本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎」 コニー・ウィリス・大森望訳
犬は勘定に入れません…あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎
犬は勘定に入れません…あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎
  • 発売元: 早川書房
  • 価格: ¥ 2,940
  • 発売日: 2004/04/17
  • 売上ランキング: 19,247
  • おすすめ度 4.47


この本がどうも面白そうだ、という話を私はだいぶ前にすりこまれていて、
(自分のサイトの掲示板で勧めてくださった人がいたので)
とにかく読まなければ、と図書館で手にとってみて、その分厚さに一瞬ためらった。
翻訳苦手な私が海外の、しかもあまり読まないSF、そしてこの分厚さ、
こりゃ読破できるかなあ、と不安にかられたものの、とにかく刷り込まれている私は
読まないと、という強迫観念だけで借りて帰り、
そしてあまり気が進まずページを開き、
ほんの10分の1くらい読んだだろうか、・・・あとは夢中。
くそ分厚くて2段になってたのに2日で読破。お、おもしろいやんか。
めくるめく至福の読書体験を満喫。大げさではない。やっぱり本は楽しい。

タイムトラベルが可能となった21世紀後半イギリスの青年ネッド。
大聖堂を建て直すという女傑レイディ・シュラプネルの命により、
第二次大戦中の20世紀にタイムスリップを何度も繰り返し、大聖堂にあったはずの
「主教の鳥株」を探し回っていた。しかし重度の時間差ボケ(タイムラグ)を患い病院に強制送還、
2週間の絶対安静を言い渡されたが、女傑が休養を許すはずもない。
ネッドは病院を抜け出し、大学研究室のダンワージー先生に、休ませてくれと頼み込むが、
先生は彼にある任務を与える。重度のタイムラグでそれを聞き漏らしたまま
19世紀に降り立ってしまった彼は、知らないうちにとんでもない齟齬を起こしていた・・・
「任務が終わったらずっと休んでていいから」といわれたが・・・、彼はいつ休めるのか?

タイムパラドックスSFである。まあ簡単に言うと、
タイムトラベルで過去に行ったがために出会うはずだったAさんとBさんが
出会わなかった、AさんとBさんが結婚しないと歴史が変わっちゃう!といった、
懐かしいが「バック・トゥ・ザ・フィーチャー」的展開。(訳者も言ってるが)
すごーく些細なことがめぐりめぐってすごく歴史を覆してしまったりする、
そういう歴史シミュレーションみたいな展開って、私はすごくわくわくしてしまう。
単にSFとしても楽しめるし、歴史小説としても面白いと思うのだ。
イギリスの歴史をよく知っていればもっと楽しめたんだろうけどなあ、と思うと
残念な気はするけど。第二次大戦と、あとワーテルローの戦い、に詳しければなー

それだけではなく登場人物が皆個性的。未来からきた客人のネッドたちを
あざわらうかのように、ヴィクトリア朝で出会う人たちはネッドの思うとおりにならず、
好き勝手動いてくれる。詩の引用ばかりしているテレンス、幼くわがままなトシー、
降霊術好きなトシーの母親、金魚狂いの(日本から金魚を取り寄せてる!)父親、
歴史と魚が大好きな教授、本ばかり読む執事。彼ら皆笑わせてくれる。そして犬と猫、最高。
牧歌的でのんびりしたテムズ河周辺のちょっとおかしな彼ら、和みます。

で、恋愛小説としてもちゃんと一人前。
更に更に、ラストにたち現れるどんでん返しは、単なるSFとしての仕掛けだけでなく、
ミステリとしても十分読める。いままで読んでいた世界があっさりひっくり返されるその快感。
何重にも楽しませてくれる、これはなかなか当たり、な海外SFでした。

大森氏の訳もすんなり入れました。メッタ斬りでえらそうに言ってるだけあって?
ちゃんといい仕事してはりますね。翻訳苦手な私でもこれはうまいなあ、と思いました。

これはイギリスのユーモア小説、「ボートの三人男」のオマージュとなっていて、
しかも当の三人男とボートですれ違うというおまけつき。
あと、名探偵が次々と引用されます。詩も引用されるし、イギリス文学に詳しい人も
これは「にやり」もの、なんだろうなあと思うとうらやましくもある。
「ボートの三人男」読むかどうか今迷ってます。

私はそういえば、わりとイギリスの作家の小説をよく読んでいるようなんですが、
なんていうか、ユーモアセンスが上品というか、笑わせるんだけど大爆笑でも失笑でもなく
ちょっとした「にやり」感が味わえる、洗練されたユーモアが多いような気がします。
今回の小説でもそれが随所に見られました。それも面白く読めた秘訣ですね。笑えた。

手放しで絶賛、です。分厚いとひるんだ人は再度挑戦してみてください。
そしてネッドのタイムラグが治るまで、我慢して読んでみてください。
(最初がよくわからないのはタイムラグのせいらしいです(訳者いわく))

余談だけど。日本でこういうSFをすらすら書いてしまう人はいないんかなあ。
「戦国自衛隊」ってこれに近いのかなあ。題材は近いなあ。でもなんか泥臭いような・・・
よく知ってる日本歴史でやってもらえると楽しいんだけど。
| comments(10) | trackbacks(7) | 21:42 | category: 海外・作家別ア行(コニー・ウイリス) |
コメント
TBありがとうございます。

面白かったんだけれど、私はSFの部分が少々納得いかず、でもどうにか読みきりました。イギリスのユーモアは結構好きです。

それにしても、ほんと、ネッドはいつ休めるのかーって感じでしたね。あの、こわいレイディ・シュラプネル、うざい!というか、イギリスの女性怖い!

『ボートの3人男』はとっても面白いので、オススメですよ!
| たもと | 2005/06/22 9:18 AM |

私も今これ借りてきて手元にあって、ちょっとだけ読んだんですけど、なんか前作の「ドゥームズデイ・ブック」なるものを先に読んだほうがいいという噂を見かけたので、ちょっとストップ…。か、借りてこなくっちゃ!
| chiekoa | 2005/06/28 1:13 PM |

とりあえずこれだけ読んでもだいたいわかりましたが・・「ドゥームズデイ・ブック」も同じように時間旅行がテーマなんだったかな、うろおぼえですけど。

「ボートの三人男」は読みたいなあと思っています。覚えているうちに読まないとなあ・・・
| ざれこ | 2005/06/28 1:16 PM |

いやぁ、図書館に行ったらあまりに分厚い本だったんで、借りずに帰ってきちゃいました(笑)。
今暑いからあんな厚い本はムリ…。やっぱり「犬は…」読んじゃおうかな!
| chiekoa | 2005/06/29 2:00 PM |

ちえこあさん
「犬・・」だけでも分厚いのに、そっちも分厚いんですか。
もう先に読んじゃって下さい(笑)
| ざれこ | 2005/06/29 4:24 PM |

や、やっと読みました!!
| chiekoa | 2005/07/12 1:17 PM |

コメント&TBありがとうございます。

>第二次大戦と、あとワーテルローの戦い、に詳しければなー
これは同感。
世界史は、苦手な私。
もっと勉強しておくんだった。

「ボートの三人男」は今読んでます。
電車でニヤニヤしながら読んでいたんで、
周りの方は不気味に思ったに違いありません。
イギリスのユーモアの、この「にやり」がいいんですよねぇ。
| くろにゃんこ | 2005/07/12 2:13 PM |

ちえこあさん
読まれましたね。
「ドゥームズデイブック」、先に読んでみてくださいよ〜
(って毒味?)

くろにゃんこさん
そう、世界史は私もダメなんです。だから悔しかったです。
海外ミステリ読まないもんで、ミステリ関連の引用もわからず、さらに悔しかったです。ちえ。
「ボートの三人男」ずっと気になってます。やっぱり読もうかなあ、にやり、なんですものね。
| ざれこ | 2005/07/13 12:56 AM |

ネッドのタイムラグが治るまで、辛かったです。
ほとんど放り出しかけてました。
でもそこを過ぎると俄然おもしろくなりますよね。
我慢してよかったです。
| june | 2006/05/03 10:55 AM |

juneさん
読まれましたか。そう、タイムラグ、きつかったですよねー。「面白いなんて誰が言ったんだ!」と最初はキレかけましたわ(笑)でもあれも物語に必要だし、あれさえ乗り越えれば全然面白いんですよねー。
| ざれこ | 2006/05/06 3:13 PM |

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