本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「アイムソーリー、ママ」桐野夏生
アイムソーリー、ママ
桐野 夏生 / 桐野 夏生著集英社 (2004.11)通常24時間以内に発送します。


前、同じ作家の「グロテスク」を読んで熱を出した経験があるため、
この本を読む前には体調管理に気をつけた。冗談抜きだ。
で、仕事も落ち着いてるときに読んだ。これも冗談抜きだ。
結果的には「グロテスク」ほど体調は崩さなかったが、
まあ用心に越したことはない。次「柔らかい頬」を読むときにも、
同様に気をつけようと思っている。

(以後、ほんのちょっとネタばれ、多分大丈夫と思いますが
未読の方気をつけてください)
桐野氏の小説はけっして嫌いではない。むしろ読みたい。
だけど気分が悪くなる。多分、男性が読んだら少し違うだろう。
女が読むと気分が悪い。「グロテスク」はそうだった。
女である自分が気持ち悪い、そこまで感じさせる凄まじい小説だった。

今回も気分が悪いことには変わりない。
娼館で生まれ育ち、父も母も知らない、戸籍もない少女、アイ子は、
娼館のお母さんが死んだときに家をなくし、星の子学園という施設に入る。
そこで大人になって、その後は人を騙して殺して盗んで、
誰も信じられない、自分の過去をひたすら消しゴムで消していく、
そんな人生を突っ走る。
唯一の彼女のよりどころ、それは母が履いていたというぼろぼろの靴。
彼女は靴に話しかけながら生きる。

勤めていた焼肉屋にやってきた星の子学園の教師を焼き殺し、
彼女は逃亡の旅に出るが、その先に見えるものはなんなのか・・・

悪い奴しか出てこない。それはもう、見事なくらい、笑っちゃうくらい。
悪いって言うか、なんつうかなあ、極悪人は出てこないんだけど、
皆が自らのエゴをむき出しにして、自分のためにしか生きてないっていうか、
嫉妬やら不平不満やら、マイナスの感情のカタマリ。

最初に殺された教師だって20歳以上年下の星の子学園の生徒と結婚し、
彼と偽装親子みたいな夫婦みたいな気持ち悪い関係で満足し、
自己満足で人に善意を売りつける、そんな女だし、
娼館にいた女たちも子どものアイ子は徹底的にいじめたくせに
そのあと出てきてもけろりとして人のプライバシー踏みにじったり。
年老いて女装が趣味になったじじいも、昔金のためにアイ子を養女として
ひきとったけど全く愛情かけてないし、回りの人たちも一緒。
アイ子が住み込んだ先のホテルチェーンの女社長(これって某ホテルのぱくり?)も
夫の浮気癖がたたってあちこちで子ども作られて愛憎燃えたぎってるし、
みんな、アイ子のこと悪く言える?みたいな。犯罪犯してないだけやん。

そんなろくでもない登場人物たちは、また皆一様に醜いのだ。
趣味の悪い服をこれみよがしに着こなす太った女、そんな醜い描写が次々なされて、
そのいやなイメージに私はうんざりした。どいつもこいつも。
見た目って人間の内面がそこまで出てしまうのか?

そんな、誰も彼も信用できない世界で、アイ子は孤独に生き抜く。
でもアイ子は孤独がどんなもんかすら知らないのだ。
誰からも愛されたことがない、誰とも家族になったことがない、
誰かを信頼して一緒にいたことがない、孤独以外のことを知らないアイ子が、
自分が孤独だということに気付くわけがないのだ。

そんなホンモノの、どん底の孤独を垣間見た。ぞっとした。

そうやって突っ走ってきたアイ子が、ふと思いついて、
昔の娼館を訪ねる、あたりから状況は少し変わってくる。
アイ子は、消しゴムで消しまくって何も残ってない人生に、
少し何かを書こうとした。たとえば、母のこととか、自分のルーツとか。
あまり思考回路を持たないアイ子だが、そのことを考えると嬉しくなった。
でも、たどりついた真実は、アイ子の母は、・・・
あーやりきれないんですけど。なんでそういう、最低な展開。うー。

ラスト近くでアイ子は夢を見る。もう取り戻せない、もうどうにもできないんだけど、
「真人間になりたい」とアイ子は叫ぶ。そして皆に笑われる。
今まで殺してきた人たちに。

孤独すら知らなかった女が自分の孤独を知った。
最後に逃げる彼女には、希望の道があったのだろうか、それとも絶望か。
ラスト、ぷちっと切れる感じの終わり方に、私は希望とも絶望ともとれる、
なんともいえない後味の悪さを感じたのだった。
そこに何か道が、開けていればいいんだけど。

「グロテスク」ほどは体調を崩さなかったけど、十分残る本でした。
あんな孤独、知りたくなかった。
| comments(6) | trackbacks(13) | 02:06 | category: 作家別・か行(桐野夏生) |
コメント
「グロテスク」で熱出されたんですか!?確かにあれは、すごい本でしたが・・・ずいぶん繊細な方なんですね。っていうか、集中力がすごくて、本に入り込んじゃうんでしょうねー。大変ですね・・・でも、ある意味うらやましいです。そんな本の読み方ができるなんて。

この本は、グロテスクほどじゃないけど、やっぱり読後感、悪かったですねー。アイ子さんに感情移入できないまま読んでいた私も、最終章ではさすがに、ずーんとかわいそうになってしまいました。しばらく忘れられないような本ですね。トラバありがとうございました。
| ゆうき | 2005/07/19 12:49 PM |

いやあ、単に風邪の最中に読んだだけで、本との因果関係は不明です。(笑)でもつい本のせいにしてしまいたくなるような本だったので、そのせいだってことにしちゃってます。
繊細だなんてとんでもない!(でも言われて嬉しい(笑))ですが、確かに「グロテスク」にはくたくたになってしまいました。
今回はそこまでは参りませんでしたが・・あれで上下巻されたり2段組されてたらくたばってたかも、です。私も最終章でどかんときました。

| ざれこ | 2005/07/19 1:19 PM |

桐野さんの作品って、読んだあとに体力が消耗される感じがあります。
心も疲れちゃうし。
私は柔らかな頬とこれの2冊しか読んでないけど
しばらくお預けかな〜って感じ。
めちゃくちゃ元気で、体力があり余ってるときじゃないと
他の作品は読めそうにないかも。

ざれこさんみたいに熱出しちゃ困るし。(^_^;)
| みわ | 2005/07/24 10:51 PM |

ざれこさんこんにちは!
TBさせていただきました。

確かに女性と男性の読後感は、
少々異なるかもしれませんね。

桐野氏の作品はこれが初だったのですが、
表層的にはエンターテイメント的な文章で、
その奥でとても深い命題について触れている、
そこがとても興味深いと思いました。

現在は『残虐記』に挑戦中です。
体調管理に気をつけるようにします。

それではまた。
ごきげんよう。
| T.Sato | 2007/12/21 6:03 AM |

T.Satoさん
トラバありがとうございました。
そうですね、深いテーマをはらんでいるのにちゃんと読ませる、そしてえぐりだす、すごい威力のある作家さんだと思います。
くれぐれも体調の良いときに読んでください(笑)
| ざれこ | 2007/12/22 11:25 PM |

自分は、欲望のままに生きて生きて刹那的で理想の生き方のように思えてしょうがない、自分は犯罪になってもいいが、人殺しだけは避けたいと常々おもっていてその境界線でこの話しのヨウナグロイ生き方をしたい。永遠のゼロよりいい話しだよね!
| donjonson | 2015/09/16 4:40 PM |

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