本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ルパンの消息」横山秀夫
ルパンの消息
発売元: 光文社
価格: ¥ 920
発売日: 2005/05/20
売上ランキング: 2,800
posted with Socialtunes at 2005/10/31


タイトルがなんかよくないですか、これ。横山秀夫というブランドがなくても
読んでたような気がします。ルパン、大好きなんですよねー。
なんつうか、「ルパン」に象徴される、盗みはぱあっと働くんだけど
それを鮮やかにやってのける犯罪者モノってなんか好きで。
映画「オーシャンズ11」も好きだし、ネズミ小僧も好きだし。
この小説のモチーフの一つにもなっている3億円事件の犯人も然り、です。
ということで、好印象を持ちつつ読み始めました。
事件は15年前に起こる。
今や死語となったツッパリだった男子高校生3人が、期末テストの問題を盗みに
学校に忍び込むことにした。その名も「ルパン作戦」。
その時に起こった教師の自殺。しかしそれは殺人だった?
15年後にたれ込みがあり、時効のその日に当時の男子高校生達が
警察に連行される。時効まであと24時間。殺したのは彼らか?それとも・・

15年前の過去と時効寸前の現在を行ったり来たりという構成がうまく、
ぐいぐい読ませる。当時の高校生達から続々出てくる新事実に愕然とし、
振り回される捜査陣。そこに絡んでくるのは既に時効を迎えてしまった
3億円事件、その容疑者が現在経営しているのが、喫茶ルパン、
「ルパン作戦」が作られた、高校生達のたまり場。
3億円事件を解決できなかった当時の刑事の苦悩や思惑も絡み、
事件は重層的な進行を遂げていく。

ルパン作戦という発想が面白い。高校生のくせして緻密な手段でテストを盗み出す、
このばかばかしさと完璧さが同居してるのがなんかかっこいい。
で、盗んだあとの処理が杜撰でさあ、点数にもつながってないし、それがまたなんか、
盗んだだけですっきりしちゃったんだねえ、みたいな。悪くない。
「ルパン」に象徴される、と私が認める盗みとはそんな盗みなのだ。
結局誰も得しないし損しない、ただ美しい盗みのみが残る。いいねえ、いいよ。
・・・「ルパン」論を展開しても仕方がない。
まあつまり、その作戦と、3億円事件とが絡んでタイトルがつけられてるんだなと納得。

教師の自殺の事件そのものは、まあ順当に、そこそこ予想をつけたとおり
解決していく。もうそれはなんだかねえ、気持ちいいくらい。
私が怪しいと思った人がことごとく怪しかったし。その彼らの関係には
少々驚いたけど、もしかして?ってちらっと思った時もあったし(本当ですってば)
で、「なんだ、単純だったな」と思った頃にやっぱりくるどんでん返し、
そして「なんでこの程度の事件を15年後にここまで調べてるんだ?」という
疑問にもきっちり答える最終章。うーん、ここまできっちり解決してくれると
余韻も何もあったもんじゃないけど、でもなんだかすっきりしちゃいました。

3億円事件と絡めたのがおもしろさの勝因かなあ、と。この事件、単体では弱かったかも。
まあ、最終的な動機の面で行くとちょっと納得できない部分もあるけど、
そこらへんに人間の暗部を見せて、そこが唯一の余韻ってところでしょうか。

あと、高校時代をともに過ごし、盗みまで働いた連中が、
卒業後バラバラになってしまったりとか、またともに卒業できなかった人もいたりして、
人生の岐路、そして失ってしまったものの大きさとか、15年後の世界から
過去を眺めると、そういうことばかりが浮かんでくる、そういう切なさは胸に染みました。
人生って、取り戻せないことだらけですよね。ほんま。

普通に読んだら十分面白いんだけど、敢えて言うなら、横山作品にしてはツメは甘いかも。
警察組織の描き方とかそこらへんとか・・・。まあ、てんこもりすぎたし。
あと一つ違和感と言えば、重要な語り部である、ルパン作戦の一員である喜多、
彼の15年前と現在の姿がなんか一致しないんだよなあ。
まじめにサラリーマンやって変わったのはわかるけど、なんか違う人みたい、
という違和感は時折つきまといました。あと2人が変わってなかったから尚更ですが。
変わったなら変わったでいいけど、たかが15年くらいじゃ、
人間の芯の部分は変わらないもんです。ちったあ変わればいいのに、残念ですけどね。
あと、喜多と奥さんとのエピソードも無駄に絡ませたというか。弱かった気がします。

まあでも、あとで「そういえば」って思うくらいで、読んでる時は気になりませんけどね。
でも横山氏の作品だと思うと、一言言いたくなってしまっただけで。
それだけ、横山氏の普段の作品の完成度が高いんだろうな。改めてすごさを実感。
| comments(6) | trackbacks(18) | 11:58 | category: 作家別・や行(横山秀夫) |
コメント
>もしかして?ってちらっと思った時もあった
凄いなー。
私は、全く想像できませんでした。
だから、そこの部分を読んだ時は、「え!うそー!!」と声を張り上げてしまいましたもの。
私は、男女関係の機微に疎いのかしらん!?

確かに喜多は変わり過ぎていたのかも…。
ただ、今が、彼本来の姿なのかな?とも思いました。
仲間の一人が、彼に進学を勧めましたよね?あれは、「お前はこんな所に居ちゃいけない」っていう意味なのかな?と思ったのです。彼は、喜多の本質を見抜いていたのかなと―。
いや、単なる妄想なのでしょうが…。^^
| nemuri_neco | 2005/11/01 4:41 AM |

≪ルパン≫とつけば
読まずにはいられないですね。
それだけで惹句になるかも。

でも読み始める前には
横山さんとルパンは結びつきませんでしたけれどもね^^;
| ふらっと | 2005/11/01 7:46 AM |

眠り猫さん
いや、ディスコのシーンでちらっと思っただけなんで、自慢するほどのことでもないんですけど。一人はもとからちょっと怪しいなとは思ってました。まあでも、その二人のイメージからは結びつきづらかった・・そういうキャラか二人とも、みたいな(笑)
喜多は確かに若い頃無理してたんでしょうね。でもなあ、違和感が・・短気なのは相変わらずでしたけどねー

でも眠り猫さん今年一番かも?っておっしゃってたの、なんかわかりましたよー。ぱあっと読めてはらはらして、一級のエンタメだったと思います。読後感もいいですし。

ふらっとさん
ルパンに弱いんですよ私。喫茶店の名前が変わってたところでは笑ってしまいましたわ。
そういや聖月さんのレビューで「嶺舞子にふじこちゃんを連想した」ってありました。そういえば?ですよね。
| ざれこ | 2005/11/02 1:42 AM |

はじめまして☆
今さらながら読みました。
男女関係とか、いろいろな意味で「この人怪しい…」とその場その場ではわたしも思ったのですが、最後の頃には思ったことも忘れてて…(苦笑)
あと女性同士の関係とか、それがひきがねになっていたのは、「やられたー」感いっぱいでした。(笑)

あとわたしもタイトルが不思議な感じで、本屋で手に取ったんです。
いまさら「ルパン」なんてと思ったのですが、やっぱりミョーに気になりますね。(^^;;;
TBさせていただきました。
今後ともよろしくです〜♪
| ルールー | 2005/11/06 9:39 PM |

こんにちは。
やっぱり、タイトルですよねー。
私も子供の頃、ルパン大好きっ子でした。
タイトルだけで、もう読まずにはいられない感じでした。
面白くて、よかったです。
| ゆうき | 2006/02/02 7:47 PM |

ゆうきさん
私は五右衛門派です(笑)子どもの頃は多分本気で恋をしていました。え、その話じゃない?
デビューとは思えない疾走感、さすがでしたね。面白かったですね。
| ざれこ | 2006/02/02 10:09 PM |

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