本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ささらさや」加納朋子
ささらさや
ささらさや
posted with 簡単リンクくん at 2005. 7.26
加納 朋子幻冬舎 (2004.4)通常24時間以内に発送します。


例によってMy Best Books!に参加するため、
加納朋子さんの本で家に溜め込んでいる本を読んでいた。
あと数冊読む予定なんだけど、これを読んだとたん、私は迷わず
「加納さんベスト本はこれや」と決めた。いい。むっちゃいい。
加納さんの本は、温かくて優しいミステリで連作短編、
それが持ち味でもちろんそれでいいんだけども、
時折「凝りすぎやな」って思うことがあった。2重3重にもなった構造、
それが面白いと思うこともあるけど、
複雑な構造に溺れてしまってるんじゃ?って感じるときもあった。
もちろんそれは理解力に乏しい私のあほな感想なんだが、
でも、複雑な構造にしなくっても、その優しい語り口とか、
ぴんと美しくはった空気とか、綺麗ごとだけじゃないのに優しくなれるラストとか、
なんつうかなあ、別にシンプルなストーリーでもそういうのって十分に
味わえるんじゃないのかなあ。みたいなことを感じてたのだ。と思う。
ブラックのコーヒーで十分美味しいのに、クリームとか入れちゃって、みたいな。
どっちも美味しいんだけど、・・・みたいな。下手なたとえだが。

これを読んで気付いたことなんですけどね、上のことって全部。

そう、このストーリーはシンプル。連作短編でミステリ、の持ち味を
十二分に生かしつつ、なおかつシンプルなのです。
私にはそのシンプルさが、すごく心地よかったのです。

新婚で子どもが生まれたばかりの若夫婦。夫はある日いきなり
車に轢かれて死んでしまいます。まだ首も据わらない赤ん坊のユウ坊と
遺されたサヤ、もともと両親もおらず孤独な上に、さらに旦那の姉が
子ができないからとユウ坊をよこせと言ってきます。
サヤは伯母さんが住んでいてサヤに遺してくれた、佐々良の町の家に越して、
静かに暮らし始めます。でも彼女は知っていたのです、夫が、
ずっと自分を見守っていて、困ったときには誰かの姿を借りて自分の元に
現れてくれることを・・・

サヤが何気なくやり過ごそうとした日常に、ふっと夫は誰かの姿で現れ、
「馬鹿っサヤ、なにやってるんだ、騙されてるじゃないか」とか、
心配で声をかけてきます。そこで私達も、そのサヤの小さな日常の出来事に
ほんのちょっとした悪意とほんのちょっとした謎を見つけて、
違う世界が開けて唖然としたり。でもサヤは、それを認めつつも
「でもあの人たち、いい人だったわよ」と当然のように言ってのける。

だからか、サヤの周りにはいつしか、変なおばあちゃん達が集うようになります。
他人様のことが気になって仕方がない珠ちゃん、小説ばかり読んでインテリぶってるけど
孫のことが気になってる久代さん、嫁と一緒に旅館を切り盛りする肝っ玉母さんのお夏さん。
さらに無口な子ども大也(ダイヤ)を連れたヤンキー母、エリカまで。
彼女達がサヤの家で喋りまくる互いの悪口三昧には笑っちゃいます。
でも本当に仲がいい、おばあちゃん達。いざとなったらみんな助けてくれる。

サヤの視線で見ると、世の中はいい人だらけです。サヤは騙されたりしても、
すぐに物事をポジティブに考えてしまいます。
一見単に気が弱いだけに見えるけど、本当に弱い人には、そんな考え方って
できないんじゃないかな。なんて思ってしまいました。
私には無理だなあ。その前向きさ、そしてそれが人をひきつけるゆえんなのかな、と。
サヤの周りにはサヤの味方ばかり。

でも義姉は諦めてなくて、時折卑劣な攻撃をしかけてきたり。
サヤのピンチにはいつも、郵便配達員やら駅長やら子どもやらになって
夫が現れてくれるわけだけど、どんどん、サヤの現実の味方たちが
サヤを守ってくれて、そしてサヤ自身も、いつのまにか強くなっていて。
だから必然的に訪れるのは夫との別れ・・・

最終章はほろりときました。やっぱり、別れなければいけないのだな、と。
でも、亡くしてしまった人を単に忘れるんじゃなくて、その人を頼りにして
どうしようもない自分を少し乗り越えて、サヤは強くなって、
でも夫を忘れるわけではなくって、それでも一緒に生きていくことには、変わりない。
哀しいけど、いい別れになった、と思いました。

哀しい話じゃないですか。普通。でも夫の語り口とか、
その三婆の語り口とか、とても明るいしテンポもいいし、
全体的なトーンが明るいんです。でも不謹慎でも無理して明るくしてるんでもない、
自然に明るくて。だからかなあ、時折、夫が真面目なことをつぶやくと、
とても哀しくなって切なくなって。一喜一憂。
笑いは切なさと紙一重。人は悲しくてもつらくても笑えるけど、
それって切ないことですね。なんてことも、ちょっと思いました。

シンプルに夫婦の愛が響いてくる、しみじみとした本。これはいいです。
| comments(5) | trackbacks(13) | 23:21 | category: 作家別・か行(加納朋子) |
コメント
私はまだこの一作しか読んでないのですよ。
投票権がない…。
『てるてるあした』も読んでみたいんですけどね。
予約が…。

なんだかんだいって、こういう「すべてを許せる」人が、
ほんとは一番強いんだろうなぁと思いました。
| chiekoa | 2005/07/31 8:55 PM |

私も「てるてるあした」読みたくなりました。姉妹編ですよね。
サヤとマスターの今後が出てくるみたい?ですし。
でもこちらも図書館では見かけないので予約しないと、です。

| ざれこ | 2005/08/01 1:16 PM |

こんにちは。TBありがとうございました(^-^)
「てるてるあした」が姉妹編だなんて知りませんでした。
わたしもさっそく予約しようと思います。

今は「ななつのこ」を読んでいるところです。
| mamimix | 2005/08/03 11:02 AM |

mamimixさん
こんにちは。「ななつのこ」もすごい良かったですよー。
あれも続編「魔法飛行」もあって楽しめますよね。
まだ読めてないですけど、楽しみです。
「てるてるあした」も早く読みたいです。忙しいなあ。
| ざれこ | 2005/08/03 4:33 PM |

え?サヤとマスターはやはり何かあるんですね。
今日、図書館で「てるてるあした」借りてきたのです。ドラマが始まる前に、読みたい(「白夜行」でこりてますので)のですが、まだ先に返さなければいけない本が沢山です。あぁ。
| なな | 2006/04/04 9:03 PM |

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