本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「カカシの夏休み」重松清
カカシの夏休み
カカシの夏休み
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 620
  • 発売日: 2003/05
  • 売上ランキング: 20,350
  • おすすめ度 4.6


個人的に、とてもきつい本でした。
この本を読むちょうど二ヶ月前、私は、 職場の隣の席の人が電車に飛び込む、
という出来事に遭遇したところだった。
最初はすさまじいショックだったが、私はすぐに日常を取り戻し、
そして普通に明るくやってきた、つもりだった。
この本の「未来」という短編は、3年前にクラスメイトが自殺した女の子が主人公。
クラスメイトは最後にその女の子に電話して、冗談だと思った女の子が電話を切り、
そして彼は自殺。女の子はしばらく精神を病んで、
今でもやはり、感情を露にすることができない。
その彼女の弟が、いじめで自殺した少年に遺書で名指しされる・・・・

と、そういう内容だった。
近い人が自殺してしまい、「加害者」になってしまった彼ら彼女らの、
その後の未来を描いた、どちらかといえば前向きな話だったんだけど、
読み終わって私はしばらくショックで呆然とした。
電車で号泣しそうになった。

私は職場の人がいなくなったことで自分を責めてはいない。 つもりだ。
私の一言が致命傷になったとか、そんなことはないし、
そんなことを思って自分を悲劇的に演出するつもりは毛頭ない。
だからこの話の主人公に自分を重ねることはなかったし、
そうじゃないんだけども、ただ、読んで呆然としている自分を客観視して、
「ああ私は今まで逃げてたんだな」と思った。
明るく振舞って、立ち直ったふりをして、私はずっと彼女の死から
目をそむけていた。受け入れられるはずがなかった。

でも残されたものとして、そのときたまたま隣の席で仕事していたものとして、
私は彼女を忘れたくないし、忘れたらやっぱりいけないんだなと。
私はある意味道連れになったんだな。と。それでいいんだなと。思った。

そして動揺している自分に少し安心もした。
本当に自分があっさり立ち直ってるのかもしれない、と、
恐怖する自分もいたからだ。

誰かの死ってのは、そんなに簡単に忘れられるものじゃない。
誰かの死って言うより、誰かがそこにいたということ。
確かに存在したということ。
私は覚えていないといけない。受け入れて行かないといけない。

・・・・・・・・・・・・・・暗い話になってすいませんでした。

多分、他の人が読んだら全く感想は違うはずです。
表題作「カカシの夏休み」は、ダムの底に沈んだ故郷を懐かしみ 、
「ノスタルジー禁止だ」と苦笑する教師、が、結局現実を受け止めつつ、
中学の同級生達と故郷のダムに帰るまで、のストーリーだ。
この中で、事故死した同級生のお骨を持つ場面があって、
「頑張って生きてても、死んだらこんなに軽いんだよ」と
子供に諭すところがある。そこでも涙した。
軽いはずのお骨がとてつもなく重いものとして胸に迫る。

「ライオン先生」は、ライオンのたてがみのようだった髪が
カツラになってしまった中年教師、学校にこなくなった生徒と向き合い
娘となくした妻と向き合いつつ、地毛だったころの「理想」と
禿げ上がった「今」とのギャップに頭をかきむしり、
結局は今を受け入れる、話。これも途中で泣いてしまいました。

重松作品はやっぱり優しいので好きです。
死んだら骨になる、骨は軽い、でもだからこそ、
今を一生懸命必死で生きよう、そう思わせる作品でした。
何より、私に、考えさせるきっかけをくれた。これは本当に大きいです。
しっかり、自分のショックを、受け止めたいと思う。
| comments(3) | trackbacks(5) | 23:55 | category: 作家別・さ行(重松清) |
コメント
トラックバックさせていただきました。
暗い話、といっても、誰にでも、暗い部分は持っているわけで、その暗い部分と真摯に向き合えるざれこさんは、すごいと思います。自分にはできそうもなく・・・

重松清は好きな作家になりそうです。いろんな人生の側面を彼に教わりました。
| のび太は受験生 | 2005/07/13 5:21 PM |

はじめまして。トラックバックありがとうございます。

いやあ、本の感想なのに何書いてるのか、と思いつつ
筆を止められず書いちゃいました。ここまで考えさせた
重松さんはすごい、それを何とか伝えようと思ったんで・・
その出来事から2年経ち、だんだんと忘れていっている自分が切ないです。

ではでは、またお越しくださいね。



| ざれこ | 2005/07/14 2:06 AM |

ざれこさんの様な体験をされて、この本を読むと、本当に重い本だと思います。
でも、受け止めて受け入れてくれる人はどこかに必ず居るんだろうなと考えさせられました。
コレが初めての重松作品でしたが、他のも読みたいです。
| このみ。 | 2005/12/09 1:44 AM |

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