本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「火天風神」若竹七海
火天風神
火天風神
  • 発売元: 新潮社
  • 発売日: 2000/04
  • 売上ランキング: 566146
  • おすすめ度 5.0


※再文庫化につき記事更新。
私は絶版になった新潮文庫を手に入れて読んだんだけど、
最近出た光文社文庫の方がかわいいです。ちえ。

火天風神


以下、新潮文庫版の感想(改稿してるかどうかはわかりませんが)
まずはお詫びから。
この本、後にも触れますが台風を舞台としたパニックサスペンスです。
私、台風がきたらこの本を読んで臨場感に浸ろうと思っていて、
先週のでかい台風がきたころにこれを読み始めました。
しかしここ、近畿地方にはたいした台風はこないで、
九州や山口県あたりで甚大な被害をもたらした模様。
のんきに本なんか読んでる場合じゃない中、のんきに本を読んでしまって
すごい不謹慎な自分、に反省しつつ、でも読みました。ごめんなさい。

さて、本のほうの感想ですけど。
未曾有の台風が三浦半島を直撃、そこにあるリゾートマンションには
いわくありげな人々が集まっていた。

医者になれと親に言われてるが気象予報士になりたい少年と彼の叔父、
夫と喧嘩し家を飛び出して今までの人生を見直している主婦、
一人でやってきた耳の聞こえない少女、不倫しているカップル、
そのあとをつける興信所の男、教師を引退し釣りをしている老人、
仲間内恋愛に励む映画研究会の大学生数名。
そこに、いつかでかいことをしてやる、と言いつつ酒ばっかり飲んでる
管理人。集まっただけで事件がおきそうなそんな連中たちが
風速80メートルという想像を絶する台風に遭遇する。

これだけの登場人物を出しながら、彼ら全員が抱えてきた過去や現在、
そしてこれまでの葛藤なんかを浮き彫りにしてしまう、
その書きっぷりはすごいというしかない。
くどくなりそうなそんなことを軽々とやり遂げて、
なおかつ目が離せない緊迫感とスピード感をかもし出せる。
やっぱりすごい作家だなあ、と改めて贔屓してしまう。

そして映画みたいな展開ながらも、全員が助かるわけではなく。
助かったものの中でも、台風という災害で自分の弱さずるさをさらけ出して
苦い結末を見たもの、逆に思ってもいなかった強さを発揮して、
今後の人生を生きていくうえでの糧にしたもの。
人間の闇や弱さずるさをきっちりえげつなく書きこんで
苦い気分ももらうんだけど、今回は前向きな読後感の方が強かった。

旦那の機嫌をとって生きてきた主婦、聴覚障害者の少女、そして少年。
社会から弱者とみなされがちな彼らが3人で、
おかしくなってしまった管理人と必死で戦う。その頑張りようはいっそ心地いい。

でも大の男がやってきたら、彼ら3人がよってたかるより強かったりする。
そのときの彼女達の、悔しいっていうそんな気持ち、
それはすごい、わかる気がしたなあ。
非力な自分がどれだけ頑張ったって、強いものにはかなわない。
そんな現実も見せ付けられる。

でも、弱いと思っていた自分から引き出された意外な強さ、
それがこれからの人生を変えていく、その力強さが爽快だった。

ここに出てくる女達の強さに力をもらった。
女達だけでもないか。男たちはだいたい情けなかったけど、
興信所の竹丸と叔父さんはなんか良かったな。

ミステリ的要素もあり、ちょっとしたどんでん返しに驚き、
そして全部読んでから最初のプロローグを読むとまた驚き。
仕掛けもしっかり作りこまれていて、最後にしっかり驚かされた。
殺人事件も台風も火事も人々の人間模様もとてんこもりなのに、
ばらけずにひとつに収束していく手腕もスゴイ。初期の名著。

こういう状況って人間の本性出るよねえ。私だったら誰みたいになるだろう、
とっとと逃げたりするのかな。と考えて暗澹たる気持ちになった。
一人でとっとと逃げるのはいいけど、誰かを置いてとっとと逃げるのだけは
やめたいな。と思うけど、どうなるんだろうなあ。
自分でわからないところが怖い。
・・・災害って、人間が一番怖いのかもね。
| comments(1) | trackbacks(3) | 12:56 | category: 作家別・ら、わ行(若竹七海) |
コメント
私は間違いなく一番最初に海に近づいておぼれるタイプですね…。これ読んで本気で反省したので、もう死なないかもですが…。
| chiekoa | 2005/09/14 11:29 AM |

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火天風神 若竹七海
火天風神若竹 七海新潮社 2000-04by G-Tools 戦後最大級の台風が、三浦半島に上陸します。ちょうどその日に、とあるリゾートマンションに宿泊していた人々を、嫌というほどの災難が襲います。火事・事故・殺人などなどなどなど。外は嵐。マンションは手抜き工事の欠陥
| IN MY BOOK by ゆうき | 2005/09/14 9:46 AM |
火天風神 [若竹七海]
火天風神若竹 七海新潮社 2000-04 「火は、消せる。あきらめるには早すぎる」「畜生、開け。どうして開かないんだ」「生きてるの、返事して、お願い」「誰か、助けて…誰か」。 最大瞬間風速88メートル、未曾有の大型台風が上陸したその夜、風が、炎が、そして人が、
| + ChiekoaLibrary + | 2005/09/14 11:28 AM |
「火天風神」 若竹七海
お薦め度:☆☆☆☆+α / 2006年8月28日読了
| 仙丈亭日乘 | 2006/09/23 9:54 AM |
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