本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ナイフ」重松清
ナイフ
ナイフ
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 620
  • 発売日: 2000/06
  • 売上ランキング: 6,065
  • おすすめ度 4.41


久々に本読んで泣きました。沁みたね。

「いじめ」そして「家族」をテーマとした5つの短編が収められています。
テーマは重くて暗いけど、それでも「闘う」人達に涙。
あまりによかったので一話ずつ感想書こうかなと。

「ワニとハブとひょうたん池で」

ある日突然クラス中から「ハブられた」(ハブは「村八分」の略らしい。)
14歳の女の子が主人公。彼女は自分がハブられたことをゲームだと理解し、
負けてはいけないと耐えようとするんだけど、それでもつらい時は、
近所の池に住み着いたと噂されるワニのことを思って励まされている。
「ワニが人間なんかに負けるもんか」と、勇気づけられている。

この話では友人同士の確執がむっちゃリアルに描かれていてぞっとした。
率先していじめてたくせに陰でこそこそ先生にチクっていた主人公の親友、
その彼女に対する主人公の気持ち、そこらへんの微妙な関係性が異様にリアルで、
中学時代を思い出したりした。私の時代には理由もなく、ってことはなかったが、
今思えば笑っちゃうような理由で、しかも全員が順番にはみごにされたなあ、と。苦笑。

現実の中学生もこの主人公みたいに頑張ってくれたらいいなあ。と。

「ナイフ」

体が小さいことをずっと悩んできたお父さん、同様に体の小さい息子がいじめられていると
知って、息子を守ろうとする。小さなサバイバルナイフを買ってポケットにしのばせ、
「けれど、私は、ナイフを持っている」といつも念じながら、父は息子のために立ちむかう。

「いじめ」というきっかけをとおして、子供から逃げてきた父が息子と向き合う姿が痛ましく、
リアルで、泣けてしまった。小さいお父さんを想像すると余計だ。

「キャッチボール日和」

お父さんはずっと野球をしていて強いのに、スター選手と同じ名前を付けた息子の
ダイスケくんは弱い少年。お父さんはそれを認めることができず、ダイスケくんが学校で
いじめられていても「負けるな」と息子を叱咤する。
そんな父と息子が少しづつ近づく様子を、ダイスケくんの幼馴染みの視点で描く。

「弱い」ことが個性である人だっているのだ。強い人ばかりが正しいわけじゃない。
それを本能的にわかっている幼馴染が、父と息子の掛け橋になって、
父も息子を認めるようになっていく。
それも劇的に仲良くなるんじゃなくて、少しづつ、少しづつ。
いじめシーンは5話の中で一番悲惨だけど、それでも爽やかな話だった。

「エビスくん」

相原くんは病気の妹に、「転入生のエビスくんはめでたい名前やから神様の子孫や、
今度連れてきたる」と約束したのだが、翌日からエビスくんの「俺ら親友や」という名目での
いじめがはじまる。相原くんは妹との約束を果たせるのか?

これは単純に妹の純粋さに泣けた。ラストのちょっとしたどんでん返しも清清しく、いい話だった。
クラスが誰もいじめられている相原くんを助けないのだが、それは被害者の相原くんが
いじめられててもにこにこしているから。弱くてもプライドのない奴はダメだとクラス中から
無意識に思われていた相原くん。なんか子供って残酷に本質を突くよなあ、とぞっとした。

「ビター・スイート・ホーム」

夫の望みで仕事を辞めて専業主婦となった元教師の妻が、娘の担任教師の
やり方に反発し、立ち向かおうとする。それをきっかけに、仕事をやめて諦めてしまった
人生と向き合う妻と、罪悪感にさいなまれる夫。

これは大人にとってリアルな話だった。人生、二つ以上のことがどうしてもできないときがあり、
何かを諦めないと生きていけないこともある。その諦めたモノに対する寂しさ、後悔、
でも今の自分は間違ってないと思いたい。そういう中で揺れ動く二人が寂しく、
それでも最後はほろ苦く爽やかに終わる。
「生まれかわったらあなたとは結婚しなかったかもね」妻の冗談がえらく心にしみた。

この作者は文章は平易でわかりやすいが、時折ぎゅっと心臓をわしづかみにされるような
そういう表現があちこちで出てくる。何気ない一文に突然うっときてしまう。
淡々と、なんの狙いも気負いもなく書かれてるような文章なのに、何故だろう。
多分登場人物が恐ろしくリアルで現実的だから、知らぬ間に同化しているのだろう。
それにしても短編5つの薄い本でこのインパクト。いい本に出会いました。

私はいじめられる歳でもいじめられる子供を持つ歳でもないけど、
そういう年代の人達にはリアルすぎて辛い本だろうな。
でもそういう人たちにこそ、読んで欲しい。
| comments(4) | trackbacks(8) | 13:36 | category: 作家別・さ行(重松清) |
コメント
重松さん、本当に泣ける話を書いてくれます。
私は「エビスくん」にやられました。
読むと心が痛くなり、かなりのダメージを受けてしまうのに
どんどん次を読みたくなるのが凄いところですよね。
| このみ。 | 2006/09/26 11:46 PM |

このみ。さん
私はこれが重松さんの最初の本だったんですが、泣けましたねえ。ものすごくリアルで痛くて、辛かったんですけど、結局重松作品はかなり読んでます。不思議なもんです。
| ざれこ | 2006/10/01 3:33 AM |

私、夏休みの読書感想文で、この本を読もうかと迷ってたんです。
でも、この感想を読んで、やっぱり読みたくなりました♪
私自身高校生で、いじめのありそうな年代に居るので、この本を読んで、この不安な気持ちを吹き飛ばすぐらいに思いっきり泣きたいと思います。
ぃぃ感想、ありがとうございました★
| つーちゃん | 2011/07/31 6:15 PM |

私は実際にいじめられていたので、号泣してしまいました。
| ミト | 2013/04/26 11:45 PM |

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タイトル:ナイフ 著者  :重松清 出版社 :新潮文庫 読書期間:2005/02/11 - 2005/02/14 お勧め度:★★★★ [ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ] 「悪いんだけど、死んでくれない?」ある日突然、クラスメイト全員が敵になる。僕たちの世界は、かくも脆いもの
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