本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「世界は密室でできている。」舞城王太郎
世界は密室でできている。―THE WORLD IS MADE OUT OF CLOSED ROOMS
世界は密室でできている。―THE WORLD IS MADE OUT OF CLOSED ROOMS
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 470
  • 発売日: 2005/04
  • 売上ランキング: 16,304
  • おすすめ度 4.57


中学生の友紀夫と隣人で親友のルンババ。
ルンババの姉が死んでしまい、その原因を究明する第1章、
修学旅行で変な姉妹に拉致される第2章、そのころから二人はとんでもない事件に
次々と巻き込まれていく。そんな二人の青春物語。

なんてさわやかに紹介文を書いてちょっと笑ってしまった。
全然違うし。さわやかじゃないし。
だって「世界は密室でできて」るのだし。
ありえないくらい出てくる密室殺人や変な殺人事件。
すごい勢いで人が殺され(1回の事件で15人とか)、もうむちゃくちゃ。
で、トリックも動機も「なんやそれ」っていうのばかり。
それも名探偵ルンババがあっという間に解いちゃうので、
私には推理する暇すらない。まあ、しないけどさ。
密室トリックは「そんなん絶対無理やで」っていうようなものか、
ばかばかしくて解いた気にもならないものばかり。なんか笑えてしまう。

それぞれの殺人手法に似通った部分はあるんだけど、
そんなんで人ががんがん殺されてたら世の中終わりやで、って思うくらい
ぶっ壊れててうすら寒くなる動機、よく思いつくよなあ。

一見ミステリだけど、間に入るいくつもの不可解な大量殺人事件は
実はこの小説の余談にすぎないと思うのよ。
名探偵コナンが解決する事件が話の大筋(小さくなったコナンは高校生に戻れるか?)と
基本的には関係しないのと一緒で。
根底のテーマは最初の章とラストの章、ルンババが家に閉じこめられてからの章を
読んだらそれで伝わってしまうのよね。
ルンババが友紀夫とともに姉の死を超えていく、その過程を描いた青春小説、
究極的にはその一言でいいのよ、この本の紹介は。

そう思うと大量殺人なんやったの?って感じなんだけど
そこはあまりのつまらなさにまあいいか、と。
ある意味何かを突き抜けてるよな、と。ジャンルとか、いろんな既成観念を。
ラストはすがすがしくていい気分になる。これだけ人死んでるのに、
不謹慎なんだけどさ。でも、まあいいか、と。

キャラもいい。まっすぐで友達思いで普通だけどかなりいい奴の友紀夫、
クールな名探偵ルンババもいいし、なにより井上妹、エノキが強烈で、いい。
この3人の青春物語なんだよな、話むちゃくちゃだけどさ、それでもさ。

舞台が福井なのも関係するけど、友紀夫やルンババは常に
「話にオチがない」とか、「ここで一発ギャグとか言って場を和ませないと」と
常に悩んでいるんだけど、それって関西人の思考回路なんですよ。
こういうシーンが執拗なくらいに出てきて、東京の人なじめないと思うんだけど
(それこそ不謹慎だから)でも関西ではすんなり受け入れられるんです。
(まあでもたまに、「ちょっとやりすぎやで」と突っ込んでしまうときはあったが・・・)

姉の死でショック受けてるルンババに向かって、「ここで一発ギャグを」と悩んだ
友紀夫がやらかした行動、第一章でいきなりほろっときそうになりました。
単に笑いをとろうというんじゃない、体を張って友を励まそうとする捨て身ギャグ。
そういう心遣いが、なんかステキです。

でも舞城王太郎って関西であまり人気ないらしいね。なんで?
むっちゃ関西人よ、この人。骨の髄まで。この本読んで確信した。

でもやっぱり舞城王太郎なんで万人に薦める勇気はないんだけど、
(すっごい怒る人とかいそう)まあ400円程度だし入門にはいいかも。
イラストもすべて舞城氏が書かれたそうですが、
これかなり味があってシュールで、私は好きだなあ。

| comments(4) | trackbacks(9) | 02:51 | category: 作家別・ま行(舞城王太郎) |
コメント
はじめまして!
私も舞城氏好きです。でも「阿修羅ガール」はダメだったけど……。
ギャグ考えずすぎ!って思ってたけど、そうかあ!と納得。
ざれこさんの文ってわかりやすくて好きです。
| りりこ | 2005/06/12 8:52 AM |

TBありがとうございます。
私、北関東出身なんですが、この本読んでて福井の方言と地元の方言がなんとなく似ていて、なんだか親近感湧いてしまいました。

| るみねえ | 2005/06/12 4:21 PM |

前からなんとなく読ませていただいてました.はじめてコメントさせていただきます.僕は,これと『みんな元気』が好きな舞城王太郎作品の双璧なんですよ.良いですよね.「世界は密室でできている」って言う題名の言葉自体も,本文とあいまってほんのり考えさせられました.ほんのりて.
| guerrero | 2005/06/22 4:40 PM |

へえ、福井弁って北関東の方言と似てるんですね。初耳。

guerreroさん(つづりあってます?)
はじめまして。コメントありがとうございます。
「みんな元気」はまだ読んでないんですよね。つい最近まで地元図書館では舞城本はすべてずらっと並んでいたのに、ある日突然誰かに借りしめられ(?)全くなくなってしまいました。有害図書として捨てられたかなあ、と危惧するほどでした。人気が出て嬉しいやら哀しいやら。次見つけたら読みますね。
| ざれこ | 2005/06/23 1:55 AM |

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舞城王太郎『世界は密室でできている。』
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