本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ガラスの麒麟」加納朋子
ガラスの麒麟
ガラスの麒麟
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 620
  • 発売日: 2000/06
  • 売上ランキング: 192587
  • おすすめ度 4.0


加納朋子さんにはまった数年前、何冊か買いだめしたうちの1冊。
何年間我が家にあるんだろう、この本。ごめん、今頃読んで。と
表紙の麒麟に謝りつつ、ページをめくる。

通り魔に殺された女子高生、安藤麻衣子。
美しく聡明で皆の憧れだった彼女はどうして殺されたのか・・?
彼女の友達の直子、その父のイラストレーター、養護教諭の神野先生、
担任の小幡先生、・・・麻衣子周辺の彼らがつづる、6つの物語。
安藤麻衣子は生前童話を書いていて、それを新人賞に応募していた。
それを見つけたのが直子の父、野間の腐れ縁の大宮。
娘の直子は麻衣子が死んだその日に「私が殺されてしまった」と
叫び、通り魔犯人の特徴をあげつらう。麻衣子がとりついたのか?
戸惑う父に、麻衣子の葬儀で声をかけてきた神野先生が、真相を推理し始める・・

表題作「ガラスの麒麟」のストーリーをざっと書くのも↑みたいにしどろもどろになる、
くらい、複雑な構造を持つ作品集だ。
短編のひとつひとつにすら、たとえば第一話には麻衣子の描いた童話が挿入されて
現実の比喩となっているように、全体としても複数の人たちの想いが
複雑に絡み合って、なんともいえない余韻をかもしだす。

私はそれでも引き込まれるのが少々遅れたが、(私には少々複雑すぎたのか?・・・。)
三番目の「ダックスフントの憂鬱」あたりからぐいと引き込まれる感触があった。
飼い猫の足が切られた、と幼馴染から電話が入りかけつけた大宮高志。
誰がこんなことを?そして、その真相は?一見安藤麻衣子の事件とは
かかわりのないサイドストーリーに見えたこの事件は、
とりあえず最終的解決を見ないで放置されるが、最後まで読むと
暗い光を不気味に浮かび上がらせる効果を持つ。

そして全編で、神野先生の推理が冴える。
彼女には推理してやろうという意気込みが感じられず、ただ人の心の
機微を自然に読んでしまうだけ、そんな風に思える。
彼女の暗い過去、それを背負ってしまってもろい彼女の感受性が
そうさせるをえないのか。「鏡の国のペンギン」で、安藤麻衣子の幽霊騒ぎから
彼女がつむぎだした真相は驚く内容だったが、自然と納得できるものだった。

まあでもこうやって短編ごとになにか言っても意味はないんだろう。
一編ずつミステリとして十分に手ごたえがありながらも、
全体を遠くから見ると、女子高生の残酷で美しく、そして非常にもろい
感性を、麻衣子やその友達たち、そしてそれを映す神野先生の存在から
浮かび上がらせているような感覚を受けた。
彼女達は笑って日々を送っていながら強固に自分を守る殻を作り、
その中で生きている。そして誰よりも孤独を感じている。

そのあまりの脆さに、私は共感どころじゃなかった。ガラスみたいな、なんて
表現は陳腐すぎるけど、そんな感じ。壊れそうで壊れそうで。
特に麻衣子の死に至る真相があらわになるにつれ、
麻衣子の悲しいほどの孤独がひんやりと浮かび上がってきて、
でも麻衣子が優しく、心も美しい人であったこと、も温かく浮かび上がり、
さらに神野先生の過去の哀しみまでがこちらに押し寄せ、
いかんともしがたい読後感を味わった。後味がいいとはいえないんだが、
この美しい後味の悪さはなんだ?みたいな。
嫌な気分じゃない。ただなんだか哀しかったのです。でもすがすがしいのです。

短編ひとつひとつを抽出してもどれもひけをとらず、
さらに複雑に絡み合った糸がキレイなものを形作っている、
構成の妙は見事というよりないです。読んでよかった。

「ガラスの麒麟」「おしまいのネメゲドザウルス」、絵本があったら読みたい。
ガラスの国にどんな色をつけたのかがなんだか気になりました。

| comments(0) | trackbacks(2) | 00:12 | category: 作家別・か行(加納朋子) |
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| のほ本♪ | 2005/07/07 8:54 AM |
(書評)ガラスの麒麟
著者:加納朋子 ガラスの麒麟 (講談社文庫)価格:¥ 620(税込)発売日:20
| たこの感想文 | 2007/10/29 10:12 PM |
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