本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「変身」東野圭吾
変身
変身
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 620
  • 発売日: 1994/06
  • 売上ランキング: 31,299
  • おすすめ度 3.72


今回は真面目に感想書きます。だから皆様、見捨てないで下さい。

先週は東野圭吾週間でした。
彼の作品ばかり一週間で5冊読みましたが、たいしたもんだなあ、と思うのは、
普通同じ人の作品ばかり立て続けに読むと、私って飽きちゃうみたいで、
だんだんつまんなくなっていくんですよね。穿った読み方しちゃうと言うか。
でも彼に関してはそれがない。がんがん読んでいっても平気みたいで。
まあ、あえて違う作風のを選んだってのもあるんでしょうけど、
これだけ引き出しの多い作家ってあまりいないですよね。
変な言い方ですが、企画力に恵まれた作家だなあ、って気がします。

この「変身」は正統派。ミステリじゃないけど、正統な小説。
成瀬純一は、内向的で優しく、絵を描くのが趣味の、普通の男性。
画材屋の恵とのつきあいもはじまったばかりで、平凡な日々を送っていた。
だがある日、不動産屋で強盗に頭を打たれ、目がさめたら病院、
そして自分が脳移植をされたと知る。
退院後日常に戻る純一だが、自分がどんどん別の人間になっていくのを自覚する。

脳移植って今どこまで出来るのかなあ。ブログで指摘があったように
ブラックジャックにしか無理じゃないのかなあ。つまり不可能。今の段階では。
だからこの本はそういう意味ではかなりファンタジーな部分が強かった。
そもそも最初につっこみたかったが、主人公は自分の脳のどの部分が移植されたのか
全く聞かないんだよなあ。右脳か左脳か、海馬か、各部位によって働きが違うってのは
どんどんわかってきてることだし、気になって当然だと思うんだけど。
絵が描けなくなってその代わりに音感が異様に発達したってことは右脳かなあ、とか
でも人格形成にもろ影響与えてるし、うーん。とか、考えたりしてたんだけど、
途中でファンタジーと割り切りました。どうせ詳しい説明されたってわからないんだし。

自分が自分じゃなくなっていく、しかしこの脳は誰の脳だ?誰の心だ?
純一は密かに調査をし、自分の脳を乗っ取ろうとしている人間を突き止める。
っていうかこの展開(誰の脳か)は最初から読めてたんで、
この謎を最後まで引っ張られたら正直つらいな、と思ってたら、あっさり中盤でわかる。
わかってからの主人公の行動、そして自己の崩壊。そこらへんから
目が離せなくなってしまった。必死で読んだ。

本来の自分と脳乗っ取り人間との闘い、が一人称で綴られる。
「僕」がいつのまにか「俺」になり、口調がきつくなり、恵に魅力を感じなくなり、
そして暴走していく自分。だんだん、罪悪感や人間らしさが消えていく。
でも、純一はどこかに残っていて、彼を苦しめる。
そしてラスト、哀しいけど、でも救いがあるような。

自分ってどこにいるんだろう。ふと思う。脳のどこに、私が私であることの
証があるんだろう。魂がどうこうとか宗教的なことは言う気ないけど、
自分の核がどこで、それはどんな形なのか、と、漠然と考えたりした。
自分が自分じゃなくなるってどうなんだろう。私は脳移植もしてないし、
常にいやんなるほど自分だ。「あの子みたいにかわいい性格してたらよかったのに」とか
思うことはたくさんあるけど、それでもそのかわいい子に乗っ取られたら
どう思うんだろう。やっぱり嫌かなあ。嫌だろうなあ。
自分だってこんなんだけど楽しいことも嫌なことも経て今の自分になってるわけで、
変わるんだったら自然に変わりたいし、何かに裏打ちされて変わりたい。そんな気がする。

映画の宣伝では純愛物語みたいな印象を受けるけど、違う気がする。
恵の献身には心打たれるんだけど。主人公の変わっていく内面を容赦なく描いて、
自分が変わっていくことで、今までの自分の人生も消えてしまう、
でも自分は生きてきた。人間って、人が生きることって。と、難しいことまで
考えてしまうような。そういうまじめな小説。

あ、でも、純粋に純一のみの視点を想像すると、これは確固たる純愛小説だった気がする。
一途に恵を思っている純一が、たまに垣間見えて、そこが切ない。

一人称で難しい心理の動きを描いてますが、淡々と客観的な印象を受けた。
東野作品ではもともと過剰な心理描写はあまり見られないけど、
それでも確実に感情を揺さぶるものがある。不思議だ。

しかし、このテーマで舞城とか町田康とかが小説書いたら一体どうなるんだろう、
ともふと思ったりした。ものすごい混沌とするんだろうな。読んでみたいな。

| comments(11) | trackbacks(11) | 17:39 | category: 作家別・は行(東野圭吾) |
コメント
東野圭吾という作家さんは、自分の企画に酔いしれず、読者に娯楽を提供することを常に意識されているなーと思います。

やっぱり、容疑者X…が気になります。
| オプト | 2005/10/19 12:32 AM |

そうそう、それが言いたかったのですよ、オプトさん(←手柄横取り風返答)

容疑者Xの献身、評判高いみたいですね。私もすごく気になってます。図書館で50人予約を待つ間に「予知夢」で予習しないと、と思ってます。
| ざれこ | 2005/10/19 1:48 AM |

うんうん、ナニワの芸人魂ってヤツですよね。
| アトマツ | 2005/10/19 11:47 AM |

関西人にとって、普通に会話しながら、並列してオチを考えておくことがマナーですからね。
| オプト | 2005/10/20 12:39 AM |

そういや大阪出身でした。性ですね・・
私たちも日常会話で鍛えられてますもんね。オチをちゃんとつけるために、話す順番からとっさに考えて喋ったり。苦労が多いです。
| ざれこ | 2005/10/21 5:40 PM |

純愛小説…確かに!なるほど!
なんてえらいんでしょうって思いました。私なら絶対すぐ愛想をつかして終わりです…。あぁ、思い出し泣きしそう。
| chiekoa | 2006/02/01 2:13 PM |

脳って、生きてるって不思議。そんなことを考えさせられました。主人公がどんどん変わっていく様は恐怖でした。
淡々としているかのようで、すっかり感情移入して深く深く読まされてしまう。さすが東野さんですよね。
| ひろねこ | 2006/03/06 10:13 PM |

ひろねこさん
そうですね、どこ使って生きてるんだろ、って思いますよね。神経の伝達機能でしかないはずの脳で、私らはこれだけ考えたり悩んだりしてるわけで、とても不思議です。
東野さんの筆致はいつもとても淡々としてますけど、ぐっと踏み込まされる部分ありますよね。この本は東野作品の中でも特に好きな本です。
| ざれこ | 2006/03/07 1:55 AM |

はじめまして。レイと申します。
ざれこさんは色々な本を読まれてるんですね。
書評もこれだけきちんと書かれていて、感心してしまいます☆
私も本が大好きで、読後の感想など幼稚な文章ですが時々書いてます。
よろしかったら1度遊びに来てみてください。
また訪問させていただきます。
| レイ | 2007/11/21 10:05 PM |

「変身」は、読んでてつらくなるほど悲しい話だったけど、ラストはちょっと良かったです。なにより「自分」というものについて考えさせられました。
| k | 2009/05/31 4:14 PM |

はじめまして!たった今、変身読み終わったとこなんですが
なんというか・・・
深く深く考えさせられる小説で食事もわすれ一気にガーっと
呼んでしまいました。

| ai | 2011/10/03 12:55 AM |

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