本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ツ、イ、ラ、ク」姫野カオルコ
ツ、イ、ラ、ク
ツ、イ、ラ、ク
  • 発売元: 角川書店
  • 価格: ¥ 1,890
  • 発売日: 2003/10
  • 売上ランキング: 39,455
  • おすすめ度 4.73


準子を中心としたクラスメイト達の、小学校中学校時代の恋愛官能小説。

結構恥ずかしいが暴露しよう、私の中学時代の話だ。
友達がにやにやと寄ってきて、私に、「今から言う単語を全部英語で答えてね」
「狐は?」「フォックス」
「靴下は?」「ソックス」
「この楽器(吹奏楽部だったのでそこにあるのを指さして)は?」「サックス」
「じゃあ、「あれ」は?」
「・・・・・・・・そんなん言われへんわ」
「何で言われへんの、あれは「that」やんかー何考えてんのー」
・・・今書いても恥ずかしい。
当時は「あれ」は「あれ」で、言ってはいけないものだったのだ。
当時の私たちには「あれ」はものすごくデリケートな話題だったのだ。

そういう当時を思い出す小説。なんだか恥ずかしかった。
小学生、中学生時代って一番想像力豊かで、想像の域を出ないがために
その稚拙な想像がなんだかすごくいやらしい。
で、姫野氏の小説はいつもそれを直視させる。
誰もが持っているいやらしさ、恥ずかしい想い出、そんなものを、容赦なく。
でもこの小説は、小学校、中学校でそれこそ初恋の時期に思った、
さりげなくて暖かい気持ち、とかを、懐かしく思い出させる。
いやあ、かなりこっぱずかしいが、温かい。

準子は恋に堕ちる。恋とはするものではなく「堕ちる」もの。ツイラク。
彼らの関係は、お互いに飾らずそばにいられるそういう関係。
「一緒にいつまでも散歩できる人が理想の相手」とエッセイで姫野氏は書いていたが、
価値観が一致した彼らの関係はまさにそんな感じで、うらやましくもある。

でも、世間、特に中学生は残酷。そんな周りのクラスメイト達(特に女たち)の
描写はリアルすぎる。彼らは準子の恋をほうっておいてはくれないのだ。
その無邪気な残酷さも誰もが通り過ぎる道よなあ、と怖くなる。

「サロン」と呼ばれる女同士の集まり、トイレに一緒に行くだけの友達、
みんなで同じことをやり、リーダー格の言うことは絶対で、
そうそう、そんな感じだった。今読んでみたら無意味なことばかりしていたが、
その当時はその集団が絶対だった。はぐれたらおしまいだった。
ていうかトイレに一人で行けないのよ。一人で行ってると友達いないみたいなのよ。
すごい世界だったなあ。そんな時代も思い出した。関西弁やし。

そんな女子的リアルさは残酷なほどうつしつつも、皮肉っぽくなく正面から描かれた恋愛、
そして最後はノスタルジーにひたりつつ、ちょっとほろりとした。
無邪気で残酷で、でも何も知らなかったからこそ一途だった。
そんな時代はもう過ぎてしまった。
中学時代のいろんなことが浮かんでは消え、私はほろりとする。ちょっと恥ずかしいけど。
多分誰もが自分の想い出の一つや二つ、思い出すんだろうな、なんて思う。

ラストはとってつけた感があったけども、ラストで泣けるからなあ。
大人になった彼らの姿、彼らにはもう戻ってこないもの、を目の当たりにして、泣けるのだ。

ところで関西弁リアルすぎます。姫野氏の関西弁はいつもそうですが。
京都の田舎の生々しさがすごく出てて、
そのまま私の過去(私は大阪のもっともっとガラの悪い田舎ですが)みたいでした。
| comments(12) | trackbacks(9) | 10:38 | category: 作家別・は行(姫野カオルコ) |
コメント
こんにちは。
これ、すごいですよね。
ほんとうに自分の当時を思い出したり、人を好きになったりしている時の恥ずかしい思いまでがリアルに甦ってしまって。
あまり人にお勧めできない本なんです、恥ずかしくて。
自分の恋愛に関するスタンスが透けて見えるような気がして。
でもとてもいいので、そしてラストが泣けるし、
結局勧めてしまう・・・そんな本でした。
続編というか、姉妹編の「桃」はこの本を読んでから
その余韻にひたらせてくれる、優しくありながら残酷な一冊ですがこれもまた、いいです。
| かっこー | 2005/06/09 11:39 AM |

私中学から女の子だけだったので、本を読んでも今ひとつ「あーあーそうだった」って気持ちにならなかったんです。
だけどざれこさんの「あれ」の話読んで
おーそうだったそんな事もあったって懐かしくなりました。
| なな | 2005/06/09 2:29 PM |

かっこーさん
「桃」はアンソロジーの「female」に単品で入っていてそれは持ってるんですが、
単行本の「桃」の作品は全てこの本と絡んでるんでしょうか?
地元の図書館の入荷が発売から1ヶ月くらいかかっちゃうんですが
そろそろ入荷してたらいいな・・
そういや「桃」は映画化されますよね。アンソロジーで、ですけど。「桃」主演は長谷川京子。どうなんだろ・・
http://www.female-movie.com/

ななさん
いやあ、非常にお恥ずかしい話でしたが共感していただけたみたいで暴露してよかったです。苦笑。
私は共学だったのですが、女子校の方がそういうやらしさとかはきつそうな気が・・気のせいですか?
| ざれこ | 2005/06/09 2:36 PM |

女の子だけだと意識する相手がいないのでなんでもアリではありましがが、猥談って聞かれたら恥ずかしい相手あってってところもありなので、あまり盛り上がらなかったような気がします。
アンソロジー「femare」知りませんでした。
長谷川今日子ですかーもう少し細めの子のイメージでした。
私も「桃」は今予約待ちしてるんです。
| なな | 2005/06/09 5:16 PM |

ざれこさん、こんばんわ。はじめまして。
これは良かったのだけれど、良かったと人に勧めるのがためらわれる一冊でもありました。
勧めてしまうと見透かされるようで恥ずかしいんです・・。
それにしても「ツ、イ、ラ、ク」といい「桃」といい、
表紙がすごいです。カバーかけないと読めません(笑)。
| june | 2005/06/11 9:27 PM |

juneさん
リアル友人に姫野さんの本を薦めたことが一回もない、ことに、juneさんのコメント読んで気づきました。(笑)この本は一見薦められそうだけど、でもダメですね、かなり恥ずかしい。「受難」とかくらいに笑えちゃうとまだいいですけど、あれはあれで薦めるのとても勇気要りますしねー違う意味でも。

「ツ、イ、ラ、ク」はカバーもかけずに電車で読みふけりました。私って・・
| ざれこ | 2005/06/12 2:45 AM |

トイレ友達ってめちゃくちゃ苦手で嫌だったんですよー。
なので、私がいつも遊んでいたお友達はいわゆるサロンの世界のような人たちではなく
1人でもトイレに行ってしまう人たちの集まりでした。
苦手なんですよねぇ、あの女子の雰囲気。
そう、女子って感じ。(^_^;)

なんでも一緒にやらないと嫌な雰囲気になっちゃったり
なんでも同じように考えていないと!って思っている
そんなグループ。
ツ、イ、ラ、クで思い出させられました。
| みわ | 2005/08/18 11:49 PM |

みわさん
そうですよね、トイレ友達。変ですよね今思うと。
クラス替えしたばかりの頃、話したこともない後の席の子に
「トイレ一緒に行ってくれる?」と言われて驚いたことを思い出しました。
トイレまで話すことがなくてすごく気まずかった(笑)
けどそういう世界が常識でしたもんねえ・・・・
| ざれこ | 2005/08/19 4:26 PM |

「トイレ一緒に行こう」って、絶対に変ですよねぇ?
でも、大人になって会社に行ってからも、そういう人たちっていました。
きっとあの頃のままなんでしょうね。
私にはさっぱり理解できませんが・・・。

桃も読んだのでTBしますね。
| みわ | 2005/08/20 12:28 AM |

すごかったです…!傑作ですね。
もう勉強になりすぎて、うなずきすぎて、首が痛くなりそうです。「サロン」なんてぴったりの表現なんでしょう。そう、あれは友情じゃなくて社交なんですよね〜…。

最後は泣きました!
そして今「桃」を読んでいるわたくし。
電車の中でも読みますよ〜!!!
| chiekoa | 2005/11/22 4:24 PM |

ちえこあさん
「桃」はいかがでしたか。私は更にいたたまれなくなりました。ああ自分の過去に襲われるー
「サロン」、本当にそうですよね。一緒に弁当食べたりトイレ行ったり。今じゃ絶対にできない、すごい社会だったのですよね、あそこは。
一回友達と喧嘩して(よく喧嘩しません?中学生って)むきになってひとりでお弁当を食べた日のすさまじい孤独感は今も覚えてます(笑)当時は「一人で弁当」なんてありえない話だったなあ。
| ざれこ | 2005/11/23 11:39 PM |

姫野カオルコの「ツ、イ、ラ、ク」を読む!
トラックバックさせていただきます。
よろしくお願いします。
| tonton3 | 2006/03/14 1:27 PM |

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