本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「光の帝国−常野物語−」恩田陸
光の帝国―常野物語
光の帝国―常野物語
  • 発売元: 集英社
  • 価格: ¥ 520
  • 発売日: 2000/09
  • 売上ランキング: 1,766
  • おすすめ度 4.13


「蒲公英草紙」を読むために再読。感想も更新。

不思議な力を持った常野一族を描いた連作短編集。

常野一族。人の想いを「しまう」能力、未来を見る能力「遠目」「遠耳」、
空を飛べる能力、いろんな強い能力を持っているんだけど、
けして人前で能力を発揮するでもない、穏やかな人々。
彼らの時空を超えた物語。
連作短編の形式をとっている。時代も場所もばらばら、能力もばらばら。
あとがきで「持ち駒を全部出し切った」と恩田氏が書いているように、
様々な味わいの短編集が集まっている。
でも一本太い芯がとおった、不思議な短編集でもある。

彼等の常野一族には長い長い悲惨な歴史がある。
それが短編の節々から垣間見える。
一つ一つは完結した短い短編なのに、全編読んでみると壮大なドラマを
読み終わったような気になる。数百年もの長い時間を。

春田一族が印象的だ。人の想いを覚えておくことができるんだが、
それを「しまう」といい、修業を積むとそれが「響く」ようになる。
時折いっぱいいっぱいになったら「虫干し」という眠りにつく。
その呼び方がなんだか優しくて、いい。「遠目」「遠耳」も。
すごい能力なんだけど、でもそういう人々がすぐそばにいそうな、
そんな親近感までも感じさせる。

彼らはすごい力を持っていても、当然のようにそれを受け入れ、
自らの使命を受け入れ、淡々と日々を過ごしていく。
そのたたずまい、一見飄々と見えて、すさまじい強さを秘めている。
迫害されても、「裏返される」恐怖と戦ってても、
それでも自らの能力や使命を疎んじたりはしていない。
ちゃんと背負って闘ってる。その凛とした姿に心打たれっぱなしだった。

やはり表題作「光の帝国」が印象深いかなあ。
戦時中に、力を持つ孤独な子ども達が寄り添ってすごしている中に
悲劇が襲う・・・・もう、こんなラストありえない、ってくらい
つらいラストだったんだけど、この本のラストまで読むと、ふと救われる。
あの時、光の帝国を願った彼らの思いは、時を越えてずっと残っている。
そして常野一族の想いもずっと残っていく。
また、はるかなる時の流れに呆然。

そして、はるかなる時を象徴するかのような「ツル老人」の存在、
ひたすら都会の「草取り」をする男。印象的な人々が次々に登場する。
「草取り」男、彼にしか見えない、街に生えている草を抜いていく。
その草はおどろおどろしい色をしている。そして人間にも生えている。
そのビジュアルにぞっとした。何か、人間の汚いものを象徴した、草。
私にも生えているんだろうか?

春田記実子と関わってくる亜希子の存在も見逃せない。
最初はただのクラスメイトだったけど、授業中に不思議な夢を見て、
そしてそれがのちの短編へとつながっていく。
彼女のストーリーはまだ序章にしか過ぎないのがまた、もどかしいのだが。

そんな、スケールが大きな、「歴史の時間」みたいな本。
いつまでも彼らの時間を過ごしたくなるようなそんな本、読み終わってほっと息をつく。
彼らはこれからどうなるのか?序章が集まったかのような
この短編集、さて「蒲公英草紙」でまた動き始めるのかと思いきや?

でも2冊セットで読むと、更なる時の流れが色濃く感じられるのだった。

余談
関係ないと思うんだけど、私の大好きな画家ルネ・マグリットが
「光の帝国」というタイトルで印象的な絵を描いてます。
こちらのサイトでその絵が見れます。
青空の世界光の帝国 特設ページ
| comments(9) | trackbacks(20) | 00:59 | category: 作家別・あ行(恩田陸) |
コメント
私も止めること出来ずに一日でよんでしまいました。
赤紫の草が体から生えてきてしまった人達。
見えてしまったら恐ろしいですよね。
「蒲公英草紙」がどんな風に常野の人達を書いてるのか
わかりませんが、確かに続きを読ませてほしい。
そんな本でした。
| なな | 2005/07/02 8:43 AM |

お、最近読まれたみたいですね。私はだいぶ前に読んだので、「蒲公英草紙」を読む前に再読しないと、と思っていたら、どうやら「光・・」は友達に借りて読んだ本だと発覚、買わないと!と焦っております(笑)「蒲公英・・」楽しみです。
| ざれこ | 2005/07/03 12:47 PM |

自分の周りにも常野一族の人がいるかもしれない、
という気にさせられますね。

『蒲公英草紙』は
常野の物語ではあるけれど
それだけで独立したものでもあるので
『光の帝国』未読でも充分に愉しめます。
常野一族の描かれ方も、この作品とはひと味違っていますし。
| ふらっと | 2005/10/25 7:12 AM |

強い時空とか大きい恩田陸や蒲公英草紙と物語などを発送したかったの♪


| BlogPetのごろう | 2005/10/25 9:57 AM |

ふらっとさん
もう「蒲公英草紙」も読んだのです(感想はまだですが)。
確かに「光・・」未読でもいけました。っていうか未読の方が新鮮に読めるんでしょうけど、知ってるとそれはそれでまた味わい深いし、どちらにも転べていいですよね。ノスタルジー溢れる、恩田さんらしい長編でした。
| ざれこ | 2005/10/26 12:28 AM |

光の帝国読み終えました.
なんだか,一気に読むのが惜しくてちびちび読んでしまいました.
一つ一つのエピソードの冴えと,全体を流れる歴史のうねり,いつもながら恩田さん,見事なものだと思いました.
次は「蒲公英・・」にするべきか,「黒と茶..」にするべきか悩んでおります.
| coollife | 2006/05/16 10:00 PM |

coollifeさん
確かに一気読みがもったいない本でしたね。わかります。
次は「蒲公英・・」かなあ?春田一族について覚えているうちに・・・。でも「黒茶」も面白いから、難しいですね(笑)っていうかもう読まれてるかしら。
| ざれこ | 2006/05/18 10:55 AM |

初めまして。
<エンド・ゲーム>を検索して辿り着きました。
これから時々お邪魔させて下さいませ。

恩田さんは大好きな作家さんなんですが、『光の帝国』は、常野シリーズが次々に出版され始めてあわてて図書館に予約を入れて立て続けに読みました。
このシリーズ、まだまだ気になるお話が沢山あります。

つたない感想ですがTBさせて頂きます。
| 読書猫 | 2006/06/01 5:46 PM |

読書猫さん
こんにちは。光の帝国から続く常野シリーズ、私もとても好きです。いいですよね。早く続きを読みたいです。
| ざれこ | 2006/06/02 4:39 PM |

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