本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「心のなかの冷たい何か」若竹七海
心のなかの冷たい何か
心のなかの冷たい何か
  • 発売元: 東京創元社
  • 価格: ¥ 819
  • 発売日: 2005/12/17


15年前に書かれ、以来絶版が続き、私はとりあえず図書館でぼろぼろになった
本を借りて読んだ、その本が文庫になった。昨年の12月のことだ。
こりゃ再読再読、と気ばかり焦ってはみたものの、手に取ったのはつい昨日。
「ぼくのミステリな日常」の続編にあたるが、装画は同じ朝倉めぐみさんが担当されてて、
お揃い感がでたのもちょっと嬉しい。
前の豊泉さんバージョンの方が作品にはマッチしてる感じだけど。
だってこんな爽やかな本じゃないし・・・。

えーっと、どうしようかな、再読したから1から感想を、と思ったんだけど、
1回目に書いた感想を少し残しておいたほうが、「おおお」って驚いたライブ感?が
出てていいかな、と思うので、以下そのまま残します。
2回目だと、だいぶ忘れてたけどそれでも、「この辺で一回覆るな」みたいな
直感が働いてしまうので、「うわあなにこれ」って言うより「うわあ、きた」
みたいな感想になってしまうのはいたしかたないよね。ミステリだもん。
てなことでとりあえず、初読の感想。
これは「ぼくのミステリな日常」の続編にあたると思われる。
主人公は若竹七海、そして彼女は何らかの事情で
社内報を作っていた大手建設会社を辞めていて、現在ぷー太郎である。
ふらっと旅に出た先で、一ノ瀬妙子という女性と知り合う。
たった一日だけの付き合いだった彼女から、七海あて「手記」が届き、そして彼女は自殺未遂を・・

第一部の「手記」を読むくだりはほんまぞくぞくしましたね。
第一部を全て読み終わると、それがいかに二重三重の複雑な構造になってるかが
わかり、絶句する。流石にそういうのは上手いです。この作家さん。
何層にも世界を積み上げることができるのね。

と、ものすごいぞくぞくして後半に進んだのだが、そこからの展開が
なんというか、まとまりがないというか、結局「妙子の一番の悩みってなんだったんだろう。」
などと思ってしまうあたり、ちょっと拍子抜けだったかな。
多分第一部の衝撃が大きすぎて、その後の展開にあまりにも期待しすぎた結果だと思う。

多分、人の心に巣食う「冷たいもの」を、少し垣間見れるテーマだったのだろう、と
思うんだが。「手記」の内容があまりに壮絶なので、その後の展開で
そこをじっくり読ませて欲しかったのだが。若竹流の真っ黒なクールさ、が
この小説ではちょっと甘かったです。

なんていいながら夜中2時までかかって一気に読み終えたから、 充分面白かったんだが。
まあでも、今回は長編小説だったんだけど、この作家さんは短編がむいてるかもね〜

っていうかなんて根暗な感想なんだ。人の深層心理の暗黒のぞいてどうするよ。私。


・・・とここまでが初読の感想。読みは甘いんだけどさ、いかにも
「手記」にしてやられた感じがありありと出ていて、自分の感想ながらほほえましいわ。

さて、2回目読むと、1回しか現れずに植物状態になってしまった一ノ瀬妙子の
人柄が、浮かび上がってきた気がしました。周りからエピソードを重ねることで
一人の人が浮き上がっていく、うまいですね。
そして相変わらず悪い奴しか出てこない、非常に後味悪い展開の中、
必死でもがく主人公若竹七海の愛すべきキャラクター、私は好きです。
普段からかなり辛辣なことを常に考えていて、「きっつー」と笑っちゃうけど、
その思考回路も全く嫌いじゃない。むしろ、私にもそういう部分があるんだろうな。
と思うくらいなじんでしまう。こういう些細な表現とか、些細な意地悪さとか、
そういうのが好きで読んでるのかもしれない、この作家さん。いいわあ。

後味悪い、ぞっとする展開なのは初読どおりでしたが、登場人物を絞りきれてないとか、
いろんな要素を詰め込みすぎるとか、そういう、練りきれてない部分もあって、
デビュー2作目ってのあるが、「悪いうさぎ」もそんなだったな、と考えると、
長編はそうなっちゃう傾向があるのかなあ。この作家。なんてことは思いました。
短編はあんなにぴりっとしてるのにな。でも、長編の無駄な部分、主人公の
無駄っぷりからにじみ出てくるがむしゃらな人間らしさが、逆にこの本の
後味をまだましなものに変えてる気もしました。
そうかあ、クリスマスプレゼントだったんだな。
と最後にはちゃんと気づくくらいには、爽やかな終わりになってたと思う。

グレアム・ヤングが出てきてびっくりしたなあ。あれでしょ、高校生が
母親に砒素飲ませて衰弱させてブログに書いてたあの事件、その高校生が
心酔してたのがグレアム・ヤング、毒殺魔。
彼が「俺の心にはどうしようもない冷たい何かがある」と言っていたのだ、と知って、
私はちょっと震えがきた。事実は小説を越え、そして冷たい何かは
確実に私たちに侵食してきている。この小説は15年たって、嘘ごとと笑えなくなった。

なんてことを一瞬思ったけど、あとがきにも書いてありました、似たようなこと。
びっくりしたんだろうなあ、若竹さんは・・・。
| comments(11) | trackbacks(8) | 22:34 | category: 作家別・ら、わ行(若竹七海) |
コメント
ほんとうにバラバラですね。
わたしが借りた本もとっても状態悪かったです。
そこら中にテープで補修の跡がありました。
でもこういう本が読めるのも図書館のおかげですね。
| ふらっと | 2005/07/12 1:44 PM |

あれ、同じ図書館じゃないですよね?私が壊したんじゃないですよ!(笑)もとからですよ。
でもおかげで読めたので図書館には感謝しないと・・
復刊するとか文庫化するとかすればいいんですが。
どこが原典か忘れましたが、若竹さん自身がどうやら、出すんだったら書き直したい、みたいなことを言っていたとかいうのを読んだことがあるようなないような。じゃあ仕方がないかなあ、と思いましたけど。
| ざれこ | 2005/07/13 12:59 AM |

TBさせていただきました。
ついに文庫化されましたね。これでバラバラな本を読まなくても大丈夫です(笑)。

第二部を読み始めて、何度も第一部を読み直してしまいました。本当に何層にも仕掛けてあっていつもながら、すごいです。
私も一之瀬妙子の気持ちが一番分からなかった。
| momo | 2006/01/28 8:59 PM |

momoさん
ついに文庫化されましたね。文庫読んだらもいっかい感想書こうと思ってたところです。
もうばらばらな本を読まなくていい(笑)ほんまです。嬉しいですよねー。
この本は確かに何重にも罠がしかけられてて、多分再読しても手に汗握るんであろうと楽しみにしています。
| ざれこ | 2006/01/29 3:25 PM |

単行本の装画を担当させていただいた豊泉朝子です。自分の名前をGoogleに入力して見ていたら、偶然にもこのページにたどり着きました。装画を良いと言ってくださる方がいて本当に嬉しいです。ありがとうございます。
原稿を読んでから直ぐ(イメージが新鮮な内に)作画に入りました。登場人物の心理を思い描きながら筆を進めて行きましたところ、知らず知らずの内に画面が二部構成になりました。画面の下方(帯に隠れているところ)は内面を表現しています。
| 豊泉朝子 | 2006/01/31 10:53 PM |

豊泉朝子さん
装画の方にきていただけるなんてとても嬉しいです。どうもありがとうございます。
(といいつつ褒めたのは実は私ではないようなのですが・・大変恐縮です・・)
今、単行本の方は絶版で図書館でもなかなかおみかけしなくて、みかけてもぼろぼろで・・なかなか手に取る機会がありませんが、豊泉さんのサイトで見ることが出来て思い出しました。下方が内面ですか・・。深いです・・。本も二転三転する、心の闇を照らしたような内容だっただけに。
装画と小説作品ってやはり一体ですね、とコメントいただいて改めて思いました。当たり前なんですけども。
あーなんか舞い上がってしまって変な文章ですいません。
| ざれこ | 2006/01/31 11:52 PM |

す、すごい!豊泉朝子さんじゃないですか。
すごーい!!でも気づいたのはたった今なんですざれこさん(泣)

豊泉朝子さんへ(読まれるかどうかわからないけれど)
内面も描かれているのですね。もう一度図書館でかりてじっくり拝見したいと思います。
画風が好きというだけでなくじっと見ると何か色々描きこんであるという絵が子供の頃から好きなんです。えーと私もざれこさん同様舞い上がってます。つたない文章ですみません。
| キノ | 2006/02/06 8:13 PM |

うううぅれしぃぃ〜!私も舞い上がっておりますぅ!!!ざれこさん、キノさん、ありがとうございます!画家みょうりにつきます!
| 豊泉朝子 | 2006/02/13 5:53 PM |

豊泉朝子さん
またきてくださったんですね。よかった。嬉しいですー。キノさんがまた気付いて下さったらいいんですが。
| ざれこ | 2006/02/15 12:44 AM |

私も第一部に思いっきり騙されました!(笑)
わー!!って叫びだしたくなりましたもの。
こういうつくりはうまいなぁって思います。

ワタクシ、若竹さんの「人間を見る目」が大好きです。
(どんな根暗だって思われそうですけど 笑)
| のりぞう | 2006/05/03 11:26 AM |

のりぞうさん
騙されますよね。やられました。私なんか2回読んでんのにどう騙されるか忘れてしまってて、やっぱりダメージくらいましたよ(笑)うまいですよね。
若竹さんの人を見る目、ブラックですよねー。でも私も好きです、わかりますわかります。(私は根暗ですから。笑)
| ざれこ | 2006/05/06 3:23 PM |

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