本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「なかよし小鳩組」荻原浩
なかよし小鳩組
荻原 浩集英社 (2003.3)通常24時間以内に発送します。


「オロロ畑でつかまえて」に続く、ユニバーサル広告社シリーズ?第2弾。
広告会社ですから、のっけから結婚式場のコピーが踊る。
「結婚しよう。・・・鶴亀会館で。」・・・つうかおしゃれなコピーを
求める前に、会社名変えてくれよ、とコピーライターの杉山はため息。
その鶴亀会館の社長が捕まり、ユニバーサル唯一の仕事が消えた!
倒産寸前に追い込まれた会社に、ある建設会社がCI(企業イメージ総合戦略)を
依頼してくる。浮き足立つ社員。しかしその会社とは「小鳩組」、
あからさまに任侠。怖い人たちがずらっと並ぶ。ヤクザの宣伝?CM?
彼ら社員と、怖いが情の濃いヤクザたちとの仕事が始まり、
さらにバツイチの杉山の家には小学生の娘、早苗も舞い込んできた。
父は娘にいいところをみせられるのか?
いやあ、相変わらずすばらしいユーモア感覚が全編ちりばめられてる。
「オロロ・・」のころはデビュー作だからか遠慮がちだった気がするけど
ここではもうこれでもか、といわんばかり。
ささやかな形容詞でも皮肉がしっかり込められ、とにかく笑えるのに、
下世話じゃないのね。駄洒落とかもないし。かなりいいセンスしている。

ヤクザたちがまた、いいのよねえ。怖いんだけどさ、そりゃ当然。
いまどきあるのかこんなヤクザ、ってくらい怖いんだけど、
怖い奴らがあんなことを、ってことがネタになるから怖くていいんだけど、
妙に愛嬌があって。怖いはずの場面ですら愛嬌がある。
組長を傷つけた猫を、組長の目配せひとつで子分が「はい」と出ていって
銃で撃っちゃったり、そりゃ猫は災難だけどなんか滑稽だし。
広告社に入り浸って見張りみたいなことをさせられてる
下っ端の河田、ビデオカメラ貸せや、と凄んではみるけど、
実は息子の運動会を撮るためだったりする。彼らも人の父で、子煩悩で、
っていう場面が出てきたりすることで、ステレオタイプに怖いだけじゃない
ヤクザの哀愁のようなものも感じたり。ハゲのサラリーマンのヅラを奪って
こっそりかぶってたりさ。かわいい・・・
実は組長がCMが、と言い出したのも孫が「うちのCMってないの」って
言ったから、だったりするし。(孫は黒幕呼ばわりされてるし)

暴力団対策法のせいで使えなくなった代紋にこだわったりと、
彼らは義理人情を重んじる渋い人たちなのだ。
まあ、実際のヤクザが本当にそうなのか、と言われたらわからないし(友達いないし・・)
そんなに素直なもんか?って思うこともそりゃあった。
でもそんなことはいい。
怖いけど義理人情で笑えてほろっときたりして、それでいいのよ。

そんなヤクザたちと接して仕事していくうちに、杉山も一旦アル中に戻りかけ、
そして復活する。彼らとの人間としてのつきあいをやってるうちに、
娘が一旦去って自堕落だった杉山も、少し顔を上げる。
そして、昔を思い出してマラソンをしたりして・・
それが話に大きく関係してくるんだけど、そんなこんなででも杉山は、
最後少しだけ戻ってきた娘に対して、いい父であろうとする。
そんな風に前向きに走り出す杉山の姿が、また、いい。

そして少ないとはいえない人物達も、人物像がつかみやすいし、
いきいき動いてるのがいい。悪人いないし。
冷徹な参謀鷺沢も、なんだか滑稽な人に思えてくるのが不思議です。
ユーモアや策ばかりに溺れず人間の個人のドラマもしっかり裏付けられてる、
だから読ませるんだし魅力があるんだと思う。

ヤクザのCI作戦は意外な方向には向かうけれど、最後にはなんか、
すべてが収まるところに収まっていくような気分になり、
そこが予定調和というか、荻原浩のうまいところで、
この「すべて丸く収まる」感じ、は私はあまり好きじゃないはずが、
この話では気にならなかった。

この荻原さんの「うまさ」が技術的なものに走りすぎたらしらけるんだろうな、とは
思うんだけど、絶妙なユーモアセンスがそれをぎりぎり保ってる気もするし。
全部丸く収まって、地の文も普通にかかれてたら、それはそれでつらいかもしれんが、
今回はユーモア炸裂で大笑いできて、丸く収まって、これでいい。
きっちり2時間私を笑わせてくれて、いい気分で現実に戻してくれて、
読書って楽しいよねやっぱり、と思わせる1冊でした。

| comments(3) | trackbacks(13) | 01:15 | category: 作家別・あ行(荻原浩) |
コメント
はじめまして。
とってもまとまりのあるいい小説でしたね。
なんか文句つけようかと思ったのですが、やっぱりいい本でした。
TBさせてください。
| かつき | 2005/08/02 2:20 PM |

かつきさん はじめまして。

>なんか文句つけようかと思ったのですが、やっぱりいい本でした。

なんかこの気持ちすごいわかります(笑)
文句つけようと思ったら「まとまりすぎ」って言葉しか
でてこなかったです。
で、「別にまとまってたっていいやん」と自分につっこんだ、という(笑)
面白かったですよね。
| ざれこ | 2005/08/02 4:53 PM |

微妙にヤクザのお勉強にもなったりしました…(笑)。
| chiekoa | 2005/08/30 5:49 PM |

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