本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「永遠の出口」森絵都
永遠の出口
永遠の出口
  • 発売元: 集英社
  • 価格: ¥ 580
  • 発売日: 2006/02/17
  • 売上ランキング: 4660
  • おすすめ度 4.5


児童文学作家の森絵都さんの初のオトナむけ小説みたいです。
昨年の本屋大賞では確か4位だったかな?と記憶してます。
うむ、やはり本屋大賞は外れがないですねえ。いやあ、よかった。

多分私の世代よりもうちょっと上の世代の女性が、少女のころ、
小学校の頃、中学、高校、そんなころを回想している小説。
各章ごとにだんだん主人公紀子は成長していきます。
小学校の頃は同じグループだった女の子の誕生日会の話、
高学年になるとすごいヒステリックな先生にあたってしまい、クラスが団結し、
中学校に上がる前に私立の中学にあがってしまう友達と一緒に旅行し、
中学校ではテニス部や友達になじめず、不良の先輩の家に入り浸り、
万引きで捕まって、高校受験前には家族旅行をする羽目になり、
高校に入るとはじめてのアルバイト、そして始めての彼氏、そして将来のこと・・

もうなんつうかですね、身に覚えのあることばかりです。不良になったことはないけど・・・
私らくらいの世代の女性は皆、「あ、こういう時代あったな」と自分の過去を思い出して、
ちょっと赤面したり恥ずかしくなったりしてしまうんじゃないんかなあ。
姫野カオルコ「ツ、イ、ラ、ク」では主に「女」が成長していく過程での恥ずかしさというか
そんなものを強く感じましたが、この本はまたちょっと違いますねえ・・
本当に、子どもが大人になっていく、というか。
切ないのです。昔小さくてもせいいっぱい生きていた時代が、もう戻らないことがわかって、
私は切ないくらいでした。

珍しく引用しますと

それから長い年月が流れて、私たちがもっと大きくなり、分刻みにころころと変わる自分たちの機嫌にふりまわされることもなくなった頃、別れとはこんなにさびしいだけじゃなく、もっと抑制のきいた、加工された虚しさや切なさにすりかわっていた。どんなにつらい別れでもいつかは乗りきれるとわかっている虚しさ。決して忘れないと約束した相手もいつかは忘れると知っている切なさ。多くの別離を経るごとに、人はその瞬間よりもむしろ遠い未来を見据えて別れを痛むようになる。
けれど、このときはまだちがった。十二歳の私はこの一瞬、自分の立っている今だけに集中し、何の混じりけもないさびしさだけに砕けて散りそうだった。


これを読んでなんかぎゅっと締め付けられる感じがしました。そうなんだよなあ。
今はもう、誰かとの別れは日常であって、世界の終わりではない。

私も小学校の頃は、友達が一人転校するだけで、本当にこの世の終わりみたいな
気持ちになったり、当時はしていたんですよね。
文通をずっとしたりして。でもだんだん手紙が届かなくなって、自分も書かなくなって。
哀しいけどそれも仕方がない、新しいところになじんだんだし、と今ならあっさり諦めがつく。
そうやって私の元から、消えていってしまう人たちはたくさんいて、
それは諦めなければならないことだと、今はわかってるから。
そのときの友達や、そのときの周りの人たちは、
まさにその時を一緒に過ごすことになるだけで、未来永劫ずっと、
そのままでいられるはずがなくて、人は常に流れていて、私も常に流れている。

わかっているはずのそんなことを、すごく切なく思い出させてくれる、本でした。

小学校のときにいじわるされたSさんとか、えこひいきをして最低だったS先生とか、
中学の時に仲のよかった友達たちとか、たくさんの人を思い出した。
いい人悪い人どっちも。私にかかわった人たちは、皆元気かなあ。
そういうたくさんの人と出会って別れて、今の自分がいる。
改めてそんなことに気づかされました。
そうやって、自分の人生をわずかながら肯定したくなるような、本でした。

紀子の周りにも、ステキな人が集まって、小さな出来事でも、
紀子はその本質にちゃんと気づくことができるステキな子で、
でも愚にもつかない初恋で突っ走ったりとかして、痛々しいんだけど、
それでもそうやってずっと、あれやこれや失敗したりしながら、これからも、やっていく。
等身大な紀子に共感を覚えつつ、私もあれやこれや失敗しつつ、やっていくんだな。

するすると素直に入っていく文体、
(引用して気づきましたがあえてひらがなを多用して優しい効果を出している気がします)
もみじや星なんかも映像的にするすると頭に入ってきて、
すごくなじみやすかったです。
で、特に両親のエピソードとかにくすっと笑えるところもセンスよく入っていて、
なんの抵抗もなくすーっと染み入る感覚がありました。いい本に出会えてよかった。

_________
余談

S先生の話していいですか。ひどいんですよ、小学校の5、6年の時の担任。
えこひいきするってんで最低の先生、もちろん私はひいきされない側ですが、
バスケの授業をしていて、「おい、シュートしてみろ」とみんなの前で
私にシュートをさせたわけです。極度の運動音痴の私はもちろん失敗、
すると彼は皆に冷たく一言、「これ、悪い見本」
・・・・ひどくないです?けっこう、トラウマなんですけど、これ。
| comments(3) | trackbacks(15) | 01:09 | category: 作家別・ま行(森絵都) |
コメント
わたしもこれスキです!
ともだちに「ノリコ」って子がいるので、その子のことを想像しながら読んだら、本人に嫌がられました(笑)。
| chiekoa | 2005/07/07 12:13 PM |

ちえこあさん
「紀子」って名前に世代を感じましたね(笑)
私も職場の先輩にいるのでついその人を思い浮かべてしまいました。
本人には内緒です。
| ざれこ | 2005/07/08 3:16 AM |

ひらがなが多かったの気がつきませんでした。
もみじのシーン印象的ですよね。
映像見えました!
私、この設定の年齢ぴったりあてはまってるのです。
もう、まるで自分のことのようでした。
(不良にはなりませんでしたが…)
| なな | 2005/07/08 7:19 PM |

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