本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「僕たちの戦争」荻原浩
僕たちの戦争
僕たちの戦争
posted with 簡単リンクくん at 2005. 8.24
荻原 浩著双葉社 (2004.8)通常2??3日以内に発送します。


印象的な装丁で前から気にはなっていたが、評判が高いらしいので、
図書館で借りてみた。ちょうど夏だし、戦後60年だし、なんだかタイムリーだ。

2001年、9月11日のテロの日に、台風の中サーフィンに出かけた
フリーター(でもバイト先をクビになったばかり)の健太、波に流され、
たどり着いた先は1944年。冗談かと思ってたら戦争中で、
助けてくれたおばあさんの家で空襲に遭う。そして「石庭吾一」と間違われ、
軍に連れ戻されてしまう。

その吾一は、飛行機を飛ばす訓練で遭難し、気がついたら2001年にいた。
皆に「健太」と呼ばれ、退院してからも黒い化粧をして露出しまくった
異国人みたいな男女がうようよいる世界。ここは敵国か?

そんなそっくりな彼らがタイムスリップで入れ替わってしまった。
彼らがそこで生きて、そしてとった行動とは・・・・
たかが60年でここまで価値観が変わってしまった日本って、どうなんだろう。

特に吾一が60年後の日本にやってきてしまって、彼らを異国人としか
みなせない視線、とうてい同じ日本人に見えないさばけた衣装、くだけた日本語、
その価値観の明らかな違いを吾一の視点からみせつけられることで、
私の目線もなんだか変わってくる気がする。
今が悪いとは言わないけど、吾一の視線でみてみると、なんだか、
私たちは一生懸命に生きていない気がするのだよなあ。

例えば細○和子とかがテレビで、高校生に説教してたりするやん?
「あなたたち甘えたこと言って、私たちの世代は戦後から這い上がって
今の時代を作ってきたのよ。あんたたちみたいな贅沢してない」みたいなこと。
でもそれは、生きる時代が違うんだから、しょうがないやん。なんて私は思ってた。
そりゃ、戦後復興をした人達は大変だったと思う、だけど、
それを今の時代の人に言って、同じようにがんばれと言っても全然わかんない。
違うんだもん、基本が。価値観が。全然。

そんな私でも、吾一の視線から見てると、
「なんだか戦争をしてまで守った日本って、今のこれかあ」
とか思ってしまって、なんか、しっかりしないといけないかな、なんて
思ってしまったのだった。

うまいな、と思う。読ませ方が。説教口調じゃ誰も読まないし、心に響かない。
一個人の価値観を透かしてみた今の日本。だからゆがみが見えてくる。
その価値観の相違が生み出すユーモア、笑い、がまた絶妙で笑えるんだけど、
笑いながらも、そんなことも考えてみたりした。

戦時中に行ってしまった健太は、なんだかんだいいつつ要領よく、
その航空学校の厳しい規律になじんでいく。
「ああ、バイト先の店長とかマネージャとかあんな感じか」みたいなノリで。
でも、そこでは当然のように特攻隊に志願し、当然のように死を受け入れる、
そんな若者達がほとんどだ。価値観、教育が違うから。
皆恐ろしいくらいに画一的なんだけど、でも、本当は死にたくなんかない。
そんな友達たちが、一人、また一人、といなくなっていく。
戦争ってなんだ?健太は死にたくない死にたくないと思っている。
国のためになんか死ねない。
だけど、愛するミナミのためならがんばれる。そう思っている。

お国がどうとかそんなことどうでもよくって、昔戦争で死んでいってしまった人達は、
大切な家族や恋人を守ろうとして、死んでいったのかもしれない。
そういう小さな、でも自分にとっては全てである大事な人のためにしか、
人間は死んだり命をかけたりできないんじゃないか。
そういう単純なことなんじゃないか。
そんなことに気づいて、でもそれはなんだかすごく切ないような哀しいような、
でも、そうだよな、と共感できるような。

いまどきのダメダメ男だった健太が、戦争を目の当たりにしてだんだん、
大きくなっていく、その成長を清々しく読んだ。
二人の青春物語なんだけど、我々一般人と同じ目線で戦争を捉えたという点で、
戦争を考えるためにはとてもいい小説になってる気がする。
若い人がどんどん読んだらいいと思うな。ほんまに。って、この台詞ばばくさいな。

タイムパラドックスものにありがちな「誰誰のじいちゃんが実は」とかも
ちゃっかり出てきて、ほくそえんだりした。
でもそうやって、過去から未来へ、何かが受け継がれていくのだな。なんて。

まあ、ストーリーは長いし、正直、中だるみも感じた。
健太側は戦時中だし事件は次々起こるし健太の変化も面白いけど、
吾一側は、まあ現代だし、なんつうか「価値観の相違」を私たちに知らしめる、
そういう流れにしかなってなかったような気もしたり・・・
あとさあ、ミナミが、健太と吾一が入れ替わってるのに気づかないって、
それ、どうなんやろ。普通、絶対、別人だったら、わかるって。1年も過ごせば。
彼女やろ?とかつっこんでしまいたくなったりはしたんだけど。
まあそれを言っちゃあおしまいよ、的展開なので、これ以上は言わないことにする。

でもねえ、・・・ラストはちょっと衝撃でした。
このラスト、とても曖昧なのになんだか潔くって、とても印象に残った。
途中でラストに続くネタふりもあったので、想像して哀しくなる部分もあるんだけど。
哀しいけど、すごく余韻に残る、美しいラストでしたね。

あとすっごく細かいことだけど、章立ての最初に数字が振ってるんだけど、
戦時中は漢数字、現代はアラビア数字になってるのよねー。
気づいたときはちょっと嬉しかった。

| comments(10) | trackbacks(15) | 19:34 | category: 作家別・あ行(荻原浩) |
コメント
>戦時中は漢数字、現代はアラビア数字

きがつかなかった!そうだったんだ〜。
図書館本だったので、今、手元にないのですが、
さっそく本屋で確認してみます。
トラバ、ありがとう!
| ゆうき | 2005/08/24 11:16 PM |

>戦時中は漢数字、現代はアラビア数字

それわたしも気づきませんでした!
| ひねもじら 乃太朗 | 2005/08/25 12:00 AM |

乃太郎さんは人にTBしといて今頃気付くなんて・・・
きっとあたしの感想なんて読んでいないんだわだわだわああ。

良書です。視点も面白いです。
荻原浩ベストに投票していない私ですが、個人的には『なかよし小鳩組』。万人向けには本書イチオシですね。
読みたいけど読んでない本があるので未投票ですが・・・
『明日の記憶』は、ふ〜ん、まあいいんじゃないの私です。
| 聖月 | 2005/08/25 1:06 AM |

おはようございます。
「戦時中は漢数字、現代はアラビア数字」
これは気がつきませんでした(^^;
命をかけた戦争のあとの今の日本の状態・・。
誇れるような状態じゃないですよね。
| | 2005/08/25 7:43 AM |

私も気がつかなかったです!チェックせねばっ!

この装丁は最初きもちわる!って思うのですが、なんだか終わったあとは切なくて胸が締め付けられる装丁ですよねぇ。

荻原さんの本の中で今のところ私はナンバー1です。
明日の記憶は切なすぎそうで、読めない・・・(涙
| キリカ | 2005/08/25 1:18 PM |

こんにちは(´∀`)
コメント&TBどうもありがとうございました。

>戦時中は漢数字、現代はアラビア数字
私も気付きませんでしたYO ギャー

ちょっと納得いかない場面もありましたが、総合としては良かった本です。ただ健太が軽すぎるっ・・!(´∀`;)
戦争ドラマとして放映するなら健太は是非ナツイチ!や海猿で活躍中の佐藤隆太君をオススメしたいです。

| moji茶 | 2005/08/26 6:34 PM |

お、数字が違うのはあまり気づかれてなかったようですね。
読んでて気づいたのは聖月さんと私だけ?ふふふ、ちょっと自慢。

ドラマ化されたら面白いですね。夏を逃したら当分なさそうですが。
健太=佐藤隆太くん、いいっすねえ。やる気なさそうででも熱い、みたいな。
丸坊主似合いそうですし。でも一人二役で大変だなあ。

| ざれこ | 2005/08/30 11:58 AM |

お久しぶりです。
しつこいようですが、メロ友の流石奇屋ヒットです。ブログの住人さんが増えて、なかなか開きませんね。
で、TBさせていただます。
荻原氏。最近のハマリ作家さんです。
| 流石奇屋ヒット | 2005/11/08 1:19 AM |

先週、たまたま本屋で眼にして少しばかり立ち読み、思わず買ってしまいました。

2001年の19歳も1944年の19歳も本質は何も変わらない、ただ、置かれた環境がまるで違ったっていうことですね。

あたりまえのことだけど、今は21世紀なんだなあと考えました。「21世紀」って、かつて私にとって、それは未来の世界だったのですが。インターネットにしても携帯にしても、確かに今は小さいころ想像した未来の世界に近いかも。
| ベンジャミン | 2006/06/29 8:00 AM |

何回も読んだけど結局ラストが分からない。

どういうこと?
| トラ | 2007/03/10 10:48 PM |

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