本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「図書館の神様」瀬尾まいこ
図書館の神様
図書館の神様
  • 発売元: マガジンハウス
  • 価格: ¥ 1,260
  • 発売日: 2003/12/18


友達に「きよ」って呼ばれている子がいたんです。今も友達ですが。
1行目読んで主人公の名前が「清」だったんで、
その友達にこの本を贈ってやりました。なんとなく「センセイの鞄」も同封しました。
つうかその子誕生日でもなんでもないんだけどさ。贈りたくなって。
なんていうか、好みがすごくあるから、ストーリー性のある本を人に贈ろうとは
普段思わないんだけど、だから写真集とか贈るんだけど、
この本だったら突然贈ったって絶対気に入ってもらえる、私はそう強く思ったのです。
そうやって万人に手放しで薦められる、瀬尾まいこさんの本には
そういう魅力があります。癖がない。癖がないということは一見、
個性がないような評価にもなりがちだけど、決してそうではない。
こういう風に、さらっと飾り気もなく書かれてるのに、最後はじんわりとくる作品、
私はほかに知りません。お涙頂戴なことは全然ないのに、じんわり。
誰にでも書ける味わいじゃないのに、誰にでも薦められる癖のなさ。
なかなかないです。こんな本たち。
まだ2冊しか読んでないくせにえらそうに語ってますけども。

主人公の清、清く正しく生きてきたんだけど、
部活仲間が自殺してしまったころから、人生に投げやりになり、
生きがいだったバレーボールをやめ、なんとなく先生になり、なんとなく不倫している。
先生になってもバレー部の顧問になれず、本に全く興味がないのに文芸部顧問、
そして部員は垣内くん一人だけ。
そんな清の文芸部顧問の1年を、不倫相手の浅見さん、弟の拓実との日常を
交えて描いていく。

なんか、清はずっと清く正しく生きていて、清く正しくないものは
それだけで間違っててだめなことのような気がしていて、視野がすごく狭いというか、
そういう真面目さがすごく痛々しく感じて、最初はなんか読むのがつらかった。
運動部向きの体つきをした垣内くんに「なんで文芸部?何が面白いの」と
難癖をつけて眉をひそめられたりとかしてるし。
私は物心ついたころから本をずっと手元においていたような子なので、
そういう清の感覚とも全く違うところにいて、少し遠い存在に感じていた。

でも垣内君は気にせず、毎日本を読んでいる。
「運動部は毎日同じトレーニングだけど文芸部は毎日が発見で飽きることがない」
そう、毎日が発見なんです。本は。
そういう風に飄々とやっていってる垣内君にはすごく好感を覚えるし、
その佇まいの潔さ、なんかがすがすがしい。

それから弟の拓実の存在がまたよかった。ものすごくやさしい弟。
毎週遊びに来て不倫相手ともなじんでしまう弟。
彼のほんの些細な一言一句で、清がすこしずつ、救われていくのが、すごく伝わってくる。

不倫相手との関係の決着もすごく些細なことであっさりついてしまい、
泥沼化もせず本当に些細なことで終わってしまうことって、あるよねーと思い、
そのリアリティもすごいなと思った。

そう、全然無理のないところで、あるかないかもわからないストーリー展開で、
確実に主人公も癒されるし、読者の私も癒されるのです。
すごくなじみやすいところで。号泣ものの感動作じゃないけど、
だからこそ余計に深く心に染み入る、そういう読後感でした。
すごくすがすがしい。

瀬尾さんの「天国はまだ遠く」でもこのすがすがしさをすごく感じて、
それで思ったんだけど、なんていうか、白紙状態で物語が終わるのです。
最初はマイナスのスタートで、主人公はかなり下のほうにいてぐずぐずしてて、
とてもグレーなんだけど、そのグレーがだんだん晴れて、ラストには真っ白になって、
ゼロの状態で終わるんです。真っ白で白紙で、これから、なんです。
それがとてもすがすがしく感じるゆえんなのかな、と思いました。

いい作家さんに出会った手ごたえをひしひしを感じてます。

それにしても夏目漱石の「夢十夜」すごく読みたくなってしまった。
| comments(4) | trackbacks(7) | 02:27 | category: 作家別・さ行(瀬尾まいこ) |
コメント
とってもステキな作品ですよね。
とても温かみのある作家さんだと思います。
名前の通り、清く正しく生きてきた、きよ。
たしかにまっすぐ生きるのは大切だけど、
それだけじゃ息が詰まることもあります。
ほのぼのした日常の中の、人とのふれあいやつながりに
小さな幸せを感じました。

「幸福な食卓」も読みました。
家族の心温まる話です。
(って書くと陳腐なんですが、他に言葉が見つからないので)
失敗したり、つまづいたり、そんな中でも成長していく。
そしてその傍らには、温かく見守ってくれている人がいる。
そんな当たり前のありがたさ、優しさを感じました。
| chinae | 2005/07/15 10:21 PM |

ナラタージュに書き込んだら返事があったので、
気を良くしてここにも感想書きます。
読んだのは結構前ですが、心に残った好きな作品です。
拓実の「姉貴は不倫くらいしたほうがちょうど良い」や
「清水魚住まず」の引用とか良かったなあ。
垣内君の「それまでに流した涙が雨に形を変えて
慰めてくれる」とかも覚えてる。

昨日、卵の緒 借りました。

| masa | 2006/01/23 11:59 PM |

masaさん
いつでもどこにでも感想下さいね。たまーにコメント返すの忘れちゃいますけど・・

この作品で瀬尾さんの決定的ファンになりました。拓実くんと垣内くんのキャラがすごいよかったですよね。
卵の緒もステキな作品です。楽しんで下さい。
| ざれこ | 2006/01/24 9:58 AM |

この夏にぶらっと立ち寄った本屋で見つけて、最初は時間つぶしのために立ち読みで終わるつもりが買ってしまいました。
瀬尾さんの本はこれが初めてですけど、他にもいろいろ出してはるんですねー。機会があったらまた他にも読んでみようかと思います。
| Mat | 2009/10/10 4:44 AM |

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