本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「陰の季節」横山秀夫
陰の季節
陰の季節
posted with 簡単リンクくん at 2005. 7.25
横山 秀夫 / 横山 秀夫著文芸春秋 (2001.10)通常24時間以内に発送します。


先日、松本清張や森村誠一をこよなく愛する彼氏が、
「最近おもしろい本読んでない、なんか貸して」と言うので、
まだ自分が読んでもないこの本を貸してみた。同時に貸した宮部みゆき「火車」や
貫井徳郎「慟哭」をあっさり「つまらん」とはねのけた、やけに好みの難しいこの男が、
この本は普通に「面白かった」と返してきた。「地味やけどな。」・・・一言多いが。
ということで私もかなりの期待を持って読んでみたわけである。

いやあ、面白かった。地味やけど。
全く新しい警察小説、と帯には書かれていて、何がどう新しいのか、と
読み進めると確かに新しい。ただの人事部門の話なのだ。
今までは「所轄VS本庁」みたいなパターンで、殺人事件が起こったら
所轄に捜査本部が出来て警視庁の偉い人がどかどかやってきて偉そうにして、
地元をよく知る所轄刑事との対立が深まる・・といった「踊る大捜査線」パターン?が
一番多かったと思うけど、これは違う。
だってD県警の人事の話だもん。殺人事件とか起こらないしさ。地味よ〜

まあこんな具合。
第一話「陰の季節」では、産業廃棄物を扱う協会に天下りしていた尾坂部、
3年の任期はわかっていたはずなのに、後任を決めてしまった直前になって
「下りない」と言ってきた。何故だ?刑事畑に長くいて数々の手柄を立て、
いかにも刑事といったこの男がどうしてそんな地位にこだわるのか?
何とか下りさせろと厳命を受けた人事の二渡、彼の周辺を探るが、そこに現れ出たのは
過去の事件、そして思いも寄らない結末。

2話目は、まじめな刑事の醜聞が監理課の新堂の元に舞い込んでくる。
ぎりぎりに有終の美を飾れるか、というそのまじめな刑事、本当にやったのか、
やってないなら密告者は誰か?彼は部下の柳に密命を下すが、その柳も信用できず・・

二渡という人事のエキスパートで出世頭の警視、彼を軸に、こういう4つの短編が並ぶ。
4つとも全く手抜きがない。中身が濃くて息をつかせぬ展開、どんでん返し。
地味だけど濃いのだ。別にコロシがないと面白くない、わけじゃないのよね。

とっかかりは地味な人事問題。でもそこから見えてくる彼らの人生の悲哀。
たかが人事、たかが出世、されど出世。男社会を渦巻くそういう、なんつうか
私なんかから見たら別にいいやん、そこまで、自分をゆがめてまで、えらくならなくても。
って思っちゃうことだけど。特に第2話とか4話とか・・・。でも彼らは必死。
だってそれまでの人生を、人事のちょっとした思惑であっさり否定されてしまう。
実はそうでなくても、本人はそう思ってしまう。
それが平気でできるのが人事制度の怖さであり。組織の恐ろしさであり。
切ないよなあ。まあでも、一般企業でも同じだよな。警察特有の問題じゃない、
だからこそ皆に読まれるのじゃないかと。

そういう人々の思惑が複雑に交錯するこれらの短編は、短いながらも
幾人もの人の人生が浮かび上がってきて、決してきれい事ではすまない、けれど
それでも自分の野心や忠誠心で一生懸命やってきた、そんな彼らの人生が垣間見えて、
なんだか切なかった。

でもやっぱり一番印象に残ったのは第三話「黒い線」でしょうか。
婦警の話。婦警を長年やってきて、D県警の婦警のトップにいる七尾、
お手柄を挙げた似顔絵婦警の平野がその翌日失踪した。彼女を追ううち、
お手柄事件の真相が浮かび上がる・・。
私は女だから、女ががんばってるのにはやっぱりエールを送りたくなります。
やっぱり女がどこに出て行ってもなめられるのは一般人の私でも身にしみてる。
男所帯の警察で女が一人前になるのがどれだけ大変か、それが七尾や平野の
たった1日の出来事で浮き彫りになる。それは苦い結末ではあったけれど、
だからこそ私も共感できる。やっぱり、あまりうまくはいかないけど、
やっていくしかないのよね。女は女なりにさ。

と、平野巡査の今後が気になった私は続けて「顔」も読みました。
感想はまた後日。
| comments(4) | trackbacks(9) | 15:22 | category: 作家別・や行(横山秀夫) |
コメント
この本は始めて読んだ横山本だったので、
すごい思い入れがあります。地味だけど。
警察小説と言えば捜査畑の人が脚光を浴びる話が多い中、
この本は異色でした。結構衝撃受けたなぁ。
で、最新作以外読破しました。最新作は読書中。
| あおちゃん | 2005/07/25 8:09 PM |

こんばんは。
『陰の季節』は地味ですけど面白いですよね。
個人と組織を題材にしたサラリーマン小説みたいで。
しかも、警察だから組織の論理というのが半端じゃなくて。
ところで、この本に『顔』の主人公が出てくるとは知りませんでした。
どちらも読んだのに同じ人物だと認識していなかったとは……。
そうそう、横山秀夫は『動機』も面白かったです。地味ですけど。
| | 2005/07/25 9:06 PM |

私のせいでしょうか、皆さん「地味だけど」を連発しておられますね・・・

あおちゃんさん
これ面白くて、立て続けに「顔」も読みました。
「半落ち」を読んだころはそこまで横山氏にはまるつもりは
なかったんですけど、
これはがんがんいくべきかなと思いつつあります。
面白いし。地味だけど(しつこいぞ)
次「動機」読みますけど、お薦めはやっぱり「クライマーズ・ハイ」ですか?
図書館ではオヤジ様方が読み漁っているのか1冊も在庫ないので、
立て続けに読むにはちと厳しいんですけど・・

Tさん
そう、「黒い線」に出ていた平野瑞穂、が「顔」の主人公で、
話も「黒い線」と続いています。
まあ、私は続けて読んだんでそりゃわかりますけど、
間をおいて読んだらそんなもんかもしれません。
| ざれこ | 2005/07/25 10:17 PM |

面白いと思って「地味だけど」を使ってみました。。。

「動機」もおもしろいですよ。
やっぱりオススメは「クライマーズ・ハイ」ですね。
それと「臨場」。あと「第三の時効」かなぁ。
横山さんの書く短編って切れがあって読み応えアリです。

「クライマーズ・ハイ」が借りられないようだったら、
他の2作はいかがでしょう?
| あおちゃん | 2005/07/26 1:43 AM |

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