本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
<< December 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 「真相」横山秀夫 | main | 「リトル・バイ・リトル」島本理生 >>
# 「レディ・ジョーカー」高村薫
レディ・ジョーカー〈上〉レディ・ジョーカー〈下〉



日曜日の朝5時まで読み、読み終えて眠れずに悶々としました。
いくら連休だからって昼夜逆転してどうよ、と思いつつ、やめられるわけがない。
いやあ、すごい本でした。夢中で読みました。生活止まってました。
面白いと言っていいのか、すごいといっていいのか・・
職場の先輩が貸してくれた本で、もう一人先に読んだ人と
この本の話題でもちきり、だけど私に気を遣ってネタバレ部分は
話せなかったお二人に今度は私が気を遣い、読んでみることに。
正直、合田刑事シリーズの前作「照柿」が執拗な長さなのに
事件がほとんど起こらなかったことで、傑作と認めつつもかなり疲れた私、
次を読むのは1年後くらいでいいか、と思ってたんだけど、
いやあ、正直今回も1週間かかりました。疲れた。
でも、「照柿」よりも事件性は当然あったし、この本にどっぷり浸かっている
1週間は充実したものでした。

しかし先輩はひとつだけネタをばらしてくれてまして。
合田刑事の決断。「マークスの山」から描かれていた
合田刑事の元妻の兄との関係が新たな局面を迎えるんですねえ。
詳しくは聞かないで下さい。まあそこだけばらされてたもんで、
ラストの展開にもついていくことができました。
知らなかったら混乱したに違いない・・

この小説はかのグリコ・森永事件をモチーフに描かれている。
グリコ・森永事件(Wikipedia)参照)
今、気になって事件の概要を読んだら、チョコをビールに置き換えてはいるが、
かなりの割合でこの事件との類似性が見られるようだ。驚いた。

標的となった日之出ビールの社長、犯人グループ、警察、新聞記者、
それぞれの思惑で事態が転がる様を克明に描き、
更に背後に総会屋や政治家が絡み、また被差別部落出身者への就職差別問題、と
非常に微妙な問題も絡めながら、事件は進む。
事件は実は競馬好きの爺さんと彼の競馬仲間が起こし、彼ら集団だけの犯行だった
はずなのに、背後に裏社会が次々絡んできて、経済が苦手な私が混乱しまくる
裏金が動き、株価が動き、事件は勝手に社会全体をも動かしていく。
それに社長や会社や、果てには警察、犯人たちまで翻弄されていく。

1兆円企業を背負う社長が何を考えているかなんて私はわからないが、
この主人公の一人の城山社長は、一般的社長よりクリーンな気はしたけど、
大会社を背負っての責任を、地味にかつ誠実に担っている。
彼がしかしそんな卑劣な犯罪に遭い、でもその原因が自分の親族にあると
知ったとき、苦悶にもだえながらもひとつの結論に達していく過程は、
それが正しいか間違っているか、勝ったか負けたかはともかく、
一人の弱い人間が自分の罪を背負い生きていく凄まじさを感じた。
ここまで一人の人生を私に重くのしかからせるなんて。

余談だが、現在自分の上司の馬鹿さ加減にうんざりしている私としては、
理想の上司だ。この人が社長なら仕事もさぼりませんとも。

・・そんな風なのだ。全員の人生の弱さやつらさや哀しさ、
そして彼ら一人一人が事件を通じてそんな今迄にひとつの踏ん切りをつけるさまを、
これでもかと私にのしかからせる、すごい本だったのだ。
そりゃ疲れるに決まってるのだ。疲れたし哀しかったしつらかったのだ。

ラストまで読むと、凄まじい虚無感に襲われた。
これまでこれでもかと見せ付けられてきた、彼らの人生が全部ことごとく
足元からくずおれていくような気がしたからだった。
今迄の自分に決別し、ひとつの決断を下してそれを受け入れ、
しかし自分の今まではいったいなんだったのか、そう思って地団駄を踏む
その瞬間が、また私に何人分も襲い掛かってきたのだ。これはきつい。

崩壊に次ぐ崩壊。個人がいくらあがいてももがいても、
裏も表も含む社会全体が個人をひねり潰すなんて屁でもない。
それを思い知らされるような。

でも、きついながらも、社長の下した決断のすがすがしさが
この小説を救ってるのかもしれない。
あと、合田刑事が、やっと人間らしく生きていこうとする様子は、
まあちょっと複雑な心境だけども、良かったとしておこうか。

このミステリがすごい、のいつかの年の1位だったらしいが、
ミステリかなあ。広義ではそうだろうが、これは優れた人間ドラマだ。
社会という大きなものの中でもがき続ける人間達のドラマだ。
圧倒的なすごさ。これだから本を読むのはやめられない。
1週間かかろうが1ヶ月かかろうが、この本に出会えたことは私の幸運でした。
暇を作って読んでみて欲しい。できたら「マークスの山」「照柿」もあわせて。

しかしこのシリーズ3作に出てくる合田刑事、全体としてみたら
えらい複雑怪奇な人間像が浮かんでくる。いまだつかみきれない。
偏執的なとこがあったり、人間としてかなりの欠陥を抱えてると思うが、
それでも惹きこまれる魅力がある。なんだろうなあ。



| comments(4) | trackbacks(9) | 00:43 | category: 作家別・た行(高村薫) |
コメント
ざれこさん、こんにちは。
トラックバックとコメントをありがとうございました♪

>ミステリかなあ。広義ではそうだろうが、これは優れた人間ドラマだ。

同感です。私も「このミス1位」にはちょっと違和感がありました。
高村さんの本は濃密な人間ドラマだと思っています。
では、これからもよろしくお願いいたします。
| sumika | 2005/10/07 7:15 PM |

高村薫さんの本は、『黄金を抱いて翔べ』、『リヴィエラを撃て』『李歐』『我が手に拳銃を』を読みました。私的に集中するのに時間がかかりますが、読み進めるとのめり込んでしまう本です。まだ『レディ・ジョーカー』は読み始めたばかりなので先が楽しみです☆

私もちょっとづつ本の感想とか書いてるブログを更新してますので、良かったら除いて見てください!!
| gyaaaaちゃん | 2007/09/10 2:51 PM |

gyaaaaちゃんさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
高村さんの本はだいぶと読みましたねえ。長いけどのめりこみますよねー。「レディ・ジョーカー」はもう読み終わられたでしょうか?
濃い世界をお過ごしのことと思います(笑)
| ざれこ | 2007/09/12 12:50 AM |

ざれこさんこんにちは。

遅ばせながら、私やっとレディ・ジョーカー読み終わりました。
高村さんの本は相変わらず濃いですよね。内容が・・。なんか気を抜いて読んでいるとあっという間に展開から置いてきぼりを喰らう感じです(汗)
合田刑事シリーズは初めてだったので、これから『マークスの山』『照柿』読みます〜。

あと、トラックバックさせて頂きました☆
| gyaaaaちゃん | 2007/09/25 2:36 PM |

コメントする









この記事のトラックバックURL
http://blog.zare.boo.jp/trackback/316599
トラックバック
[文庫化本]「レディ・ジョーカー」高村薫
 
| (非公認)読者大賞blog | 2005/09/22 3:09 PM |
高村薫「レディ・ジョーカー」への思い入れをつれづれなるままに
宮部みゆきを読み終えていまさら高村の「レディ・ジョーカー」の凄さを感じる。これまでも折々に感じたことをメモしてあったがそれらを記してみよう。
| 日記風雑読書きなぐり | 2005/09/26 9:28 AM |
「レディ・ジョーカー」
高村薫さんの「レディ・ジョーカー」に圧倒されたあと、 大沢在昌さんの「闇先案内人」を読んだら、 妙に戦闘的な気分になってしまった。 いかんっ。 私はまったりした気分が好きなのに。 で、次に手に取ったのは… 「傷口(KIZU) 」「殺手-ヒットマン-」篠原
| 徒然花茶 | 2005/10/07 7:16 PM |
【新リア王】上巻を読み終える&【上弦の月を喰べる獅子】上巻を読む
高村薫【新リア王】を 読みながら、 夢枕獏の 【上弦の月を喰べる獅子】 という小説を 読んでいます。 なにも【新リア王】を 読み終えてから、 別の本に手をつければ いいものを…… とは思いますけど、 置いてあると なんか気になっ
| ぱんどらの読書日記 | 2005/12/18 4:20 PM |
DVD 【レディ・ジョーカー】
私は吉川晃司ファンであり なおかつ郄村薫ファンでもあります。 「郄村薫の小説【レディ・ジョーカー】が  映画化され、吉川晃司が出演する」 と聞いたときは、 激しい驚きと戸惑いと喜び が、頭の中をグルグル巡ったのでありました。 なぜ、喜び10
| ぱんどらの読書日記 | 2005/12/18 4:23 PM |
高村薫氏講演会(サイン会にも突撃)その1
さる1月28日土曜日、青森市の「ぱるるプラザ青森」で高村薫氏の講演会が行われました。 高村氏といえば、私の大好きな合田雄一郎シリーズ、「マークスの山」「照柿」そしてかの「レディジョーカー」を世に送り出した作家、超実力派社会派人気作家ではありませんか!
| 天気待ち〜晴れるといいね〜 | 2006/02/02 8:47 PM |
高村薫『レディー・ジョーカー』
「マークスの山」「照柿」「レディー・ジョーカー」とつづくこのシリーズ、シリーズとはいえ一作ごとに独立した作品としてそれぞれ完成度が高く、設定の緻密さ、ディテールのリアリティ、重厚な筆致、単なるミステリーというにはあまりにも格調の高い、ジャンルに関係な
| 日々のことわり | 2006/12/07 11:04 PM |
レディ・ジョーカー
この三連休でやっっっっと『レディ・ジョーカー』頭爆発するかと思いました部落差別あり、国差別あり、大企業の裏事情あり・・・。 部落差別・・・。日の出麦酒の社長の姪が不用意に交際相手に伝えた部落差別の言葉。 ここからどん
| 人生山あり谷あり日記 | 2007/09/25 2:30 PM |
読書メモ『レディ・ジョーカー 上』
ページを開いた瞬間から、ひきこまれました。 宮部みゆき『理由』より面白い、という人がいるのも頷けます。まだ最後まで読んでいないので、なんともいえませんが。 こんがらがっていて、うまく説明できないんだけど。 あらすじは、ようするに日本ビール界最大手
| 自由の森学園図書館の本棚 | 2009/01/25 1:46 PM |
NOW READING
ざれこの今読んでる本
Categories
Comments
Trackback
Mobile
qrcode
Profile
Search this site
Sponsored Links