本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
<< May 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 「孤独の歌声」天童荒太 | main | 「エコノミカル・パレス」角田光代 >>
# 「流星ワゴン」重松清
流星ワゴン
流星ワゴン
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 730
  • 発売日: 2005/02
  • 売上ランキング: 6,456
  • おすすめ度 4.42


「疾走」を読んだ翌日に読んだため、正直印象が薄くなってしまった。
やはり、他の誰かの、できればライトな小説を読んでリフレッシュしてから
読むべきだったかなあという後悔はある。重松作品は、後味の善し悪し問わず、
けっこう消耗するからなあ。

リストラ、冷えた夫婦仲、荒れる息子・・・、もう死んでもいいかなあ、と
ふと思って駅に座り込んだ37歳の一雄。そこにワゴン車が止まり、
彼はふらりとワゴンに乗った。それは、5年前に交通事故で死んでしまった
橋本親子のワゴンだった。
そして、一雄と橋本さんのお父さんと6歳の息子、との奇妙な旅が始まる。

橋本さんにおろされた先では、一雄の過去のターニングポイントになった
出来事がまさに目の前で起きようとしており、しかもそこに現れたのは、
死の床にあるはずの父、それも一雄と同じ37歳の姿で・・・
一雄は過去を変え、現在を変えることが出来るのか?
そして父とのわだかまりは消えるのか?
まず最初に正直に書くけど、設定に無理があると思う。
ワゴンに乗ってタイムスリップするという設定はまあまだしも、
同い年のお父さんが横にいるってのはどうして?まだ生きてるのに。
生き霊?でも現在のこと知らないし、過去からのタイムスリップ?
まあファンタジーなんだから目くじらたてるなよ、と言われたらそれまでだが、
読んでてついつっこみそうになるってのは、ちょっとつらいものがある。
駄作だったらそれはそれでいいんだけど、いい話だったからよけいだ。

このご都合主義設定で描きたかったことはわかるから、いいんだけどね。
同い年のお父さんと会ってわだかまりが解けていく主人公。
1年前に戻って、妻や子の真実を知ることが出来た主人公。
事故で死んでしまってから本当の親子になれた、橋本親子。
彼らのドラマは温かく深いし、説得力がある。だからいいのだ。
でも、この設定でないと、こういう夢物語でないと、こういうことは叶えられないのか?
と思うと、哀しくもなるさ。やっぱり現実は、厳しいのだ。

一雄が過去に戻って、その時には気づかなかった真実をどんどんつきつけられる。
妻はテレクラで男と遊んでいる。息子は中学入試で挫折しようとしている。
一雄が気づかずに無意識に流していた、もしくは逃げていた、そんな事柄を
突きつけられる。そして一雄の世界は変わる。
無自覚でやってることとか、親としてよかれと思ってやってることとかが、
哀しいほど裏目に出る、気持ちが伝わらない。特に一雄と息子との関係では、
こういう小さなことからほころびが出たり、穴が空いたりするんだなあって、
すごくリアルに感じてしまった。

人は知らぬ間に分岐点に立たされている。いつだって。
些細な行動、些細な言動、それがその後の方向を決めることが、ままある。
でも、どうしようもなく過ぎていく、それが現実なのかな、と。
そんなことを感じつつ読む読書は、やっぱり重いよ。

でもこの本では、「さあ、ここが人生の分岐点だよ、今こうやって行動したら
君の現実はバラ色になるよ。」と言った安易な解決をやっちゃうわけじゃない。
現実はやっぱり、現実として突きつけられる。
でも違うのは、一雄が知ってしまったと言うこと。
それだけで、一雄にとって世界は違う風にみえているのだ。
何をどう知るか、何をどういう風に見るか、そんなことで人生はがらりと、
良くも悪くも変わるのだなあ。

橋本親子も印象的だった。
父親が免許をとって、初めてのドライブで運転ミスして、死亡。
新聞でみたら、笑っちゃうような、事故。
でもそのドライブまでに橋本親子がたどった道を知ると、哀しくなる。
死んでからしか仲良くできなかった彼ら。息子の健太君がけなげなだけに、
しんみりしてしまった。

一雄とお父さんとのやりとりも切ない。小さい頃にはでかくて怖い男だと
思っていた父親は、実は泣き虫で弱い部分もたくさんあって。
私には父親がいないから、お父さんでっかいなあと思ったことはないし、
リアルに実感できる部分はあまりないんだけど、
おかんも昔は女だったんだなあ(今はなんか別の生き物に見えるが)、とか、
私と同い年くらいで恋をしたんだなあ、とか思うときもある。
そういう心境と似てるんじゃないかと想像してみたりする。けど、
女のそれはなんだか生々しいんだなあ、これが。うまくいえないが。

ラストの親子立ちションのシーンはよかった。
立ちションっていいよね、男のロマンだ。実際してる人はやだけどさ。

と、3パターンの父と子について、男泣きできる本である。
女の私でもちょっと泣いた。ほら話だけど、いい話。

でもちょっと不満なのは、女性の描き方。なんか、物足りない。
一雄の妻がなんかその、ただのあばずれにしか思えない。
どうしてテレクラに通ってしまったのか?夫が悪いのか?そうじゃないのか?
ものすごい複雑な心の葛藤があるはずなのに、そこらへんの深い描写がなくて、
理解とか共感とかには至らなかった。女がこんなテーマで書いたら、
全く違う話になってただろうな。この妻、桐野夏生に書いて欲しいなあ。

あと、健太君の母親だって、健太くんが近くに行ったらわかると思うよ。
いくら5年も経ってて、死んじゃった子どもだからって、気づかないってことは、
絶対にないと思う。死んじゃってても、自分の子どもなんだから。
まあ、健太君が哀しくなって遠くから見てただけ、なんだろうけどね。

と、少々ネタばれもしたし苦言も呈しましたが、いい話には違いない。
でも3日連続重松清は疲れ果てました。現実のやな部分を、大なり小なり
がつんがつんと突きつけられますから。ま、でも「疾走」よりあとにこれを
読んでよかったかな。と。しんみりといい気分になれたし。
| comments(9) | trackbacks(9) | 19:18 | category: 作家別・さ行(重松清) |
コメント
どちらかといえば、重松清の作品は読んでいる方ですが、この本はけっこう好きな話です。読んだのが1年ぐらい前なので、すこし印象は薄れてきているのですが・・
たしかに、設定にムリがあるといえば、そうかもしれません。でも、主人公が過去に戻り、現実を受け止めて(受け入れて)行く様子、橋本親子の過去、真剣な父親の姿に感動しました。自分が知らなかった思いを知り、過去を受け入れて、でも、ワゴンから降りたときには、あまり変化はなくって。人生、そんな甘いもんじゃない、って。なのに、いまできることがんばろう!という気持ちになれた本でした。
誰かの言葉で「目の前にある選択をしていった結果が、今のあなたの人生だ」っていうのを聞いて、たしかにそうなんだなぁって思いました。なんだかまとまらなくなってごめんなさい・・

| chinae | 2005/11/12 8:59 AM |

chinaeさん
ごめんなさい、けなすつもりはなかったんですけども・・。無理め設定で描きたかったことは汲み取ったつもりだったんだけど。
これ、確かに「現実は甘くない」って結末になってたのは切ないけど良かったです。ぜーんぶうまくいってたら嬉しいけど、ちょっとしらけてた気もします。
それに、小さな選択を積み重ねて人生って動いていくんですよね・・毎日ちゃんとしようって思いましたよ、ほんま。
| ざれこ | 2005/11/14 2:08 AM |

ちえこあさんところから飛んできました。
昨日、この本を読んで号泣してしまいました。
私は不思議な経験をすることが多いので、設定に全く疑問を感じませんでした。(笑)
もともと姿のない心(魂?)が飛んでいくのだから、どんな姿に見えてていいだろうし、その時飛んでいく心は一部でも不思議じゃないんじゃないのかなぁ。
人生の終わりを迎えつつある人達と接する時に、こんな風に人生を振り返って語ってくれる人達がぱらぱらといて、私はこんな風に生きていけるだろうか?とよく考えたものです。
女同士が語り合って分かり合うのは、たぶんもっとずっと後なんだと思います。子育てが終わって、自分の人生に再び戻った位の頃なんじゃないのかな?最近は子供がいない人も多いから、そうすると定年後とかになっちゃうのかも。
とりとめなかったのですが、何十年か経って読んでみたら、ぐぐっときちゃうんじゃないかと思います。
| ひまわり | 2006/06/06 9:53 AM |

ひまわりさん
はじめまして。これからもよろしくお願いします。
この本、「疾走」を先に読んでしまってその印象がすごかったせいか、陰が薄くなってしまって、自分で思った以上に辛口に書いちゃったイメージがあります。自分の感想読み直して「そこまでいわんでも」って突っ込む今日この頃(笑)ごめんなさいね。
私は霊感がかけらもないから変な感じしましたけど、これが自然なくらい不思議な体験をしておられるひまわりさんが気になります・・・
| ざれこ | 2006/06/06 10:45 PM |

ざれこさん、どうもです。
設定的にはざれこさんと違う部分で?てところが私にはありましたが、まぁいっかーという感じで見過ごしました。
自分にとっての分岐点、そんなものがあったかな?なーんて考えたりしますが、自分では判らないものなんでしょうね。
| きつね | 2006/12/27 10:50 PM |

きつねさん
分岐点、まあ、あの時こうしてればなんてことはありますけどね、私は(笑)まあ自業自得なんで。自分じゃわからないところで分かれてってるのかもしれませんねー。
| ざれこ | 2006/12/30 4:07 AM |

初めまして
あの…失礼ですが…
主人公は38歳じゃなかったかな?
あと橋本さんの息子の健太くんは小2だから8歳だったはずです
| みかん | 2007/02/12 11:13 AM |

みかんさん
あ、そうでしたか。すいません、なんかうろ覚えで感想書いてたもんで・・・。
これからちゃんと見てから書こうっと・・。
| ざれこ | 2007/02/12 3:12 PM |

こんにちは

話題の本なので期待して読み始めましたが、
なんだか読みづらくなってきたので、ざれこさんの書評を読んで納得しました。

「同い年のお父さんが横にいるってのはどうして?まだ生きてるのに。」
ここです〜めちゃくちゃひっかかってます。
集中きれると他の本へ浮気しちゃうタチなんで
困っちゃってます(^^;




| るー | 2008/02/06 4:29 PM |

コメントする









この記事のトラックバックURL
http://blog.zare.boo.jp/trackback/369132
トラックバック
「流星ワゴン」重松清
タイトル:流星ワゴン 著者  :重松清 出版社 :講談社文庫 読書期間:2005/10/03 - 2005/10/07 お勧め度:★★★★ [ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ] 死んじゃってもいいかなあ、もう……。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議
| AOCHAN-Blog | 2005/11/12 7:16 PM |
◎◎「流星ワゴン」 重松清 講談社 1700円 2002/2(TB用再掲載)
 こんな本を読みたかった。心に沁みてきた。どこか切なく感じ、少し笑みが浮かび、心温まり、チョチョ切れそうな涙をこらえて読み終えた評者の心にあるのは、満足感に加え、少し増幅された優しさかな?感受性かな?  本書『流星ワゴン』の設定自体は、ありふれた作
| 「本のことども」by聖月 | 2005/11/14 8:14 AM |
珠玉
高校生のとき、現代文と古文は赤点だらけで、数学と化学が得意だった私ですが、昨日うちのシャチョーさんが「ナカジは文学系の頭だね」と言われちょっとうれしかったです。私が本を読むようになったのは、20歳過ぎてからで、それまではテストのときも作者の気持ちなんか
| windsfrom blog ! | 2005/11/15 3:53 PM |
『流星ワゴン』
流星ワゴン 重松 清〔著〕 Timebook Townにて367円也。 一体何日パソコン立ち上げっぱなしだったんだ、と自戒する。 本買ってしまった方が早かったかもしれない。 というのはさておき。 読みやすい文章にうまくノせられましたが、結構ヘビーな内容。 (だったと私は
| 読書の時間 | 2006/06/07 1:10 AM |
「流星ワゴン」(重松 清著)
 「流星ワゴン」(重松 清著)【講談社文庫】  僕らは、友達になれるだろうか?   38歳、秋。 ある日、僕は同い歳の父親に出逢った。 死んじゃってもいいかなあ、もう・・・・・・。38歳、秋。 その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワ
| 京の昼寝〜♪ | 2006/08/13 8:45 AM |
流星ワゴン (重松清)
年配のご婦人が、見ず知らずの若い母親に連れられている幼児の姿に、条件反射的に顔をほころばせる。そんな光景に出くわすと、人の愛する本能の瞬きに触れたような心持になる。これはありがちな光景で、ということは、世の中
| ぶっき Library... | 2006/09/20 6:17 PM |
流星ワゴン 重松清
死んじゃってもいいかなあ、もう…。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死し
| きつねの本読み | 2006/12/27 10:44 PM |
(書評)流星ワゴン
著者:重松清 流星ワゴン価格:¥ 730(税込)発売日:2005-02 会社をリ
| たこの感想文 | 2007/03/04 12:33 AM |
流星ワゴン 重松清
流星ワゴン この本は気楽に♪気ままに♪のんびりと♪のゆきさんにお勧めいただきました。ありがとうございました。 ■やぎっちょ書評 おおお。若い父親と現代を過ごすバージョンのお話。この設定は最近あったぞ!&好き設定。「異人たちとの夏」山田太一さんだ。過去
| "やぎっちょ"のベストブックde幸せ読書!! | 2007/12/03 9:07 PM |
NOW READING
ざれこの今読んでる本
Selected Entry
Categories
Comments
Trackback
Mobile
qrcode
Profile
Search this site
Sponsored Links