本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
<< February 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 >>
<< 「サウンドトラック」古川日出男 | main | 「ニシノユキヒコの恋と冒険」川上弘美 >>
# 「屍鬼」小野不由美
オンライン書店ビーケーワン:屍鬼 1 オンライン書店ビーケーワン:屍鬼 2 オンライン書店ビーケーワン:屍鬼 3 オンライン書店ビーケーワン:屍鬼 4 オンライン書店ビーケーワン:屍鬼 5

(ネタばれ注意)

夏です。ホラーです。ということで、「屍鬼」です。
だいぶ前に読んだ感想、アップしときます。
あまりにネタばれがひどいためだいぶはしょって要約したので
意味不明かもしれないけど。
_________

文庫で全5巻、かなり分厚いし最初は気後れしますが読み始めたらすぐです。
かなり本格的に怖いのでホラーが根本的にダメな人は読まないほうがいいですが。

外場村という、樅の木のある山に囲まれた村で、
村人が次々に謎の死を遂げるという、ある意味王道のホラー。
村、という閉鎖的空間が怖さを増す。
で、その死に立ち向かうのは僧侶と医者。
そこで宗教的観点と現実とが対比されていき、それも読み応えがある。
そして、突然引っ越してきた謎の家族、そこにいる不思議な娘。

この本は凄い。5冊、分厚いのにあっというまに読破、
ほんまにいろんなことを考えさせられた。
とにかく夏にぴったりです。怖さ、おもしろさ保証します。

少々ネタばれになるので、OKな人だけ次に進んでください。

屍鬼と呼ばれる吸血鬼が出てきますが、実は怖いのは人間達です。

村を襲う「屍鬼」、村人は彼らに血を吸われ、また屍鬼になり、同じ村人を襲う。
屍鬼は人を死に至らしめる、いわば天敵。それがいくら同じ村の知り合いとはいっても、
容赦なく始末しないと自分達が死ぬ。だから抹殺する方法を考える。手段は選ばない。
それは正論。でも正論が持つ「負」のパワーが私を震撼させた。
村人がそれで一念発起して、同じ村で生活していた村人達を、
屍鬼になったからという理由だけで 殺戮していく最終巻。
そこには「正義」という刃がみえ、それが正しくて切れ味がいいからこそ余計に、
その恐怖は本物だ。追い詰められた人間の垣間見せる本性。
屍鬼になってしまった人々も、「血を吸わなければ死ぬ」となったら、容赦なく自分達の
家族の血を、友達の血を、吸う。彼らはその時に、その人を恨んでいたことに気づくのだ。
彼らが気づいたとわかった時のその怖さ。

ほんまに怖いのは化け物ではなく人間。私たちは自分の心の闇を見据えなければならない。
自己防御のために私たちは何でもできるのだ。

しかしこの小説のすごいところは、「そうではない」人間もたくさんいることだ。
村人達がものすごくたくさん登場するが、恵や正雄、かおりのお父さん、篤のように
冷酷な屍鬼もたくさん出るなか、律子や徹のように自分を強く持って生きて死んだ人もいる。
夏野のように、徹に食われるとわかって諦めて死んでしまったものもいる。
そういう、自分を貫ける、本当に強い人たちも登場することが、かろうじて救いになっている。

僧侶の静信と、沙子の存在が大きかった。彼と沙子を見ていると気づくことがある。
それは人は皆「居場所」を求めているということ。
孤独に耐えかねて自分のいていい場所をつくりたいがために、村を乗っ取ろうとした沙子と、
自らを抹殺しようとしている静信、彼らが結局寄り添えたのは幸せだったのかもしれない。
静信はこれで自分を殺そうとはしないだろう。
沙子という、本当に自分を必要としてくれる人がそばにいるから。
最後の静信の姿は、なんだか感動的だった。

それはこの小説の根底にもある。屍鬼になってしまった人たちも、
現実世界では居場所が なかったモノたちが、獲物をとって認められようとする。
ただ自分がいていい場所が欲しいだけで、そうする。

ほんまに怖いのは人間の弱さ。私だって弱い。居場所が欲しい。切実に欲しいのだ。

まあ多分、もっと複雑で深いことが書かれている本なんだが、私が思ったのはそういうこと。
とにかく、怖かった。としか表現のしようがない。

__________

余談

例によって彼氏に読ませたら
「タイトルどおり、そのまんまやん。なんのひねりもないわ。つまらん」
・・・大量殺人鬼が出てくるのかと思ってたらしい。
化け物が犯人で、つまらないらしい・・・
もう本なんか貸すもんかー
| comments(4) | trackbacks(2) | 11:16 | category: 作家別・あ行(小野不由美) |
コメント
こんばんわ。
書評をアップしましたのでTBさせて頂きます。寒い日が続きますが風邪など召しませぬよう。
| 京香 | 2006/02/06 2:42 AM |

京香さん
TBありがとうございました。この本の初TB嬉しいです。
寒い日が続いたのでちょっと前に風邪を召しましたが(笑)今は平気です。
職場ではインフルエンザが猛威を振るっており、「かかった奴は完治するまで絶対出勤しないこと」とおふれが出ております。はやってますねえ。お互い気をつけましょう。
| ざれこ | 2006/02/07 11:34 PM |

今晩は。
はじめまして。
いやあ〜、長かったですねえ、5冊は。
僕は、最後の、静信の取った生き方に、ちょっと納得行かない気分ではあります。
僕には、静信の性格からして、沙子と共に滅んだ方が納得が行きます。二人永劫に生き永らえるために、次々に襲撃を続けて行くなんて‥。でも、1、2回の襲撃なら犠牲者は死なないし、記憶もコントロール出来るのかもだし‥。何とかなるのかな。静信も割り切るんだろうか。
それよりも、人間世界は、神の支配する秩序があって、その秩序からはみ出た異端は、排斥されてしまわれるのだ、といっているみたいで、ちょっと寂しい気持ちになりました。
まあ、本を読んで感じるもの思うものは人それぞれでしょうからね。
突っ込みたくなるトコもけっこうありますが、これはある種、寓話みたいなものでしょうからね。面白かったです。世間の常識に縛られる住民達にイライラしながら、5巻でのやっとの反撃は爽快でしたが、人間の集団心理の怖さも身に沁みました。やっぱり、僕は敏夫を応援しましたね。最後には虚無が残ったけど。静信の考えや行動は、はっきりしなくて、肯定や賛同、共感はしかねる思いでした。サバイバル、優しさ、ヒューマニズム、いろいろと考えさせられる作品でした。
ざれこさんのブログに、長々、読書感想文を済みませんでした。
| Ken | 2006/06/12 2:20 AM |

宮部みゆきさんの「模倣犯」をググッていたらこちらのBlogにたどり着き何気なく小野不由美さんらんに来て、そういえば「東景異文」も読んだな…、とか考えながらまた何気なくここのコメント読んで「へえ〜、こういうコメント書き込むヤツ居るんだ。けっこうちゃんとした文章で感想書いてやがるな…」とか思って何気なく名前リンククリックしたら、これ、俺じゃないですか!いやあビックリしました。こんなことあるんですね。新鮮な驚きに思わずまた書き込みました。申し訳ありません。相当な読書量に感服するとともに敬意を表したいです。勝手にお邪魔して済みませんでした。こんな読んでる人居るんだなあ。けっこう居るものなんでしょうねえ。
| Ken | 2011/07/31 5:03 AM |

コメントする









この記事のトラックバックURL
http://blog.zare.boo.jp/trackback/267105
トラックバック
屍鬼
エーン、コワイよー。 ジワジワとつまさきから這い上がってくる恐怖。 スティーヴィーキングの【呪われた町】へのオマージュとされる作品。 「吸血鬼」というホラー界では使い古された題材を鬼才小野不由美が「閉鎖された村社会」を軸に圧倒的な筆力で新しい
| 徒然ナル暮ラシ向キ。 | 2006/02/06 2:43 AM |
小野不由美『屍鬼』
 吸血鬼ものとしては、アン・ライスの『ヴァンパイヤ、レスタト』シリーズ(『夜明けのヴァンパイヤ』他)、ナンシー・A・コリンズの『ミッドナイト・ブルー』シリーズ、国内では菊池秀行『吸血鬼ハンターD』シリーズと秀作に事欠かないが、この『屍鬼』もストー
| 日々のことわり | 2007/01/26 10:47 PM |
NOW READING
ざれこの今読んでる本
Selected Entry
Categories
Comments
Trackback
Mobile
qrcode
Profile
Search this site
Sponsored Links