本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「卵の緒」瀬尾まいこ
卵の緒
卵の緒
  • 発売元: マガジンハウス
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2002/11
  • 売上ランキング: 1,823
  • おすすめ度 4.67


坊ちゃん文学賞受賞のデビュー作です。いまさらですが読みました。
「卵の緒」「7's blood」収録。
なんか、瀬尾さんのよさが詰まってる中篇集ですね。どちらも、すごくいい。
前に、瀬尾さんは長編の方が良いのでは、と書いた覚えがありますが、
とっとと撤回します。
図書館返却期限はとうに過ぎてるというのに、いまだに手元に置いてます。
「卵の緒」ってなんだろ、って思ってたら「へその緒」のたまごバージョン。
自分が捨て子だと疑っている小学生、育生が主人公。
おじいちゃんもおばあちゃんもそれをきくと変な顔をするし、
お父さんはいないし、お母さんはちょっと変。
「へその緒を見せて」と育生がせがんだら、お母さんは卵の殻を持ってきて、
「育生は卵から生まれたんだよ」ってしゃあしゃあと。
「結局僕が捨て子だからでしょ?」
育生がそういうと「しょうがない、親子の証を見せてやろう」と
お母さんは育生をぎゅっと抱きしめるのだった。「ね。」

常識はずれのお母さんのキャラがすごくいい。こんな風に
自分の愛情に正直にいられたら、幸せやろうなあ、と思う。
会社の同僚で彼氏の朝ちゃんを堂々と家に連れてきて、普通に晩御飯を食べたり、
すごくのびのびと、正直にいる。育生もだからかどうか、とても素直な
いい子に育っている、いいなあこんな親子。

育生のクラスメイトの池内君はすごくよくできて人気者なのに、
ある日学校にこなくなる。気になって家に行って平然と家にいる池内君と
仲良くなる育生、ある日お母さんが甘い甘いにんじんブレッドを作ったとき、
育生は「池内君にこれ食べさせたい」と思う。
美味しいものを誰かに食べさせたい、食べてもらいたい。
それは素直なお母さんから受け継いだ、素直な気持ち。
捨て子だろうが、血のつながりがあろうがなかろうが、
そういうことをちゃんと教えていくのが、親子なのかもしれないなあ。

美味しいもの。瀬尾さんの小説にはよく出てきて、どれも庶民的で
すごく美味しそうで、そういうものを大事な誰かと食べる、
そういうささやかな、でも抜群に幸せな日常を描いたシーンがとても多い。
なんか、ほっとする。いいなあにんじんブレッド、食べたい。

「7's blood」は少し深刻。
父が愛人に産ませた弟が、ある日七子のところに住むようになった。
母親が傷害事件で刑務所に入ってしまったのだ。
弟の七生は、とても人に好かれる子なんだけど、どうすれば好かれるか、
子どものくせに計算づくでやっているような子ども。
それを最初七子は嫌っていたが・・・

瀬尾さんは人の負の感情を描くのも実にうまい。変な言い方だけど、
本当に実際に感じそうで感じたとたん反省しそうな「私って、やな感じ」っていう
感覚を見事にいつも表現していて、主人公のそのやな女っぷりに
自分を重ねていつもいたたまれなくなる。
でも、そんな人が負の感情を消していく過程を描くのも、うまい。
だからこそ、余計癒される気がする。
最初っからいい子がいいことしたって、説得力ないし。
もがいてあがいて、だんだん、愛を感じていく、・・そういうのが、いい。

今回の七子も、最初はささくれだっていて、七生を受け入れることができないでいる。
でも七子の母は七生を引き取ってすぐに入院してしまい、二人での生活は続く。

ここでも食べ物が登場。今度は腐ったケーキ。
七生が七子のために買った、腐ってしまったそのケーキが、
なんだかすごく美味しそうに見えてしまうのが、不思議だった。
愛情が欲しくて小ずるい子になるようにしか育ってこなかった七生、
そんな七生にささくれ立って素直に接することができない七子、
二人が少しずつ、心を近づけていくのがけなげで、なんかいとしかった。

そしてラスト、どうしてお母さんが七生をひきとったのかが明らかになる
そのくだり。じーんとなってしまって、ほんの少し涙。
こちらのお母さんの愛情もすごいね。娘や息子?のことを
深く想う気持ちが、彼女が語らないにも関わらず、伝わってきて、
胸が熱くなりました。

血のつながりとか、そういうことじゃない、家族ってこういうものかも、
って思えるあったかい絆がどっちの短編に流れていて、ステキだった。

今回の食べ物ベストはにんじんブレッドかなあ。
で、キャラでは、池内君。平然と学校を休んでる彼、カッコいいわ。
あと、七子のクラスメイトの島津くんもステキだった。
無口だけど落ち着いてて穏やかで、でも芯は一本しっかり通っている。
そういう青年が多いんだよねえ、瀬尾さん作品には。そこもツボですわ。
| comments(12) | trackbacks(16) | 01:48 | category: 作家別・さ行(瀬尾まいこ) |
コメント
TBありがとうございます。この2作、ほんといいですよね。
ざれこさんの書く文章はいいですねぇ。
作品を再度味わった気分です。
「7's blood」はドラマになったようです。
見逃してしまいましたが…
| 月乃春水 | 2005/09/05 5:52 AM |

この本って、瀬尾さんらしいやさしさとホンワカ感にあふれていて、いいですよね。
癒される〜!って気持ちになります。
| Roko | 2005/09/05 8:35 AM |

たいへんいまさらですが。気付くのに遅れました。

>月乃春水さん
ありがとうございます。(照)
ドラマ、見てないんですよね。残念。
いいドラマだったのかなあ・・

>Rokoさん
デビュー作だけに、持ち味発揮な感じがしましたねえ。とても温かくて、いい本でした。
| ざれこ | 2005/09/19 11:52 PM |

ざれこさんのブログみると毎回「うん。うん」ってうなっちゃう、私。
にんじんブレッドも美味しそうでしたが、ハンバーグも魅力的でした。
| なな | 2005/09/22 9:43 AM |

 こんばんは。
私も今更過ぎるやろ族です。
負の感情の描き方がうまいというの同感です。
だからこんなにすんなりと入ってくるんでしょうね。
| ☆すぅ☆ | 2005/10/30 4:53 AM |

 こんばんは。
私も今更過ぎるやろ族です。
負の感情の描き方がうまいというの同感です。
だからこんなにすんなりと入ってくるんでしょうね。
| ☆すぅ☆ | 2005/10/30 4:58 AM |

あ、寝ぼけてて2回もT.B.を・・・。
すみません、お手数ですが、ひとつ削除してください。<(_ _)>
| ☆すぅ☆ | 2005/10/30 11:28 AM |

「卵の緒」って何だろう?と思ってしまうタイトルですよね。
読むとその意味がよくわかりましたが ^^
「7's blood」ドラマになったのですか?
知りませんでした・・・
| tamayuraxx | 2005/10/31 9:50 PM |

こんにちは。

TBありがとうございました。

2つの作品に登場するお母さん、どちらも素敵でしたね。にんじんブレッド、これは美味しそう!

私はサブキャラを結構重要視するので、池内君・朝ちゃん・島津君が良いと思いました。いや、これでは殆ど登場人物全員か・・・。

| ひろ009 | 2006/02/02 12:37 PM |

ひろ009さん
サブキャラも皆いい感じでしたね。登場人物全員いい感じ、それでよいではないですか。(笑)
| ざれこ | 2006/02/02 9:51 PM |

こんなにすてきな話を、
自分の言葉で伝えようとするとうまくいかずにもがいていたのですが、
ざれこさんの記事を読んで「そう!そうなのよ!!」と
まるで自分が書いたかのような気分になってすっきりしました(笑)

島津くん、私もかなり好きです・・・
彼はきっと、黒髪短髪で眼鏡で細身だわ!
(と、余計な妄想を・・・)
| くろ | 2006/06/26 8:40 PM |

くろさん
島津くん、いい感じでしたよねえ。ああいうテンション低めの青年って好きです。メガネ男子ならなおよしですね。私も軽くメガネフェチです(笑)
| ざれこ | 2006/06/28 12:30 AM |

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