本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「噂」荻原浩
噂
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 660
  • 発売日: 2006/02
  • 売上ランキング: 3568


「オロロ畑でつかまえて」「なかよし小鳩組」に続く、荻原浩。
あまり前知識なく図書館で借りたが、どうやらミステリだった。
渋谷の女子高生の間で、ある噂が飛び交い始める。
「レインマンに出会うと、足を切られちゃうんだって・・」
そして、その通りに事件が起こり、足首を切られた女子高生が発見される。
所轄の刑事木暮は、女子高生の娘菜摘との生活のため本庁から異動した刑事。
彼が本庁の若い女性刑事を組んで、事件を担当する。
そして、渋谷の女子高生が発する噂のもとをつきとめていくが・・・

今まで読んだユニバーサル広告社ものと比べると絶妙なユーモアが消えていて、
やっぱり殺人事件だから自粛したのかなあ、と変な感想を持った。
でも、ついこらえきれず言っちゃった、みたいなユーモアが点在、
軽妙でテンポよく読める文体は健在。安心感、みたいなものすら感じます。

でも荻原さん、コピーライター出身の持ち味はここでもいかんなく発揮ですね。
口コミによる宣伝の戦略がやり手広告代理店の女社長により実行されるんだが、
うまいといえばうまいのよねー。女子高生に話をすりこんで、噂させるだけ。
「レインマンが出てきても、ミリエルの香水つけてれば狙われないんだって」
いかにも眉唾ものだけど、でもその香水とりあえず買っておこうかな、みたいな。
そんな口コミ心理を見事利用した戦略、まんまと乗せられる女子高生達、
噂の出所を判明させるだけで右往左往してしまう刑事たち。
噂の伝播力とかその効果とか出所わからない怖さとか、広告代理店の女社長の
人を噂伝達マシーンくらいにしか思ってないその人間性とか、そういうところを
すごく面白く読んだ。女社長はもっと掘り下げて欲しかったなあ。

ミステリ部分については、(って、何故か切り離して考えてしまうんだけど)
これを読む直前に横山秀夫のD県警シリーズを読んでいたというハンデ?もあり、
警察組織の描き方とかはちょっと物足りない。
でも本庁と所轄刑事の「チーム」がうまく機能してて好感が持てたし、
若い女性刑事が旦那を過労死させられた警察で告発防止のために出世させられ、
切ないながらも真摯に事件に対応する姿、さわやかだったな。
小暮刑事が、妻を亡くしてから娘を大切に、でも刑事への執着も捨てきれず
悩む様も人間くさかったし、そういう彼らがチームを組むことで、
温かい家族ドラマとしても読み応えがあった気がする。

あと事情聴取に答える女子高生達が派手な格好してるけど案外いい奴たちで、
小暮とのジェネレーションギャップが埋まっていくのが心地よかった。
(時々若者言葉を間違って使って娘に「きもさぶ」がられてるけど)

家の隣に昔住んでいたヤンキー高校生(男)を思い出したなあ。
紫の刺繍入りジャンパー着てたばこは吸うし留年ぎりぎりだったけど、
すごくいい子やったなあ。
彼女をとっかえひっかえ変えるんやけど、変わるたんびに嬉しそうに
「俺あの子と結婚すんねん」と言い、貯金まではじめたこともあった。
かわいい奴だ。高校生は見た目じゃないのよなあ。

関係ない話はおいておいて。

ミステリとして物足りない部分はありました。犯人像の描き方がなんかなあ、
感情的に納得できない部分でした。ネタわれるんで言えないのがもどかしいけど、
サイコサスペンスはけっこう好きな私としては、
この犯人像ではちょっと物足りない。踏み込みが足りないというか・・・・。

と思いながら読んでいて、予定調和的に円満に終わったなあ、よかったよかった。
と思っていたのですが、ラスト1行にやられました。あーやられた。

この予想外のラストを書きたいがために紙面を割いた部分は多々ありましたが、
別になくったっていいんじゃないのかなー。
でも、これがないと普通の円満ドラマなんだよなー。
どっちがいいかと言われるとどんでん返し好きな私は「ある」方を取るのですが、
なんか荻原さんのキャラとは合ってない気が、少しします。先入観かな?
若竹七海「クールキャンデー」風。若竹さんには非常に似合うのだが。
このブラックさが。

しかし、「明日の記憶」ともまた全然違う作風で、
いろんな引き出しを持った作家であることは間違いないみたい。
ぐいぐい読ませる筆力は本物です。いろいろ書きましたが、素直に面白かった。
| comments(11) | trackbacks(17) | 16:07 | category: 作家別・あ行(荻原浩) |
コメント
ほんと、最後のさいご、あの一行ですよねぇ。
途中で犯人があまりにもわかりやすくなっているのも、
そこで油断させるためだったのではないかと
深読みしております…。
| chiekoa | 2005/08/01 4:23 PM |

ほんとにねぇ。ラスト一行、というかたったひと言。
あんなにギョッとさせられて、ドスンと沈まされたのに
それがあんなひと言なんだもの
そのギャップにも唸らされました。
| ふらっと | 2005/08/01 5:48 PM |

中盤の二人のやりとりを、
父と娘の、不器用だけど心温まる交流だなあ・・・
と、ほほえましく思っていたので、
ラスト一行は、もう、ショックでした(笑。
やられたな〜。
| ゆうき | 2005/08/01 6:54 PM |

中盤の二人のやりとりを、
父と娘の、不器用だけど心温まる交流だなあ・・・
と、ほほえましく思っていたので、
ラスト一行は、もう、ショックでした(笑。
やられたな〜。
| ゆうき | 2005/08/01 6:54 PM |

ですよねー。ラスト1行、うわーでしたよ。大変でしたよね(笑)
家族ドラマを描くのがうまい人だけに、ラスト1行が際立った気もします。

| ざれこ | 2005/08/02 4:48 PM |

ざれこさん、はじめまして。
とても面白かったんですけど、最後の仕掛けはなくってもいいんじゃないのと思ってしまいました。
ほのぼのムードの他の作品が好きなので、よけいに毒がキツク感じました。
TBさせていただきました。
| やまを | 2005/09/15 12:50 AM |

こんにちは。
遅ればせながら「噂」を読みました。
最近またふつふつと荻原さんブームが自分の中できてて、新作まで一気に読みたいなぁって思ってます。

この本は最後の最後で驚かされました。結末ありきで書き始めたんでしょうね。読了後はしばらく呆然としてしまいました。
| | 2006/06/20 12:03 PM |

あおちゃんさん(かなあ?違ったらごめんなさい)
この本は荻原さんらしくないなあと少し思いましたが、やっぱりうまいですよね。面白かったです。
最後一行読んだらページ戻っちゃいますよね。えー?みたいな。たった一言で全て反転させるとはすごい技ですよね。
私もまた荻原さんブームにのろうかなあ。まだ2冊くらい積んでるので・・
| ざれこ | 2006/06/21 12:37 AM |

俺は最後の一段落全てに驚いた
残ってた伏線もそこで繋がったし
でもそいつの物語の途中からの言動を見て
「怪しい」「なんか関わってる」
て思ってたのに最後の方あっさりしてたから、
「あれ?考え過ぎたか?」
って思ったら
おま…やっぱやらかしてたか…
てか小暮と名島含む警察の連中に余り魅力を感じなかった
なんかよくあるタイプというか…
それに二人は殆ど謎めいてないし馴れ合いでミステリーの雰囲気が…
あと本筋に関わらない名前多すぎてわけわかんなくなった
それよりも加藤・西崎・サキ・菜摘辺りをもっと掘り下げて欲しかったな
| | 2007/03/28 2:59 AM |

初めまして、イリスと申します。
『噂』を読み終わって、他の方の感想めぐりをしていて見つけました。

『噂』、ぐいぐいと引き込まれていく本ですよね。
私は先が知りたくて夜更かししてしまったぐらいです。

結末も衝撃的でした。
前に「明日の記憶」を読んでいただけに、
色々なタイプの本が書けるものだと感心するばかりです。

いきなりですみませんが、私のブログの感想で紹介・
トラックバックさせていただきました。
ざれこさんはものすごく本を読まれているので
新しい作家さん探しの参考になります^^
もしかしたらまたトラックバック、コメントをさせて
もらうかも知れません。

ではでは。
| イリス | 2007/04/25 8:46 PM |

イリスさん
「明日の記憶」とこれはシリアス系でしたが、「オロロ畑でつかまえて」とか「ハードボイルド・エッグ」とかはユーモアたっぷりで笑えますよ。いろんな作風をお持ちだなあとほんま驚きます。しかもどれもうまいんですよね。

トラックバックもリンクもどれも歓迎です。ありがとうございます。またお待ちしていますね。
| ざれこ | 2007/04/27 3:56 PM |

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