本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「真相」横山秀夫
真相
真相
  • 発売元: 双葉社
  • 発売日: 2003/05
  • 売上ランキング: 64,446
  • おすすめ度 4.44


「クライマーズ・ハイ」を読んですぐにこれを読みました。
長編も読み応えありますが、横山氏の短編はやっぱり凄い。
なんていうか無駄もなく、技術的にかなり計算されてる感じがするのに、
人情味厚いし読後感も豊か。まさに職人芸、な短編集です。

主役は世間でいうオヤジ層?30代以上の、ちょっと負けちゃってる人々。
昔あった事件にがんじがらめにされ、過去の呪縛を解けないでいる人々なんかが、
前に一歩踏み出そうとする、そんな短編集だった。
やはり、今オヤジを書かせたら横山氏、ですねえ。

以下、収録順に。
・真相
息子を殺した犯人が、10数年ぶりに逮捕された。
税理士の主人公が10年ぶりに聞いた真実とは・・・

父と、いい子だと思っていた息子とは実はわかりあえていなかった?なんて
苦い感想を抱くが、子どもは親の背を見て育つんだよなあ、なんて
当たり前のことを思ったり。親子の関係について心に一つ波紋を投じる一編。

・18番ホール
県庁を辞め、村長選に出馬した主人公。村長になり、リゾート地開発計画を
自分で進めたい。ゴルフ場建設予定地の18番ホール付近には、実は・・・

いやあ、これが一番すごい短編でしたね。ラスト1ページの展開、
そこからくる苦い読後感。すばらしい。
短編の構成として非常に優れているのみならず、過去の罪にがんじがらめにされた
男の弱さ、人間臭さもすごく出ていて、一番読んだあとに残る短編でした。

・不眠
リストラされ、睡眠薬実験台のバイトを引き受けた主人公、
それから眠れなくなってしまう。明け方、クビになった会社をうろついてたら、
近所の男性が車を飛ばしていた。その後強盗殺人が起こり、自分が疑われ・・

リストラされて必要とされなくなった男の悲哀が、哀しいほど出ていました。
職安に認定に行ったりっていう生活や、
車の営業をしていたから近所の車を全て覚えている、といった哀しい癖まで。
でも「不必要な人間なんかいない」という結論に達した主人公が、
ちょっと前を向く様子は苦いながらもさわやかでもありました。

・花輪の海
柔道部の合宿、いじめとしか思えない先輩からのしごきに耐えていた新入生、
しかし一人が亡くなって。10年以上経て、同級生が集まることに・・

これはなんか怖かったなあ。極限状態の人間が何を思うかってのが。
それこそ仲間の死でも喜んでしまうような極限状態。
でも喜んだことを悔やんでしまう彼ら。その悔いを、
ちゃんと自分の中で精算し、進んでいこうとする。
前向きなラストではあったけど、苦かったし、怖かったな。

・他人の家
強盗を犯してしまい服役した男、出所しても過去の犯罪が世間にばれてしまい
家を追い出されることに。反省のためしていたゴミ拾いで知り合った老人が、
自分の養子になれ、と提案してくるが。

これが2番目に凄かった。ラストの数ページの展開には釘付けでした。
うまいなあ。
強盗という過去から逃れられない主人公、でも彼の運命にともに従う
妻の姿を美しいと感じました。あんないい奥さん、いないような
気がするけどね・・・有る意味男の理想というか。
でも、誰かを愛するのであればそうありたいという想いも、少しあるかな。


| comments(3) | trackbacks(8) | 17:00 | category: 作家別・や行(横山秀夫) |
コメント
横山秀夫さん
警察小説を書かせたら一番だね、
というのはよく耳にするけれど
オヤジを書かせたら・・・・・
というのは新しい見方かも・・ですね。
でもたしかに、横山作品のオヤジたちは
愛すべきオヤジ振りですね^^
| ふらっと | 2005/09/17 7:05 AM |

ざれこは、長編を計算しなかった。


| BlogPetのごろう | 2005/09/17 3:34 PM |

>ふらっとさん
なんかオヤジ特有の熱さ、みたいなものを感じるんですよね。全然不快ではないですが、現実にいたらどうかな・・(苦笑)
でも女性が主役だった「顔」も面白かったし、つまりすごい作家だとしかいいようがないんですが。
| ざれこ | 2005/09/19 2:30 AM |

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再掲 ○「真相」 横山秀夫 双葉社 1700円 2003/6
『陰の季節』や『動機』などの初期の横山警察小説を評して、横山秀夫の作品は体力と気力が半分の高村薫みたいと揶揄されている記事に笑いながらも大いに頷いた記憶のある評者なのだが、本書を読んでいたら今度は向田邦子を思い出してしまった。向田邦子書くところの、落
| 「本のことども」by聖月 | 2005/09/17 6:16 AM |
横山秀夫のことども
  ◎ 『陰の季節』 既読書評なしm(__)m   ◎ 『動機』   ◎ 『半落ち』 ◎◎ 『顔−FACE−』   ◎ 『深追い』 ◎◎ 『第三の時効』   ○ 『真相』   ○ 『クライマーズ・ハイ』 ◎◎ 『影踏み』   ◎ 『看守眼』 ◎◎ 『臨場』 ◎◎
| 「本のことども」by聖月 | 2005/09/17 6:16 AM |
読書感想「真相」
読書感想「真相」 真相 【評価】★★★★
| 三匹の迷える羊たち | 2006/01/23 12:06 AM |
(書評)真相
著者:横山秀夫 真相価格:¥ 630(税込)発売日:2006-10 全5編を収録
| たこの感想文 | 2006/10/26 12:22 PM |
横山秀夫「真相」を読んでいろいろ
難しくないということで読んでみました。
| らび草子 | 2006/12/01 9:20 PM |
『真相』
真相 横山 秀夫著 『第三の時効』とはまた違ったドキドキ感でもう息が止まりそうでした。 追われる側の視点モノ。うーん苦しい。 順調な人生からちょっと外れてしまった男たちの物語。 真相 高校生だった息子が殺されてから10年。とうとう犯人が捕まった。 しかし、
| 読書の時間 | 2006/12/08 3:01 AM |
「真相」 横山秀夫
お薦め度:☆☆☆+α / 2007年3月2日讀了
| 仙丈亭日乘 | 2007/06/14 5:31 PM |
真相/横山秀夫
横山作品はほとんど読んでおり、これもすっかり読んだ気になっていたのですが……未読でした。 真相 (双葉文庫)横山 秀夫双葉社 2006-10売り上...
| 黒猫の隠れ処 | 2009/01/03 9:01 PM |
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