本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「海の仙人」絲山秋子
海の仙人
海の仙人
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,365
  • 発売日: 2004/08/28
  • 売上ランキング: 126,476
  • おすすめ度 4.36


芥川賞候補にもなった中篇。
宝くじで3億円あてた河野、敦賀にこもって、砂をしきつめた家で、
のんびり釣りをしてすごしている。
そこにいきなり中年の外人のおっさんが現れた。
「ファンタジーが来た」河野は思う。
彼は神様だったが、ただそこにいるだけだった。
そんな河野とファンタジーと、旅でやってきた女かりん、元同僚片桐、
そんな彼らの数年間を淡々と描く物語。

なんかすごく不思議なお話で、だからなんかなかなか感想書けなかった。
いまだに何書いていいかわからない状態でこれ書いてるくらい。

いろいろと粗はあると思う。かりんの人生がなんだか軽く描かれすぎだし、
河野と姉との確執も、恐ろしく重いテーマのわりにはなんだか軽い。
すべてがすーっと過ぎていってしまう。でかいテーマがどかんどかんとあるわりに、
すーっといってしまう。そして、読み終わったらすごく長い時間がたっている。
すらすらと読めるのが怖かったんだけど、それって人生もそんなもんかもしれない。
私の記憶なんて、どんな重いことでも、今となってはすーっと流れてっちゃうしな。
なんて、そんなことも思ったりする。

ファンタジーってなんだったんだろう。誰なんだろう。神様?
彼に会った人はみんな一目で「あ、ファンタジーだ」ってわかるんだけど、
彼をファンタジーだとわからなかった片桐だけが、なんか妙に生きている感じがして、
あとのみんなには現実感がなかった。なんでだろう。
そしてファンタジーは哀しいくらい何もしてくれない。
ただそこにいるだけ。どうしているのかもわからないくらいで、
もうちょっと掘り下げて彼のことは書いて欲しいな、と思うんだけど、
ひとついいことを言っていた気がする。最後、一人でチェロを弾く河野に。
「忘却こそが人生だ」。

誰もが過ぎていく。そして忘れられていく。残るのは、自分ひとり。
最後は救いのあるラストだったような、たった一人だったような。

あー何書きたいんだか全くわからないのでこのへんでやめていいですか。
とにかくなんだか少し物足りないんだけど
なんだかとても不思議で印象的な本でした。
以上。

と思ったけどもう少し。
片桐は普通のできるOLで、一番いそうで現実的、とさっき言ったけど、
ある意味ではありえないんだよね。
河野をずっとずっと思い続けて何年もたっている彼女、
河野が他の彼女と生きていて、そんなことを相談されても平気で河野を思っていて、
何故か河野も人生の重い部分を片桐と共有したがる。
「袋小路の男」でもみられたような、不思議でかつ理想的な男女の関係が、
ここでも描かれています。
絲山さんの経験なんだろうか、テーマなんだろうか。
片桐には何故か感情移入できる自分がいました。
| comments(7) | trackbacks(17) | 19:29 | category: 作家別・あ行(絲山秋子) |
コメント
ざれこさん、こんばんは。
コメント&トラックバックありがとうございました。
“絲山さんの小説に出てくる登場人物=関西弁”
というイメージがすっかり出来上がっているので、
ざれこさんの文章を物語の続きみたいに感じました。
とってもおもしろかった。
そして、方言ていいなぁとしみじみ。
私からもトラックバックさせてくださいませ。
| ましろ | 2005/06/18 12:38 AM |

TBさせていただきました。
図書館にも本屋にもなくて、アマゾンで購入した一冊です。数時間で読み終えました。クライマックスが不完全燃焼という感じでした。次は「逃亡くそたわけ」を読みたいと思います。
| 早乙女 | 2005/06/30 8:51 PM |

ましろさん
関西弁いいですよねー私も大好きです(笑)
つい何でもかんでも関西弁で書いてしまいます。

早乙女さん
図書館になかったんですかあ。しょんぼりですね。
「逃亡くそたわけ」私も気になってます。読まれたら感想を教えて下さい。
今度は図書館にあればいいですねえ・・
| ざれこ | 2005/07/01 4:08 PM |

ざれこさん、こんばんわ。
不思議なのだけれど、読んでいて心地のいい本でした。

>彼をファンタジーだとわからなかった片桐だけが、なんか妙に生きている感じがして
って、ほんとそうです!片桐だけが色彩を持っているような、そんな気さえしました。
| june | 2005/11/15 9:54 PM |

juneさん
不思議な本でしたねえ。居心地いいし。
なんか、3億円あたった、ってわりに俗っぽい展開にならないところがよかったなあ。
片桐って一人で素でしたよね。後の人達はなんか仙人の集団みたいだったな。
| ざれこ | 2005/11/16 11:55 AM |

片桐さん、最後にあのカッツォに会いに来て嬉しそうだったけど、あの後ショック受けたかなあ。その後どうしただろうって考えちゃった。彼女にしてみれば、あのまま放って帰れないよなあ…とか。
| runamin | 2006/07/27 12:28 AM |

runaminさん
やはりるみねえさんも片桐に感情移入を(笑)
ですよねえ、私も「どうするんだ、片桐!」と(今思えば)ライフカードのCMみたいに思いましたわ。彼女は放っておけないだろうなあ、とも私も思います。
| ざれこ | 2006/07/29 1:00 AM |

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