本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ニート」絲山秋子
ニート
ニート
  • 発売元: 角川書店
  • 価格: ¥ 1,260
  • 発売日: 2005/10/29
  • おすすめ度 4.5


うーん・・・・まずは読み終わってぱっと思ったことを並べてみると

「逃亡くそたわけ」で直木賞候補作家になったけど、
この「ニート」でまた芥川賞候補作家に戻っちゃったなあ・・
(と思ったら芥川賞受賞しましたねえ。1月17日コメント)

とか、

いとやまさんって今までよくわかんない人って感じだったけど
「逃亡くそたわけ」でやっと「友達になれる〜」って喜んだんだけど
それってやっぱり私の気のせいだったみたいで寂しいわ。

とか、

あーまた閉じちゃったな、「逃亡くそたわけ」でちょっとドアをあけてくれた
感じだったけど、また固く閉ざされてしまった。

とか、そんなことをまず思いました。ちょっと寂しかったです。
「海の仙人」「袋小路の男」で私の中で気になる作家としてもやもやとしていた
いとやまさんは、「逃亡くそたわけ」でやっと「好きだー」と思える作家だと
思ったのもつかのま、「ニート」でまたもやもやとした人に戻ってしまいました。
もうこれは私の感覚でしかないので参考にもならないんだけど。

5編の短編からなります。
「ニート」では、ニートの「キミ」がブログで破産寸前の日常を
日記に書いてるのを読んだ作家の私が、「キミ」に出資をするまでを描き、
その続きが「2+1」で描かれてます。
その間に「ベル・エポック」という短編が入り、
そして「へたれ」「愛なんかいらねー」と続き。

どの短編も、なんていうか始まってもいないし終わってもいない、
日常を淡々と切り取ってます。
そのつかみどころのない曖昧模糊な感覚、全く救いが見いだせないし
何も前に進まない、むしろ後ろをむいているような、そんな日常。
それを私はどう捉えていいかわからないまま読み終えてしまったな、そんな感じ。

「愛なんかいらねー」のタイトルどおり、この短編集には愛はない気がする。
「袋小路の男」で究極の純愛小説を書いた、と言われた糸山さんだけど、
実は愛なんて書いたことなかったんじゃないか。なんて思ってしまいました。
ゆがんだ性愛も、「ニート」に見られる「キミ」への感情も、
自己愛にしか感じられないし、永遠の愛なんて信じられないって
「へたれ」の主人公にも語らせていたりして。
人と人との関わりが信じられない、そんな閉じた人達が描かれてしまってる、
そんな印象を受けました。だからかなあ、すごく寂しいんですね。どの作品も。
「ニート」っていう、閉じた人々をタイトルにする意味がすごく、
わかったような気がしてしまった。

ニートになりたいと思うことはよくあります。
そんなん言うたらニートの人に怒られると思うけど、
働きたくないし誰とも喋りたくないし自分の好きなことだけして、
ネットでバーチャルなつきあいだけして人間との軋轢が全く生じない、
そんな世界にいたいと思うことは多々ある。もともと閉じた人間なんです。
だから共感できなかったわけでもないけど、でもなんだろう、
つかみどころがなかった、としか言いようがないんだなあ。

でも一晩たって思うと、どの短編も嫌いじゃないんですよね。
すごく評価の分かれそうな「愛なんかいらねー」も嫌いじゃない。
まあ、変態だからって他にもうちょっとましな変態おるやろ、って気は
すごくしますけども、でも全体としてぼんやり見ると、どれも嫌いじゃないんだなあ。
文章の雰囲気が好きだし、出てくる人達のどうしようもなさ、も
嫌いじゃないんです。どこか芯のところで、わかる部分があるからかもしれない。
つかみどころがなくてどう書いていいのかわからないけど、
案外好きかも知れない、この本、という結論に達しつつあります。

構成はすごくいいと思いました。「ニート」と続きである「2+1」を
つなげず、間に印象的な短編「ベル・エポック」を挟むとか。
あと、「2+1」に描かれる同居人の女性との手紙のやりとりとか
興味深く読んだし。同居しててそんな関係あり得るのか、とか思ったけど
案外やっちゃえるもんかも。そこにも人と人との距離を感じたり。
あと、カエル語の詩、印象的でしたねえ。草野心平さんの詩。
声に出して読んでしまいました。あの詩が引用されている深い意味は
わからないままだったけど、その詩をはさんで主人公が過去や現在に
思いをはせる「へたれ」は、一番好きな短編かもしれないです。
「へたれ」ってタイトルがまず、いい。

・・と、ピンポイント感想を書いて終える。へたれな私。
いとやまさんの本って感想を書くのが非常に難しいんですけど、私だけですか。
| comments(12) | trackbacks(15) | 18:25 | category: 作家別・あ行(絲山秋子) |
コメント
こんばんは。
ざれこさん。

>いとやまさんの本って感想を書くのが非常に難しいんですけど、私だけですか。

ざれこさんだけではありません。
私もです。

何を書いていいんだか、さっぱりわかりません。読後のこれといった感想がくっきりと頭の中に浮かばないんですよね・・・・・

「へぇ。それで?だからどうした。」というのが正直な感想かも・・・です。

TBさせていただきました。
| ゆう | 2005/12/13 9:49 PM |

同じく、絲山さんの作品の感想は難しいです。
私は「イッツ・オンリー・トーク」から読んだのですが、
一応1作目から“好き好き。もしかして大好きなるかも”という気持ちでした。
でも、この「ニート」で“安易に好き好き言わないで!”
と、突き放された気がしています。
だから私も寂しい(笑)
もちろん、この作品は“好き”に入るんですが、きっと片想い。
このもどかしさがまた、心地よくもあり。なのです。
勝手ですね…私。
| ましろ | 2005/12/14 6:33 PM |

ゆうさん
そうですよね書きづらいですよね。
もやもやとした空気のようなものしか浮かばないので困りました。
だからどうした、ですよね確かに(笑)それをいっちゃあ純文学なんかおしまいでしょうけどね・・

ましろさん
私も、好きかどうかわからないのに著作は読み続ける、不思議な作家さんなのです。
でもなんだかんだいいながらまた新刊が出たら読むんでしょうね。
「イッツ・オンリー・トーク」もまた読みます。ああ片思い。

| ざれこ | 2005/12/16 11:54 AM |

一晩たって・・・かぁ。
「あ、あるかも!」と思いましたよ。
薄いですが、イッキに読んでしまうのは違うなと感じる本でした。

なかなかハードな世界が描かれているんですが、私には「静」と感じる1冊です。
| ☆すぅ☆ | 2005/12/28 3:30 AM |

☆すぅ☆さん
そうですね、確かにハード(特にラストの短編・・あれは何?)だけど静かでしたね。「逃亡・・」とはまた違って(あれはなんだかにぎやかだった)、引き出しの多い作家さんです。
| ざれこ | 2005/12/29 5:21 PM |

こんばんは。
「書きにくい」とおっしゃってますが
ざれこさんの感想はとても上手にまとまっているなぁと感心してます。
わたしは読み込み浅いような気が!

そしてわたしもあの草野心平さんの詩が印象に残りました。
いいですよね,あれ。言葉の感覚が。
日本語訳がついててはじめて
「ああ,これ原文のままではやっぱりわからんよなぁ」
と気づいたのですけれど(笑)
| mamimix | 2006/01/21 2:46 AM |

確かに一晩たつと印象がかわります。
私は「愛なんていらねー」にやれれたまま感想を書いてしまったので、「こんな感想いらねー」になってますが…
| なな | 2006/01/23 10:50 AM |

mamimixさん
まとまってるなんてそんな。もう試行錯誤したのがみえみえの感想、恥ずかしいです。
草野さんの詩、よかったですよね。単品で読んでみたいと思いました。意味はわからないんですけど(笑)

ななさん
「愛なんていらねー」にはやられますよね・・。なんでラストに持ってきちゃったんだか。強烈な印象ですから前のが消えてしまう気がします。
それでも次回作は読みますけども。
| ざれこ | 2006/01/24 9:41 AM |

ざれこさんが絲山さんに感じることって、わかります!やっと近づいたと思ったらすっと置いていかれてしまったり・・。なぜだかわからないけれど、絲山さんに対しては、すごく思い入れが強くなってしまうのです。

「愛なんていらねー」は感想書けませんでした。へたれです。
| june | 2006/02/02 11:28 AM |

juneさん
思い入れが強いってなんかわかりますー。普通好きな作家って1冊読んだらだいたいわかるもんですが、絲山さんのは5冊読んでもいまだにわからない、でも読む、みたいな。思い入れとしか言いようがないです、私も。
「愛なんていらねー」は私もどうしていいやら、でしたよ・・・お気持ちわかります。
| ざれこ | 2006/02/02 9:49 PM |

もしかしたら、この作家に対する感想似ているかもしれませんね。ちょっと、首を傾げざるを得ない・・。とくに「愛なんていらねー」は。こういうことも書きたという、露悪的な意志の表明なら、イヤですね。
| すの | 2006/02/25 9:53 AM |

すのさん
確かにそちらの感想と私の、よく似てました(笑)
「愛なんていらねー」は、どうしたんでしょうね。作風の転換だとしたら、今後どうしようって感じです。性愛抜きの男女の微妙なところを、この作家さんには書いていって欲しいので・・。ちょっと書いてみただけ、だったらいいなあ。
「沖に待つ」も読むつもりです。なんだかんだで気になる人なんですよね。
| ざれこ | 2006/03/02 12:43 AM |

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