。絲山さんは寡作のイメージでした。恩田陸とかと比べちゃ、ダメですね(笑)
| ざれこ | 2006/05/31 12:00 AM |

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