本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「照柿」高村薫
照柿
照柿
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 2,100
  • 発売日: 1994/07
  • 売上ランキング: 107641
  • おすすめ度 4.5


文庫発売記念でちょっとあげときます。私は単行本で読みました。
文庫版は全面改稿されているようですね。さすがです。
しかし読み比べる体力はない。この作品は、ちとしんどい。

読み比べた友達によると、
「大筋は全然変わってないんだけど、合田が単行本に比べて、一途になった気がする。
ほら、単行本やと「お前誰が好きやねん、誰でもいいんかい」って
感じやったでしょ、それがちょっとましになったというか」
「一途って、誰に・・・まさか・・・」
「わかってるくせに。レディ・ジョーカーではっきりする、あのお人よ」
「それはますます気になるなあ。文庫版「レディ・ジョーカー」が。
クリスマスイブのその後はあるのか?」
「でも次出るのまた10年後くらい?」
「むむ・・・その頃まで合田への情熱が続くだろうか、私」

つうかそんな視点でしか読んでないのかよ私たち。はは。

さて、以下は単行本読んだころのレベル低い感想。
例によってまた過去記事をアップしてますが
この感想はちょっとひどすぎますわ。
「ねえねえ、これ、すごかったんだよー」っていう興奮だけ伝わる、子供のような感想です。
高村薫の本は私を骨抜きにしてしまうのだな・・・

あ。ネタはばらしてませんので。

「マークスの山」で登場した、合田雄一郎刑事の第2弾。
「マークスの山」と同様の感想。読み終わってしばし呆然。

合田雄一郎は、電車に飛び込んだ女を目撃する。
女ともみあって突き落とした男は逃げ、そして青いスカートの女もいた。
女を見つけ話しかけ、そして合田は女が忘れられなくなる・・・

一方、熱処理工場に勤める野田達夫は、ある日出勤前に
昔関係のあった女が青いスカートをはいて急ぐのに出会う。
そうして3人はつながっていく。
合田は嫉妬に苦しみつつ別の事件を追い、達夫は熱処理工場での
炉の不調に悩みながら、そして青いスカートの女美保子は
亭主が警察に連行され家に戻れず達夫のもとへ・・

なんつうか、これ読んだだけだとドラマティックな展開に思えるかもしれないけど、
すんごい長いんです、全部、別の事件の詳細も凄まじく細かいし、
達夫の熱処理工場の様子なんか、これでもか、っていうくらい詳細。
二人の男が数日間どう生活してきたか、全くもらさず書かれている。
そしてそこに出てくる二人の過去、現在の苦悩、もう執拗なくらい詳細な描写。
なんでこんな長いんだ。私は本を読むのには慣れているが、
この本は最後まで読めるかどうか不安だった。ほんまに。

でもラストまで読むと呆然。これでもかこれでもかと続く具体的描写、
そして具体的描写しかないのにもかかわらず、彼らの30数年の生き様が
見事にあらわとなる、灼熱の夏の数日間。
すさまじい。としかいいようがない。
ほんまになんて感想を書いていいやらてんでわからないんだけども、
とにかく呆然と感動する。なんでだろう。
達夫の過去、奔放だった父の死、そして父の愛人の自殺、惚けた母、
芸術家だった父の血か、彫刻を彫る達夫の姿。
そして、たった一言の言葉が、達夫の人生を決定付ける。
それを言った本人にも言われた本人にもまったく自覚のないまま・・・

そういう彼の人生の軌跡が、最後にすべて私に押し寄せてきて、
そこからくる哀しみに目が離せず、そして熱くなる。
あーなんつうかうまく伝えられないのがもどかしいのだが、とにかく凄まじかった。
読むのがつらかったくせに、ラスト4分の1は夢中で読みました。
何かが押し寄せてきて、本を読む手を止められなかった。

確かに、合田は女に一目ぼれしてとんでもない行動に出るし、
女は女で謎がありすぎて、男二人が具体的過ぎるわりには女の存在は夢のようで、
ありえない不自然さも漂っているが、でもね、そういう一目ぼれも、
そして一目ぼれして凄まじい嫉妬で何かやっちゃうようなことも、
なんだかわかるような気が、最後にはしてきます。なんだろ。
どんなに冷静な人の中にも、ごうごうと燃える火があるような、そんな感じ。
私にもあるんだろうか。そういう風に、なりふりかまわない合田を見てると、
切なくもあり、こちらまで熱くもなり。

舞台は東京と大阪。大阪の町が私には馴染み深く、
それにしても濃い空間ばかりが舞台となっていて、リアルに想像できるだけに
凄まじさは増した。匂い、とかがリアルに再現できちゃってさ・・・
| comments(3) | trackbacks(5) | 12:04 | category: 作家別・た行(高村薫) |
コメント
ざれこさん、すっごくよく分かります(笑)
ということで、こちらからもTBさせていただきます。
| そら | 2005/10/07 2:03 PM |

>しかし読み比べる体力はない。この作品は、ちとしんどい。
だよね〜、普通。
文庫本を数ページ読んで、どこが変わったか分かんなかった私。
酔狂にも単行本から読み直してます(^^;)
暑っ苦しいです。ハイ(汗)

| そら | 2006/08/31 7:51 PM |

そらさん
おお、単行本からですか。熱くて大変ですよー。無理をなさらずに・・・・。私は文庫を買うかどうか迷ってます。読む気になるのか、自分。
| ざれこ | 2006/09/05 2:02 AM |

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