本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ハードボイルド・エッグ」荻原浩
ハードボイルド・エッグ
荻原 浩著双葉社 (2002.10)通常2??3日以内に発送します。


いやあ、かなりつまらん。わはは。
つまらないんですけど私にはものすごくツボでした。大好きです、この本。

主役がさあ・・。ぷぷぷ。

レイモンド・チャンドラーが描くハードボイルド探偵
フィリップ・マーロウにあこがれ、探偵事務所を開く33歳の男。
しかし動物探し専門になって早3年。
のっけから13歳のアリサを見つけ出し、にゃあと鳴くアリサを抱いて
依頼人の家(マンションの一室)に行ったら、
そこに一人で待っていた女に家に招かれた。そこでの会話。

「ね、何か飲む?」
ネクタイを少し緩めながら私は言った。
「ウイスキーソーダを。氷は三つ。できればレモンを軽く絞って。なければ水で結構です」
水が来た。
(略)
ドアノブに手をかけた瞬間、別れの挨拶がわりの気のきいたジョークを思いついた。私は笑いをこらえながら振り返る。だが、言葉を発したのは彼女の方が早かった。
「ねえ、便利屋さん」
「探偵です」
顔の前でひとさし指を振りながら私は訂正する。よけいなことだけど、と言いながら野々村夫人は真顔で私を見た。
「あなた・・・・ちょっと喋り方がヘンよ」


水が来た。
顔の前でひとさし指を振りながら私は訂正する。

ここらの文面で私のにやにやはとまらなくなる。
人の家にあがってウイスキーソーダを頼み、ひとさし指を顔の前で振って!
訂正するこの男。なんや、こいつ、ただのあほやんか。わはは。
でも、かわいいやんか。ぷぷぷ。

話は変わるが、大阪ではだいたい、「かっこつけ」は嫌われる。
三枚目がうける。かっこつけ、は滑稽を通り越して痛い。寒い。
その、かっこつけると滑稽になる、でも痛いところまではいかない、
ぎりぎりのラインをするすると滑りながら私を笑わせるそのセンス。
なんつうか、絶妙なのです。最高なのです。
猫を探し終えた彼は、次の標的であるイグアナ探しのチラシの横に
「秘書募集」のチラシを貼ります。
すると、ナイスバディな秘書が電話してきて
「小柄で華奢なのですが、胸だけは大きいんです」と言ったとたんに
採用を決めてしまう。ただの女好きのハードボイルドなんです。
その秘書がまたいい。そんなことを電話で言う女ってどうよ、って
思いましたが、やっぱりなあ、わはは。なのです。
あーこればらしていいのかな、いや楽しみに置いておこう。
読んでください。最高の、秘書なのですよ。

ストーリーは、そんな動物専門探偵が、イグアナを探し犬をさがし、
しているうちに、犬探しから犬がやらかした殺人事件に遭遇、
動物を保護して育てている知り合いの夫婦(というよりその美しい奥さん)
のために、と一念発起して事件を解決にあたるわけです。
で、何をやるかというと犯「犬」探しなんだけど。

そこに土地買収のヤクザが絡み、事態は胡散臭くなっていく。
ヤクザ邸に忍び込んだり、ホームレスと一緒になって凶暴な犬を捕まえたり、
冒険が続出、何故かいつもブルックスブラザーズの高級スーツで
冒険に挑んで泥だらけにしたり破ったりする探偵なのですが、
なんとかたどり着いた真相は苦々しいもので・・・

まあ、推理小説とか思うとたいしたことない。
ヤクザの描き方もステレオタイプだし、たいしたことない。
筆力があって、エンタメをぐいぐい読ませる力があるから、
それで押し切った、くらいのことなんだけど。

もうひたすらにキャラの魅力に尽きますね。
探偵は「優しくなければ生きる資格がない」という有名な台詞を
からだで体現しようとしていて、ひねくれたことばっかり言ってても、
動物にも秘書にも優しい。それは、過去に自らがいじめられた経験、
父を惨めに失った経験、そんなものから来ている。
いじめのせいで閉所恐怖症にまでなった探偵、でもマーロウの言葉に
本当の男らしさを見て、いじめに打ち克つのです。
ただ、「あなた・・・・ちょっと喋り方がヘンよ」といわれる人間には
なっちゃったけど、それだけのことで、あほやけど深みがあって優しい。
一度底をみた人間は本当に優しくなれる。
そういうことを、ひねくれた台詞まわしや行動から読者に
肌で感じさせてくれて、それがこの小説のかなりの魅力になってると思う。

事件解決後、隠されていた秘書の私生活があらわになり、
ちょっとほろっとくるラストが待ってます。
哀しいけど、前を向いてまた、新しい相棒と共に猫を探したくなるような、
そんなラストでした。

動物好きにはちょっとたまらないと思うなあ。いっぱい出てくるから。
魅力的な登場犬(猫)物。イグアナも。
保健所のこととか、哀しいこともいっぱい書かれてて、切なかったが。

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| comments(9) | trackbacks(10) | 01:31 | category: 作家別・あ行(荻原浩) |
コメント
はじめまして。最近My Recommend Books!に参加させていただいた者です。
簡単なエントリながら、TBさせていただきました。
僕も大阪なんですが、本編の主人公の新喜劇を彷彿とさせるベタさが最高ですよね〜。

この作家は他のも笑わせてくれるんでしょうか。
ちょっと読んでみたいと思います。

| tujigiri | 2005/08/11 11:11 PM |

こんにちは〜。TBありがとうございます。
そういや新喜劇ですね。こういうキャラいそうですよね。
トレンチコートきてかっこつけてるけど笑える、みたいな。

この作家さんのは、ちょっとユーモアの質が違いますが
「オロロ畑でつかまえて」「なかよし小鳩組」なんかは
笑わせてもらいましたよー。気がむいたら読んでみてください。

| ざれこ | 2005/08/12 9:05 AM |

シリウスです。はじめまして。
TBさせていただきました。

コチラ東京なんですが,ベタなギャグは冷やかな目で見られる傾向が強い気がするんですけど…。どうなんですかね?

また遊びに来ますんで,よろしくお願いします。

| シリウス | 2005/08/12 10:28 PM |

シリウスさんはじめまして。
大阪もベタなギャグが即受けるというわけじゃないと思いますが
(オヤジギャグはものすごく嫌われますし)
なんつうか、くだらないギャグをずっとやられるとだんだん笑えてくるというか(天丼とか言うんでしたっけ)、
そういう罠にこの本では私ははまってしまった気がします。
きざな台詞もそこまでやるかー、みたいな。
そのくだらないギャグも途中から失速してしまうので、ただのいい話になってしまいちょっと残念だったかなー。
また遊びに来てくださいね。
| ざれこ | 2005/08/13 12:06 AM |

最初はどうかな?って感じだったんですけど、最後まで読んだらよかったです。チャンドラー、再読したくなりました(笑)。
| chiekoa | 2005/09/16 12:07 PM |

ちえこあさん
私チャンドラーまだ読んでないんですよね。気になってます。
あれはギャグじゃないんですよね?(笑)

私も最初は「痛いかも、この本」と思ってましたけど、いまや大好きです。
| ざれこ | 2005/09/16 1:23 PM |

いやぁ、本気ですよ!(笑)

「タフでなければ生きて行けない。
優しくなければ生きている資格がない。」

みたいな名言、もりだくさんでございます。
| chiekoa | 2005/09/16 4:16 PM |

どうもはじめましてー。

やせ我慢のカッコつけで、センチメンタルで弱っちくて、
男ってアホなんですなぁ、でも男でよかった……かな? などと
男の身としては思うわけですが、女性の目から見ると……やっぱりアホですよね。;-)

ハードボイルドかぶれネタというと火浦功なんかを思い出してしまうんですが、
可笑しゅうてやがて悲しい、まで行ってるあたり、一味違いました。
火浦功は「可笑しい」一辺倒で、それも嫌いじゃないです。
「ただのいい話になってしまいちょっと残念」と仰るならば、
もし未読なら、火浦功、お奨めです。
| K2 | 2007/09/27 11:31 PM |

知らない作家さんってどうかな、おもしろいかな、と探してたらここにあたりました。私がチャンドラーを読んだころはそのまんまかっこよかったですが、今は誰も意味がわからん状態なんだろう。
雫井脩介の「ビターブラッド」読んだばっかりで、警視庁捜査一課にこんなオヤジおらんやろ、と思いながらめちゃおかしかった。それとはちょっと系統違うけど、この本もおもしろそうですね。読んでみよっと。
| kazu | 2008/06/18 9:15 PM |

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