本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「クロスファイア」宮部みゆき
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火を起こせる超能力を持った女の、哀しいお話。
先に「鳩笛草」という文庫本に収録されている「燔祭」という短編を読んでから、読んでください。
私も昔既に読んでたが、今回もう一度読み直しました。その方が話がスムーズにわかります。
なんつうか、宮部作品で薄ら寒い思いをしたことはないんだが、この作品ではぞっとした。
だって主人公の青木淳子、人殺しまくり。
それも、自分の妹を殺された復讐とか、例えばそういう動機ならまだいいんだけど、
赤の他人が悪い奴らにやられたら、おもむろに首を突っ込んでその仕返しをしちゃうわけで、
いわば現代版「必殺仕事人」。しかし赤の他人のためにそこまで人を殺しちゃって、
最初のほうは罪悪感もあるんやらないんやらで、それがなんかすごい私は怖くって、
ぞっとしながら読んでいた。

彼女は自分の生きる価値を見出すために、火を出せる能力を使いたい。
彼女の能力は害にしかならない。となると、彼女は何で生きてるのかわからない。
だからせめて、人の役に立てるように、世の中のごみみたいな悪人を殺すことに、
無理矢理生き甲斐を見出している。
でもそれは彼女のエゴに過ぎない、と私には思えた。
正義って何だ?ってこの小説ではずっと問い掛けているわけだけど、
私は彼女を「正義」とは最初から思えず、だからずっと薄ら寒いイメージが付きまとったわけだ。

生きる価値ってなんだろう?生き甲斐ってなんだろう?
なんてことを考えて読んだ。答えは見えないけど、やたら悲しくなった。
そんなことでしか生き甲斐を見出せない彼女が、哀しい。

特殊な能力をもった彼女は寂しかった。ずっと孤独だった。
だから人の役に立ちたいとずっと思っていたし、あっけなく恋にも落ちる。
同じ能力を持った少女に出会ったら、家族のようにいとおしく思う。
やっぱり最後は人とのつながりなんだな。なんて。

暗い話だったけど、最後にちょっとだけ救いが見えたような気がしたのは、
やはり宮部作品だからだろう。
| comments(3) | trackbacks(1) | 18:16 | category: 作家別・ま行(宮部みゆき) |
コメント
初めまして、ざれこさん。青森県在住のサイアミーズと申します(smashing pumpukinsのアルバムからの命名です)。筒井康隆作の『家族八景』という小説は読まれましたか?本作と同様、超能力少女が主人公なのですが(こちらは読心力を持った女の子です)、『クロスファイア』と通じるところがある作品です。超能力を持って生まれてしまったが故の苦悩、悲劇。どちらも読んだ後に、「凡人でよかった」と思わせられます。宮部作品も筒井作品も、超能力者が主人公になる作品が多いんですよね。
| サイアミーズ | 2007/08/19 5:03 PM |

サイアミーズさん
はじめまして。青森は涼しいですか?こちらは暑くて参りますわ。

「家族八景」読みました。筒井作品では七瀬シリーズが一番好きで、何度か読んでます。面白いですよねー。
そうですね、凡人でよかったとしみじみ思える作品群ですね、これもそうですけれど。
| ざれこ | 2007/08/20 12:55 AM |

されこさん、お返事ありがとうございます。青森はようやく冷房なしでも眠れるくらいには涼しくなりました。筒井作品では『愛のひだりがわ』も良かったですよ。ジュブナイルですが、大人が読んでも十分に楽しめます。ただ筒井作品のヒロインって、類型的というか、ほとんどが美人で頭脳明晰で一人でも生きているような強い女性って設定なんですよね(『パプリカ』もそうでした)。そういう点では『クロスファイア』の青木淳子も共通してますよね。
| サイアミーズ | 2007/08/21 12:05 AM |

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| 読書と時折の旅 (風と雲の郷本館) | 2007/09/02 6:47 PM |
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