本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「オテルモル」栗田有起
オテルモル
発売元: 集英社価格: ¥ 1,575発売日: 2005/03
posted with Socialtunes at 2005/10/15


この方、今回(133回)の芥川賞でも候補になってました。3回目くらいですか。
候補の常連ってなんかはまりこんじゃいますよね・・
ということで「マルコの夢」が候補になったころに図書館で手にとってみました。
結局今回も受賞はならなかったけど、そんなことどうでもよくて
この本はよかった。なんかよかった。
就職活動をする本田希里、とあるホテルの面接を受けるが、
その「オテル・ド・モル・ドルモン・ビアン」は、都会のビルの壁と壁の間をつたって
地下にもぐったところにある。地下13階まであるホテル。
「お客様に心地よい眠りを与えること」をモットーに経営している。
そして、「誘眠顔」の希里は難なく採用され、深夜のフロントとして研修がはじまる・・

希里の生い立ちが悲惨なのだ。薬物中毒の双子の妹沙衣がいて、
今は沙衣が17歳で産んだ娘美亜、そして沙衣の夫と暮らしている。
両親は沙衣のいる病院につきっきり。さらに夫は昔希里とつきあっていたのに、
あるとき沙衣との間に子どもをつくってしまうのだ。
そんな環境で希里は美亜を7歳になるまでしっかり育てているのだった。

いやーありえないでしょ、普通キレて出て行くくらいのことはするでしょ、と
性格の悪い私は思ってしまうんだけど、
悲惨すぎる境遇なのにどろどろした感じは全くない、不思議な感覚。
一種の諦めと哀しみと寂しさが空気みたいにそこにあって、
そこに普通に当然のように皆たたずんでいる。そんな感覚。
なんだかわからないが心地いい。

オテルでは良質の眠りを追及する。悪夢は悪魔。
そこではフロントの希里が眠気覚ましに元気な音楽をかけたら、
オテルで眠っている人たち全員の眠りに影響したりしてしまう。
全員がひとつとなって、よい眠りを作っているのだ。
まるでオテルが眠っているかのように。
すごくいいところだ。私も眠りたい。いや、さんざん寝ているが、
ストレスが一気に消え去るくらいのよい眠りが訪れてるかといえば、
そんなことない。こんなホテルで眠れたらどんなにいいか。うらやましい。

そこで希里も一晩眠りにつく。そこで、沙衣との昔の思い出を夢に見る。
つらいはずの現在、でも沙衣との思い出は優しく温かく、
沙衣への愛情が希里の中に深くあることに私は気付いて、なんかほろっときた。
希里は長い間のつらいことを浄化するように眠る。
そして客としてやっていた沙衣も。眠る、眠る。お客様に影響を与えるくらい、眠る。
彼女たちがその最高の眠りで楽になれるのなら、私もなんか、楽になる。

不思議な物語でした。現代における寓話というか。
哀しくも温かく、暗いのにろうそくがともって耳がきこえづらくて、
ぼんやりとした空気がたゆたうオテルのフロントみたいな、
そんな雰囲気の文章でした。

接客やってる人だったら勉強にもなるんじゃないかなあ。
このオテルの徹底したサービス精神はすごいですよ。
お客様への愛情をすごく感じます。こんなホテルなら泊まりたい。
| comments(11) | trackbacks(16) | 12:49 | category: 作家別・か行(栗田有起) |
コメント
私はこの本で栗田さんにはまりました!!
ちなみに、こういう「安眠追求ホテル」って今実際ふえてるみたいですよ。人気あるんですって。もしやこれを読んだだれかが…!
| chiekoa | 2005/07/17 2:33 PM |

この本は、ほんとに、なんか良かったですよね。
わたしも泊まりたい!
表紙の絵が好きでした。
| ゆうき | 2005/07/17 6:10 PM |

ちえこあさん
ほんまにあるんですかこんなホテル。泊まりたいー
まさか地下13階建てとかじゃあないんでしょうけど。
で、日の出で追い出されるのは大変ですけど。

ゆうきさん
表紙の絵綺麗でしたよねー。図書館で借りてなければ
もっと楽しめたのに・・・残念。

| ざれこ | 2005/07/18 10:36 AM |

こちらにも失礼します^^
本当に寓話というか、底の方にあたたかいものがずっと流れてて「なんかよかった」と私も思いました。
オテルの雰囲気にも押付けがましいところがなくて居心地よかったですしね。
| banri | 2005/07/21 11:50 PM |

ざれこさん、こんばんは。
オテル、とっても魅力的ですよね。
私も不思議な感覚を味わいました。
栗田さんの作品には、
これからはまってしまいそうです。
トラックバックさせてくださいまし。
| ましろ | 2005/07/29 10:38 PM |

「IN MY BOOK」にトラバありがとうございました。
重複してしまうので、こちらからはトラバしませんが、
これからもよろしくお願いします。
| ゆうき | 2005/08/01 6:37 PM |

ざれこさん、こんばんわ
悲惨な状況を書いてもドロドロしてないし、
静かであたたかな寂しさに満ちているようで、
読んでいて不思議な気持ちになりました。
こんなホテルがあったら泊まりたいです!
でも寝つきがいいから、会員資格はなさそうです・・。
| june | 2005/10/14 11:28 PM |

juneさん
TBありがとうございました。
私も寝つきいいので無理みたいです。
日曜日に夕方まで寝てたりすると、その日の夜眠れなくて
月曜日は寝不足ですが、それは違う話だし(笑。ダメすぎ)
| ざれこ | 2005/10/17 11:31 PM |

ざれこさん、こんにちは ^^
この本は心地よい不思議さがあって好印象の本でした。
わたしもこんなホテルで眠りたいです。
いえ、わたしもさんざん寝てはいるのですが、質が・・・
睡眠の質は大事ですよね・・・
| tamayuraxx | 2006/02/10 10:19 PM |

tamayuraxxさん
この本読むと、いい睡眠を欲しますよねー。わかります。
私もむっちゃよく寝るんですけど、なんか疲れたまんまで・・。こんなホテルに泊まりたいなあ。

| ざれこ | 2006/02/10 11:50 PM |

こんにちは初めまして。
私は文庫になってから読むのでかなり昔の記事ですがTBさせていただきました。
がつん!と面白い!ていう感じではないのですが、淡々としてるけどほのあたたかいような、いい雰囲気の本ですね。
| homamiya | 2009/02/04 9:57 AM |

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